2021年台湾No.1ヒット「君が最後の初恋」はなぜ胸を打つのか、王道ラブストーリーがもつ不変の”泣かせ力”
台湾の名作映画を紹介する上映イベント「TAIWAN MOVIE WEEK」が10月に開催されるなど、近年盛り上がりを見せている台湾映画をWEBザテレビジョンでも特集。今回は、2021年に台湾でNo1ヒットとなり、主演2人が映画きっかけで結婚をしたことでも話題となった、「君が最後の初恋」を紹介する。ベタともいえる王道ラブストーリーだからこその、“泣かせ力”にせまりたい。
住む世界が違う男女の恋、家族との確執など設定も王道ど真ん中
本作は、韓国映画「傷だらけのふたり」の台湾版リメイクとなっている。粗野に見えるが本当は心が優しいチンピラ、借金、家族との確執、病、住む世界が違う男女の恋など、韓国作品によく見られる王道の設定がこれでもかと詰め込まれた一作だ。
主人公のチャン・モンチェン(ロイ・チウ)は、暴力的なふるまいで債務者を脅して金を回収する借金の取り立て屋をしている。バス運転手の父親からは毎日仕事もせずほっつき歩いていると叱られ、夫婦で美容院を営んでいる兄夫婦との関係も良好とはいえない。だが、借金の取り立てで見せる彼の凶暴な行動は、香炉で自分の頭を流血するほど殴るなど、実はどれも相手ではなく自分を痛めつけるものばかり。しかも、身内が手術だ、病気だという債務者たちの言い分に耳を傾け、せっかく取り立てた金の一部を債務者たちに返してしまうという、“心優しきチンピラ”なのである。
今度こそしっかり回収してこいと組織のトップである姐さんに命じられ、チャン・モンチェンは若手を引き連れて病院へと向かう。債務者の男性は病気で入院しており余命いくばくもない状態のため、娘であるウー・ハオティン(ティファニー・シュー)に借金の肩代わり契約を結ばせるためだ。父親の借金を娘に背負わすことには成功したのだが…。
彼らに毅然と立ち向かい、献身的に父親の面倒をみているウー・ハオティンに、チャン・モンチェンは一目で恋に落ちてしまう。借金返済のためのいい方法を紹介して彼女の気をひこうと、お偉いさんのご飯に同伴する仕事をしたり、腎臓売買を持ちかけたり…と奔走するが、当然ながらまったくウー・ハオティンには相手にされない。
そこで、彼は彼女にマス目がたくさん書かれた1枚のシートを渡す。彼とデートをするたびにマス目を1つ塗り、マス目がぜんぶ埋まれば借金を帳消しにするというものだ。一度は断ったウー・ハオティンだったが、父親の入院費もかさみ、親戚に借金を断られ、仕方なくその提案を受け入れる。最初はチャン・モンチェンに激しく反発していた彼女も、やがて少しずつ彼に惹かれていくのだが……。
切ない恋物語を際立たせるロイ・チウの魅力
本作は前述したように韓国作品のリメイクなのだが、台湾の街並みや文化をうまく物語に融合させており、台湾らしくローカライズされている。特に、方言的なポジションにある”台湾語”を本作全編を通してメイン言語にしたことが、単なる焼き直しではなく「台湾映画」として作品を着地させることに一役買っているのではないだろうか。
そして、なんといっても主演の2人がとてもいい。心優しきチンピラを、ときにコミカルに、ときに破壊的に、ときに切なく演じたロイ・チウは、韓国版のオリジナルとはかなり違った印象を与えてくれる。
オリジナル版で主役を演じたのは、韓国を代表するスター俳優の1人であるファン・ジョンミンだ。少しコワモテの彼は、粗野なチンピラが実は心優しい男で…という設定にとてもマッチしていた。マッチしていたが、やはりイケメンはイケメンで素晴らしい。ロイ・チウが演じることで、主人公がヒロインに抱く少年の初恋のような純粋でまっすぐな思いが、より一層美しく、切ないものとして際立つ。
「君が最後の初恋」では、主人公2人の父親がそれぞれキーパーソンとして出てくるのだが、2人の母親は一切登場しない。無償の愛をイメージさせる“母”の不在は、2人の孤独や、愛への飢えや、自分が愛され必要とされることへの自信のなさを、それとなく示唆しているように思う。物語の終盤で、2人はようやく自分が相手に愛されているということに気付く。ウー・ハオティンが愛おしむようにチャン・モンチェンのヒゲを剃っていくシーンで、彼女の視線を追って甘えるように何度も目を合わせるときの、ロイ・チウの子どものようなあどけない表情は号泣必至だ。
主演2人が結婚、ロイ・チウの「僕のヒロイン」発言も話題に
「君が最後の初恋」は、2021年に台湾で上映された映画のなかで興行収入第1位という大ヒットを記録。台湾のアカデミー賞と呼ばれる第58回金馬奨では、最優秀主演男優賞など4部門でノミネートされた。惜しくも受賞は逃したものの、ロイ・チウは2021台北電影奨で主演男優賞を受賞している。
ストーリーに大きな意外性や目新しさはない。不遇な境遇のなかでも誠実に懸命に生きる女性と本当は心の優しいアウトローが心を通わせる展開も、小さなお店を持ちたいという彼女の夢も、チンピラから足を洗うと決意した彼と組織のいざこざも、その後の展開もどこか既視感がある。
とはいえ、王道の展開は、さまざまな物語で繰り返し扱われるほど、多くの人が心を惹かれ、好んできた設定・展開であるということでもある。本作も2人の行く末についてある程度予想がつきつつも、だからこそ2人の幸せを願いつつ物語に引き込まれ、後半に怒涛のように降りかかる“泣き展開”に、素直に涙を誘われてしまう。
奇をてらわないからこそ、世代や年代を超えて訴える不変の“泣かせ力”があるのだろう。思いきり泣くつもりで見る映画であり、その期待に応えて存分に泣かせてくれる作品だ。
ただ、本作にはちょっとした「その後」がある。2021台北電影奨の受賞スピーチで、ロイ・チウが「僕のヒロイン、ティファニー・シューに感謝します」と述べて話題をさらったのだ。ロイ・チウとティファニー・シューは交際の噂を否定したものの、後に結婚に至っている。切ない恋物語に、思わぬハッピーエンドが付いた形だ。このことを知ってから改めて作品を見ると、2人がお互いを見つめるまなざしや愛の日々が、よりリアルに、より美しく感じられるかもしれない。
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