イ・ジュニョン

イ・ジュニョン、自身との“シンクロ率0%”の悪役に挑んだ決め手は「“悪いことは絶対に理解されない”という強いメッセージ」<勇敢な市民>

2025.01.14 07:00
イ・ジュニョン

韓国で9.8点という高評価を記録した人気ウェブトゥーンが原作の映画『勇敢な市民』が1月17日(金)より新宿ピカデリーほかで全国公開される。曲がったことが我慢できない契約教員ソ・シミン(シン・へソン)が学校の闇に斬り込んでいく同作で、学校を牛耳る傍若無人なヴィラン(悪役) ハン・スガンを演じるイ・ジュニョンにインタビュー。自身とは“シンクロ率0%”だったというスガン役に挑んだ思いや共演したへソンとの相性、演じることへの思いまでを聞いた。

背景エピソード全カット!共感無用のキャラクター

映画『勇敢な市民』は、元ボクシング王者ソ・シミンが“猫の仮面”をかぶりながら学校を牛耳る悪と徹底的に戦う“炭酸指数100%”のアクション・エンターテインメント。正規教員になるまではトラブル厳禁のシミンだが、スガンの目に余る蛮行に我慢できず、とうとう正体を隠して戦うことを決意する――。この作品がアクション初挑戦だったというへソンと悪役たちによる、スクリーンいっぱいに繰り広げられる豪快なアクションが本作最大の見どころだ。

そんな同作でひときわ強烈な存在感を放つのが、近年「D.P. -脱走兵追跡官-」(2021年)や「マスクガール」(2023年)、「予期せぬ相続者」(2024年)などでも強烈な役柄を演じてきたイ・ジュニョンだ。今作のメガホンをとったパク・ジンピョ監督は「ただ一つでも暴力の理由を与えたくない」という思いから、原作からスガンの背景エピソードを容赦なくカット。共感の余地のまったくないキャラクターとして再構築した。そんな“共感度ゼロ”のキャラクターを、ジュニョンはどんな思いで演じたのだろうか。

「ああ、成功だな、と思いました」

――ハン・スガンは親の権力を笠に着て学校内を牛耳るキャラクターとして描かれていますが、この役にどんな印象を受けましたか?

イ・ジュニョン(以下、ジュニョン):最初に台本を見た時、本当に悪い人だなと思って、ちょっと個人的に怖かったです。そんなキャラクターを僕の演技で表現することができたら俳優としていい挑戦じゃないかなと思い、挑戦しようと思いました。特に、作品に込められた「悪い者にはストーリーがない」「悪いことは絶対に理解されることはない」という部分に惹かれて出演を決めました。

――撮影前に家で“悪い目”を鏡に向かって練習したということですが、ほかにもハン・スガンを演じるうえでこだわった点はありましたか?

ジュニョン:歩いている姿だけでも悪く見える人間を表現したかったんです。ちょっと強いジャンルの音楽を聴きながら歩いていたら、僕が歩いている姿を見て周りの人たちが「ジュニョン本当に怖いな」って言ってくれまして、ああ成功だなと思いました。現場でも、演技する時だけじゃなくスタッフの皆さんや俳優の皆さんと話す時も悪いしゃべり方をしていたんです。監督さんが「もっと悪くしゃべって」と隣でずっと言ってくれていまして。それもあって、ハン・スガンというキャラクターに集中しやすかったです。

シンクロ率は「0%です!当たり前じゃないですか(笑)」

――共感が難しいキャラクターかと思うんですが、ご自身とのシンクロ率はどのくらいですか?

ジュニョン:0%です!当たり前じゃないですか(笑)。

――すごく高い集中力で演じられたことが映画からも伝わってきます。シンクロ率0%のキャラクターを演じるのは本当に大変な挑戦だったと思いますが、ハン・スガンというキャラクターについて俳優仲間や先輩から反応はありましたか?

ジュニョン:尊敬する俳優のピョン・ヨハン先輩が「ジュニョンくんの目が本当にすごかった、目つきに感銘を受けた」と言ってくださいまして、すごく幸せでした。普段僕がとても尊敬している先輩なので、すごく嬉しかったです。

――韓国では昨年10月に公開されましたが、どんな反応がありましたか?

ジュニョン:普通に道を歩いていたら一般の学生たちが僕を見て「悪い奴だ」と悪い言葉を掛けてきたんです。誰が見ても僕が年上なのに(笑)。これは演技が俳優として成功した証拠だ!と思ったんですけど、悪い役はしばらくやらないほうがいいんじゃないかなとも思いました。

「アクションシーンごとにダメになっていく」様子を表情でも表現

――アクションシーンが多い本作で99%のアクションをスタントなしで演じられたとのことですが、アクションシーンのために準備したことはありましたか?

