『世の中、顔か?』――SNS時代に考えたい、ルッキズムと自分を大切にするということ

『世の中、顔か?』――SNS時代に考えたい、ルッキズムと自分を大切にするということ

2026.09.12 11:10

SNS、マッチングアプリ。スマホを開けば美男美女が並び、気づけば自分自身が人を美醜で判断してしまいます。自分で自分を大切にしてあげよう、そうは思っても、ネットで見た誰かや、AIのような加工写真と比べてしまったり、次々と変わりゆくメイクやファッションのトレンドに流されてしまったり……。

私たちの生活はいつのまにか、そんな「ルッキズム」とは切っても切り離せなくなってしまいました。だけど……外見で、顔で、自分と人を比較し続けていて、本当にいいのでしょうか。

・「この顔じゃなくてよかった」と、言われる人の気持ち

・「自分はブスだ」と感じても、自分を大切にする方法

・毎日傷ついている心の癒し方

■心ないコメント、したことありますか?

『世の中、顔か?』(曽和美佑著・クロスメディアパブリッシング)は、YouTuberでインフルエンサーの「そわんわん」さんのエッセイです。お友達系YouTuberとして、動画を中心に10年近く活動しているそわんわんさんは、何度も外見にまつわる炎上を繰り返してきたといいます。自虐キャラで活動していた時期もあった彼女ですが、コメント欄に届く「自分がこの顔だったら死にたい」という言葉に、深く傷つけられてきたのです。

ネットで幾度となく燃え続ける、誹謗中傷問題。「ブスで売っているんだから、ブスって言われても仕方ないだろう」。「そもそも自分で動画発信しているんだから、炎上することくらい覚悟しておけよな」。匿名で投稿できるSNSやコメント欄では、このような無責任な説教がいくつも並びます。

そわんわんさんは本書の中で、そんなコメント欄に幾度となく傷つけられてきたことを語っています。ただ好きな服を着て、ただ自分の思ったことを話す。それだけでなぜ、イライラしたような口調のコメントが投稿されるのでしょうか。

今のネットを見ていて、息が詰まる瞬間がある人は多いはず。些細な発言や過去の失敗、あるいは「完璧ではない意見」に対して、正義の拳が一斉に振り下ろされて叩き潰されるような空気感。現代のインターネットでは、あらゆることが「断罪」されます。

「自分は正しいことをしている」「間違っている奴を正してやっている」という大義名分を得ると、罪悪感なしに怒りを発散できるもの。SNSやネットメディアのシステムは、強い感情を伴う投稿ほど拡散されやすいように設計されています。「これ酷くない?」「許せない」という怒りの共感ほど拡散スピードが速く、タイムラインには常に誰かを攻撃・批判する言葉が溢れることになります。

ネット上では、その人の生い立ち、普段の思い、その発言に至った背景が全て削ぎ落とされ、「切り取られた一部の言葉」だけが一人歩きします。だけど実のところ、声高に誰かを叩いているのは、実は全体のごく一部の過激な層です。声が大きいから目立つだけで、サイレントマジョリティは冷ややかな目で見ていることがほとんどです。

それでも、その言葉を受け取っている本人は、どれほどの重圧を背負うのか……その苦しみが、そわんわんさん自身の生の声として語られていきます。

■誰かから「美人じゃない」と思われることの恐怖

もちろん、そわんわんさんはYouTuberだからこそ、こういった「他人の意見」が届きやすい立場です。しかし、一般人である私たちも、実はあらゆる側面でルッキズムによる呪縛に囚われてしまいがちです。例えば、友達と一緒に買い物に行った時。同じ服を手に取ったら「私よりこの子の方が似合うのでは」「スタイルの悪い私が着ていい服かな」など、ネガティブに考えてしまったりしませんか?

友達と撮った写真をSNSにアップする時、友達のストーリーを見て「その写真、載せてほしくなかったな」と思ってしまったこともありませんか? 他人から評価されるのが怖いから、無加工の「不完全な」自分を、他人に見られるのが怖くなってしまう……振り返ってみると、そんなシーンがたくさんあるはずです。

そわんわんさんも顔だけでなく、体型にもコンプレックスを持っていたといいます。しかし、ひょんなことからプラスサイズモデルとしても活動し始めたことで「居場所を見つけることができた」のです。しかし衝撃だったのは、顔にしろ、体型にしろ、そわんわんさん自身が気にしている以上に、ネットにいる人や一般人の子たちが気にしていることによって「こんなふうに考える人がいるんだ」と、そわんわんさん自身が気づいていってしまったということ。

果たして自分は、幼い頃から顔に、体型に、コンプレックスを持っていたのでしょうか。小さい頃、鏡で自分を見る時に「こんな自分は肯定できないな」なんて、思わなかった人もいるはずです。誰かに評価されることを繰り返すうちに、評価されること自体が怖くなってしまうのが、SNS時代を生きる私たちにかけられた呪いなのではないでしょうか。

そわんわんさん自身は「顔が全てではない」ことを証明するために、ブス売りで活動することもやめたといいます。このように、自覚的にポジティブであろうとする人の発信にも、ネガティブなコメントがつき続ける現代……やっぱり、ちょっと異常ですよね。

だからこそ、本の中では何度も、そわんわんさんが問いかけます。

「本当に自分がしたいことなのか?」「誰かに思い込まされていないのか?」と。

本を開くたびに、そわんわんさんと一緒に、自分の心に問いかける。ある種のセラピーのような心地よさが、この本にはあります。

■どうやったら「自分らしく」生きていけるのか

この本に限らず「自分らしく生きよう」と啓蒙する本は、世の中にたくさん生まれていきます。でもこれが、すごく難しい。なぜなら私たちは、本を読んでいる間にも、他人からの評価に晒され続けるからです。

でも、本を読んでいる間はSNSを見ないので、加工美女を見てしまうこともなければ、誰かの上から目線な評価を耳にすることもありません。1人の世界に入り込めるのは、読書の利点です。

本の中では、意見に晒され続けているそわんわんさんの自己肯定術も語られています。他人の評価を存在意義にしないこと。がんばるか、やめるかというシンプルな2択で考えること。他人に大きく興味を持たないこと。言葉で言ってしまえば簡単なことでも、どんな経緯があってその考えを持つに至ったかを知れるのは、本書の意義だと思います。

ありのままの自分でいるということが、ことさらに難しくなってしまった世の中。だからこそ、ありのままであろうとすることも、大切なのではないでしょうか。この本がどんな人におすすめかと言われれば、この世に生きる「全ての人」と言っても過言ではありません。本を読んで「自分も傷ついていたのかもしれない」と、自覚する人もいるでしょう。

だけどその後には、そわんわんさんの動画を見てみるのもいいかもしれません。傷ついてきた人が、自分を丁寧に扱ってあげる瞬間を、ポジティブに受け止めてみてください。そういうことの繰り返しが、私たちを人にも、自分にも優しい人間へと成長させてくれるのではないでしょうか。

(ミクニシオリ)

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