《アントワープ仕込みの世界ファッション観測》ファッションウィークの価値

先月、ファッションウィーク中のパリを訪れました。帰国日に差し掛かる頃、アントワープ王立芸術アカデミー時代のクラスメートに「明日の夜、集まろう!」とインスタグラムのストーリーで投稿しました。最初は10人ぐらいでしたが、友人が友人を連れてきて、20人ほどが集まりました。この期間のパリには、「明日集まろう」が自然と実現する空気があります。
熱を帯びるパリ
集まったのは、普段アントワープやミラノ、オランダ、スウェーデンなど、それぞれ違う街で活動する友人たち。ロエベ、ディオール、バレンシアガ、エルメスなど、世界的なブランドで働くデザイナーもいます。そんな彼らがこの一週間だけは自然とパリにいます。普段なら仕事を終えて家へ帰る時間でも、この一週間だけは「今どこ?」という連絡が飛び交います。「何かが起きている」という雰囲気が街全体にあるのです。
例えば、学生時代のクラスメート5人はFPS(Five Pointed Stars)と名乗り、在学中から毎シーズン、パリ・ファッションウィークに合わせてポップアップショップを続けています。今年はトラックを借り、街を移動しながら服を販売していました。開催当日にインスタグラムで場所が告知されるにもかかわらず、警察が交通整理に入るほどのにぎわい。完売後も人は増える一方で、気づけば何人もの友人と再会し、新しい出会いもありました。


濃密な一週間
私たちの世代は、オンラインで服を発表することにも慣れています。商談も画面越しで進められます。それでも、時間と費用をかけてパリで発表することを選びます。お金も労力もかかるのに、なぜでしょうか。作品を発表するためだけの場ではないからです。友人や知人に作品を見てもらい、新しい人と知り合い、その中から作品に共感してくれる人と出会う。リアルな反応や応援があり、思いがけない出会いが次の約束や仕事につながっていく。そのテンポは、画面の向こう側では生まれません。
こうした密度の高さから、近年はパリを中心に予定を組むブランドや関係者が増え、存在感はさらに強まっているように感じます。仕事も、再会も、新しい出会いも、この一週間に凝縮されています。だからこそ、世界中の人がこの期間にパリを目指すのでしょう。デジタル化によって情報は瞬時に世界中に届き、どこにいてもコレクションをリアルタイムで見られることが当たり前の時代。その一方で、時間と費用をかけてリアルな場へ足を運ぶこと自体が、以前にも増して特別な意味を持つようになりました。時間も移動も効率化できる時代だからこそ、その場でしか生まれない偶然や出会いには、より大きな価値があります。同じ価値観を持つ人たちと同じ時間、同じ場所を共有できること――それ自体が一種のラグジュアリーになっているのかもしれません。
灼熱(しゃくねつ)の一週間が終わると、人々はそれぞれの街へ帰っていきました。オンラインでは代替できないその一週間を目標に、また半年間準備を重ねるのです。デジタル化が進むほど、パリ・ファッションウィークは「服を発表する場」である以上に、「人と人をつなぐ場」としての価値を高めているように思います。

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