ジュニョン:3~4か月くらいかけて、アクションを覚えて息を合わせました。代役なしで僕がアクションをこなすことで、瞬間、瞬間に見せられるハン・スガンの表情がこの映画に没入感を与えられるポイントだと思ったので、できればなるべく自分で挑戦したいと思っていましたし、そのために努力しました。

――表情のあるアクションを作る上で、工夫したことはありますか?

ジュニョン:アクションのシーンは作中に何度かあるんですが、スガンがシーンごとにどんどんダメになっていく様子を表現したくて、表情を段階別にきめ細かく準備しました。特に、クライマックスのアクションシーンが表情という意味でも一番気に入っています。

「へソンさんときょうだいを演じてみたいです」

――シン・へソンさんと共演して、いかがでしたか?

ジュニョン:シン・へソンさんは本当に一生懸命な方です。へソンさんは体も強くて、僕も実際に撮影中に殴られて、本当に痛かったです。思ったよりもっと力が強いなと思いました(笑)。そのエネルギーに負けないように、僕もめちゃくちゃ頑張って用意して現場に行ったんです。相性がすごくいい方でした。機会あればもう一度次はほかのジャンルで会いたいですね。殴り合いじゃなくて(笑)。

――へソンさんと次回共演するなら、どんな関係性のキャラクターを演じたいですか?

ジュニョン:家族、それもきょうだいを演じてみたいです。そのくらい、今回相性がすごくよかったと感じたんです。現場でもまわりの人からも、お互いにじゃれ合ったりする様子がきょうだいみたいだってよく言われていたんですよ。

――ジュニョンさんは以前、飲酒運転のドライバーを警察に引き渡してニュースになりましたよね。そういう正義感の強い性格はソ・シミンに近い気もしますが、ソ・シミンとジュニョンさんのシンクロ率はどうでしたか?

ジュニョン:50%ですね。映画の中でシミンは戦おうかどうしようか悩んでいましたが、僕は悩まないと思います!すぐ行動に移すタイプですね。

最近ハマっていることは?

――MBTI(個人の性格を16パターンに分けて分析する性格診断)で、ジュニョンさんはINFP(共感力の強い“仲介者”タイプ)だそうですね。

ジュニョン:実は、僕のMBTIが変わったんです。INTJ(論理的に思考する“建築家”タイプ)になりました。もともと(感情によって物事を判断する)“F”と、(じっくり考えて現実的に判断する)“T”を行ったり来たりしていたんですが、Tの要素が強くなったみたいです。最近も、事務所の人と話していて「最近大変だね」と言われて「みんな生きるのは大変だよ」って返したことがあって。だって、大変だって言っているだけでは何も変わらないじゃないですか。自分からぶつかって、勝って乗り越えていくことが大事だと思う、と話したら「あなたはTだね」って言われました(笑)。

――最近プライベートで趣味とか好きでやっていることはありますか?

ジュニョン:時間ができた時には練習室に行ってダンスを踊ったり、散歩をしながらフィルムカメラを撮ったりしています。撮影するのは風景とかですね。きれいな場所に行った時に「お、きれい」と思って撮る感じです。そんなたいしたものではないですけど(笑)。

演じるうえで大切にしているのは「中心がブレない」こと

――ジュニョンさんの出演された作品が日本でもどんどん配信されて、俳優としての注目度が上がっています。俳優として、海外のファンから注目されていると感じることはありますか?

ジュニョン:あります。この前日本でサイン会をしたんですが、「初めて来ました」と言ってくださる方が多かったんです。それで気になって「どうやって僕を知ったんですか?」と聞いてみたら、僕が出演したドラマの名前が出てきたので、不思議な気持ちになりました。「海外も見られるんだ、いい時代になったな」と思いました。

――ジュニョンさんが、普段演技をしていて一番大切にしていることは何ですか?

ジュニョン:お芝居をしているときに一番大事にしていることは、“中心がブレてはいけない”ということです。僕は今それを俳優としての目標に掲げていまして。率直な俳優になりたいなと思います。

――最後に、作品を待っている日本のファンの皆さんにメッセージをお願いします。

ジュニョン:シミンや、スガンにいじめられる人たちの視線でこの映画を見てくださったら、僕の悪い行動やしぐさに集中もできるし、すっきり爽快な気分になると思います。そういう目線でこの作品を見ていただければと思います!僕自身としては、アクションを本当に頑張りました!瞬間、瞬間に出ている僕の表情も楽しんでいただけるんじゃないかなと思っています。期待してください!

流ちょうな日本語で答えてくれる姿が印象的だったジュニョンさん。そんな彼の、気さくな素顔とは真逆の極悪な表情がたっぷり味わえる映画『勇敢な市民』は1月17日(金)より新宿ピカデリーほかで全国公開となる。

◆取材・文=酒寄美智子

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