「東京リベンジャーズ」実写映画が興収42億円、観客動員数300万人突破 (C)和久井健・講談社/アニメ「東京リベンジャーズ」製作委員会

「東京リベンジャーズ」はなぜ大ヒットしたのか?同時多発“短期集中”メディアミックスの可能性

2021.09.17 18:30
「東京リベンジャーズ」実写映画が興収42億円、観客動員数300万人突破 (C)和久井健・講談社/アニメ「東京リベンジャーズ」製作委員会

「東京リベンジャーズ」の勢いが止まらない。4月から放送されているアニメは各種配信サイトのランキングで上位に位置し、北村匠海主演の実写映画は興収42億円、観客動員数300万人突破と今年の実写作品ではトップレベルの大ヒットとなった。また8月には2.5次元舞台も上演され好評を博している。まさに全方位的なヒットを実現している「東リべ」だが、これは作品自体のパワーに加え、アニメ・実写映画・舞台をほぼ同時に展開した、集中的なメディアミックスというスタイルに要因があるのではないだろうか。「東京リベンジャーズ」のヒットを考察してみよう。

ヤンキー×タイムリープの異色作「東京リベンジャーズ」

原作「東京卍リベンジャーズ」は2017年3月から週刊少年マガジンで連載されている少年漫画。冴えないフリーターである主人公の花垣武道は、ある日中学生の頃の恋人・橘日向が暴走族集団「東京卍會」に殺されたことを知る。その直後、自分も死に瀕した際に、偶然中学生時代と現在を行き来できるタイムリープ能力を入手。武道は、日向の死の元凶となる「東京卍會」に入って運命を変えようとする中で、さまざまな不良たちと出会い、戦いながら成長していく。

この序盤の展開からわかるように、ヤンキー×タイムリープという設定が新しく、東京卍會総長・佐野万次郎(マイキー)や、その右腕の龍宮寺堅(ドラケン)を始めとする、多種多様な魅力を持つ熱いキャラクターもファンを引きつけている。

またマイキーが仲間を鼓舞するときの名ゼリフ「日和ってる奴いる?いねえよなぁ!」がSNSを中心にインターネット・ミーム化したり、海外では特攻服が目新しいためか「東京卍會」のコスプレイヤーが出現したりと、現在は“ネタ”的な意味でも幅広い層に受け入れられている。

アニメ化で人気加速し、実写映画で一般層にまで広がった

原作は元々漫画好きの間では知られ、第44回講談社漫画賞の受賞など評価されていたが、そこからさらに今のようなトレンド的タイトルとなったきっかけは、最初のメディアミックスであるアニメ化だ。

原作の累計発行部数を見ると、連載開始から4年経った2021年3月末時点では1000万部だった。しかし4月にアニメの放送が始まると、6月に2000万部を突破とわずか2ヶ月で倍増。その勢いは留まらず、8月時点では3500万部を超えている(公式Twitterより)。つまり、アニメ放送開始から数ヶ月で、4年間の累計部数の倍以上の販売結果を叩き出しているのだ。

またTwitter解析ツールで「東リべ」「東京卍リベンジャーズ」「東リべ」といったワードの入ったツイート数の推移を調べると、人気拡大の様子がより顕著にわかる。今年3月時点では1日あたり平均3000件程度だったが、4月は1万件程度と3倍以上に。その後も増加し続けるが、実写映画公開日となる7月9日には過去最多の9万件弱と爆発的な伸びを見せ、それ以降は5万件程度で推移している。(※ソーシャルインサイトによる編集部調査)

これらの数字を見ると、コミックスを購入するようなコアファンが4月のアニメ化をきっかけに大幅に増加し、実写映画の公開によりアニメを観ない層にもしっかりとリーチしたことがうかがえる。またこの短期間での集中展開が、多くの人にとって「東リベ」を「流行っていた作品」ではなく「今流行っている作品」という認識にしたということは想像に難くない。

ヤンキーもの×実写映画の親和性

実写映画の成功について補足すると、映画化にあたっての工夫もさることながら、本作がヤンキーものであったことも一助となったのだろう。漫画を実写映画化する場合、原作との見た目のギャップやストーリーの改変から叩かれることは多い。人気作品ほどその傾向は強く、読者もその例をいくつか思い浮かべられるのではないだろうか。

「東リべ」や、合計興収60億円を超えた「クローズZERO」シリーズ、50億円を超えた「今日から俺は!!」は現実世界のヤンキーを扱っており、ファンタジーやSFといったジャンルに比べて再現度を高めやすい。また“ヤンキー”は現代においてある種希少であり、大人世代にとっては懐かしく、若者世代にとっては新鮮に映るという時代になりつつある。

同時にヤンキーものは若手俳優を多くキャスティングしやすいというメリットもある。「東リべ」の場合、メインキャラクターには北村匠海(タケミチ役)、山田裕貴(ドラケン役)、吉沢亮(マイキー役)と人気の若手俳優を起用しながら、見た目は原作のイメージに忠実で、それぞれの熱量ある芝居も好評だ。

メディアミックスは「ステップアップ型」から同時多発の「短期集中」へ?

4月以降の半年間に映画・アニメを始めとするメディアミックス展開を集中したことが「東リべ」のヒットにつながったのは先に示した通り。しかしこれはある面では偶然であり、別の面では必然だった。元々、実写映画の公開予定時期は2020年10月だったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で公開が延期されたために、原作・アニメ・映画の連携がより密になったといえる。

アニメが先行し、人気に火がついた最高のタイミングで映画が公開となった。6月にこれら3ジャンルがコラボレーションし、作品の舞台である渋谷でポスタージャックを展開したのは好例だろう。これまで多くの人気マンガはまずTVアニメ化され、それから少し時期を置いて映画化や実写化が公開されるという“ステップアップ”的な展開が一般的だった。しかし「東リべ」の成功を受けて、短期にメディアミックスを集中させるパターンも増えてくるかもしれない。

またTwitterでは原作者と編集部が共同運用する原作公式アカウントが積極的にメディアミックス作品の告知をしたり、描き下ろしイラストを投稿したりと一丸となって盛り上げていく様子が見られた。この姿勢はメディアミックス先のアカウントでも同様で、相互に情報を発信し合っている。この結果、たとえばアニメ化で増えたファンは自然に原作や実写映画の情報に触れ、また実写映画で作品を知った新規層がアニメや原作へ流入、という相互送客が発生したのだろう。これも、短期集中による相乗効果ゆえの盛り上がりと言えそうだ。

一般的にアニメの制作には2年かかるといわれており、早くからの仕込みが必要だ。実写映画の製作期間は規模によりさまざまだが、コロナ禍の現在においては公開時期の延期をする場合も多く、想定通りに事が進まないこともあるだろう。さらに、作品の反響は公開するまではわからない。しかし一極集中展開が実現でき、それに耐えられる“強度”を持ったタイトルであれば、短期集中のメディアミックスは非常に効果的なようだ。

テレビアニメは1期の放送終了を迎えるが、原作の「東リべ」は現在も漫画連載が続き、物語の途中だ。これだけのヒットになれば、当然アニメ、映画の第2弾にも期待できる。今後も「東リべ」のようなポテンシャルを秘めた作品が適切なタイミングで効果的に展開され、エンタメ業界を盛り上げてくれることを期待したい。

(文・はるのおと)

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