映画「クルエラ」で主人公・クルエラ役の日本語版声優を務めた柴咲コウ

柴咲コウ、デビュー当時の苦悩を明かす「やりたいことから離れていってしまうことへの葛藤があって」<インタビュー>

2021.05.29 05:30
映画「クルエラ」で主人公・クルエラ役の日本語版声優を務めた柴咲コウ

ディズニー映画最新作「クルエラ」が、5月27日から映画館で公開中、28日よりディズニープラスでの配信もスタートした。

同作は「ラ・ラ・ランド」(2016年)でアカデミー賞を受賞したエマ・ストーンが主演を務める実写映画。「101匹わんちゃん」(1961年)にてダルメシアンの子犬を毛皮にしようと企む“ヴィラン”=悪役であり、アイコニックな白黒ファッションでも有名なクルエラの誕生秘話が明かされる。

これを記念して、主人公クルエラの日本版声優を担当する柴咲コウにインタビュー。“悪役”クルエラというキャラクターやファッションへのこだわり、デビュー当時の葛藤などについて話を聞いた。

“勧善懲悪の向こう側”を描いた作品の魅力

――ディズニー作品への印象を教えてください。

ディズニー作品には人生のいろいろが詰まっていると思うのですが、それを「学ぼう」という気持ちではなく、わくわくしながら見られるのが魅力だと思っています。

「クルエラ」は特にそうだと思っていて、「一人の人としてどう生きるか」っていう部分ですごく勇気をもらえる作品だと実感しました。

――今回日本版声優を務められたクルエラはいわゆる“悪役”でしたが、そのようなキャラクターを演じてみていかがでしたか?

善悪を決めるのは簡単なので、「悪いヤツをやっつけるわ!」みたいな作品って多いと思うんです。でも私はなぜそうなったのか、その裏側を知ることが大事だと思っていて。

無関係な人は「それでも真面目に生きていたらいいことある」なんて言えるかもしれないけれど、親や周りの大人に裏切られたり、もとの環境が最悪だったりした当事者はものすごい闇を抱えていることもある。そこに対しての共感力は社会全体でも必要なんじゃないかなって。

共感してくれる人がもっと早くに現れていたらもしかしたらその人は悪に手を染めなかったかもしれないし、一見“悪”に見えても演出かもしれない。そういうことを考えさせられるから、ヒール側の背景を描いた作品はとても好きです。

若いころは仕事に対する葛藤も

――映画「クルエラ」ではクルエラの若い頃が描かれていますが、これまでのクルエラ像から印象が変化した部分はありましたか?

クルエラは自己演出が上手な人だと思うんですけど、今回の映画は「そうなるに至るまでの物語」なので、そこのギャップはあってもいいのかなと思いながら。

あと、若いときの方が何に対しても必死だし、一生懸命じゃないですか。“完成されたクルエラ像”っていうのはもうすでにあるんだけど、それはそれとして、ここから20年くらい経つとああなるんだろうな、と思いました。自分の人生においても20年前と今とでは全然違いますし…。

――柴咲さんご自身の、デビュー当時の仕事への向き合い方はいかがでしたか?

“やりたいこと”と“できること”のギャップもまだある中で、“やりたいこと”を目指す思いがあるからこそのアンバランスさがありました。

あと、私は好きな仕事に対しては没頭できるのですが、“そこについてくる仕事”もあると思うんですよね。もしかしたらこういう取材もそうかもしれないんですけど(笑)、自分のお芝居を自己評価して共有・拡散していかないといけない。役者が、それを語らなくてはいけないというのはとても難しいことだと思っていました。

そんな中で「全然関係ないバラエティーに出ます」とかってなると、いよいよ「何やってるんだっけ?」と思えてしまって。若いころは本職ややりたいことから離れていってしまうことへの葛藤があって、居心地の悪さが顔に現れることが結構ありました(笑)。

――20年間で、そこに対する意識の変化はありましたか?

そうですね。自分自身が“作る側”に回ったこともあって、何を作るにしても「いろいろな人が携わっていないとできないことなんだな」と実感するようになりました。「お金ってこうやって集めるのか…」とか「全然欲しいところに人が来ない」とか、裏方の苦労を知った事が大きいです。

後は広く人付き合いをしていく中で見えてくるものもあって、それも作用していると思います。

“気分を表現する”のがファッション

――クルエラはファッションデザイナーという役どころ。柴咲さんのファッションについての思いをお聞かせください。

何が着たいかどうかが大事で、気分を表現するっていうのがファッションだなと私は思っているので、似合うかとか、どう見られるかとかはあまり考えないです。ただ似合わない色味は「好きじゃない」に繋がったりはしてますね。

最近だとヴィヴィッドな色が着たいです。あとはエッジの効いた服をたまに着たくなるんですけど、今回の映画の影響もあり、その気持ちが再燃しています。

自身のブランドでは「環境負荷のことを第一優先で考えながら、その中で遊び心を」

――ご自身でもファッションブランド「MES VACANCE(ミヴァコンス)」を展開されていますね。

「MES VACANCE」はどちらかというと「ファッショナブルなものを作りたい」というよりは環境課題の提示がテーマのブランドです。

事業の柱を作る立場としては、やっぱり人を集めるっていう部分が本当に難しくて。少しずついい人が集まってきてくれて、また新たな体制で今年の秋冬からやっていくので、ぜひ注目してください(笑)。

――ブランドで今後やってみたいことはありますか?

カラーを楽しみたいかなって! 環境負荷のことを第一優先で考えながら、その中で遊び心を、っていうのは今年のAWくらいからできたらいいなと思っています。

――最後に、読者に一言お願いします!

映画「クルエラ」、ディスニーファンにとっては待望の作品だと思いますし、そうでない方にとっても1つの作品として魅力的な仕上がりになっていると思います。ぜひ見てください!

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