女友達と20年同居したらどうなる? “女ふたり暮らし”のリアルをつづった一冊

女友達と20年同居したらどうなる? “女ふたり暮らし”のリアルをつづった一冊

2026.07.08 11:10

「女友達と暮らしてみたら、いったいどんな感じなんだろう?」

そう、想像してみたことがある人は多いのではないでしょうか。恋愛にはいつか終わりの瞬間が来るかもしれないけれど、友情はそうではない……そう感じてはいても、20代のうちは「いつかどちらかに好きな人ができちゃうかも」なんて不安になったり、30代になったら「今さら女友達と暮らしている時間はないかも」なんて、将来を焦ってしまったり。

一歩踏み出してみたら、どんな生活ができたんだろう……そんな好奇心を捨てきれていない人に、おすすめしたい一冊の本。

・女友達とルームシェアしてみたら、どのくらい楽しいの?

・女友達とのルームシェアって、何が大変なの?

・女友達とのルームシェアには、やっぱり終わりがあるの?

■当たり前の日常として、でも暖かく描かれる「女ふたり暮らし」

女友達との20年に渡るルームシェアでの悲喜交々をエッセイ漫画にまとめている『帰りに牛乳買ってきて 女ふたり暮らし、ただいま20年目。』(はらだ有彩著・柏書房株式会社)。「帰りに牛乳買ってきて」という、日常の何気ない家族のやり取りのようなタイトルには、実はとても深いメッセージが込められています。

本書には、著者のはらだ有彩さんが「女友達」とともに歩んできた「ふたり暮らし20年」の軌跡と、日々の愛おしい生活の断片が描かれています。2人がなぜ一緒に住むことになったのかや、同性同士のルームシェアならではの気づきがまとめられています。

筆者の周囲には、男性同士でルームシェアをしていた人は多くいても、女性同士でルームシェアをしていた人はあまりいません。もしかしたらそれは冒頭に触れたように、女性の方が早いタイミングで結婚を意識するようになることや、トラブルを避けようと慎重に行動する人が多いからなのかもしれません。

そんな中で著者と女友達は、本当に「ひょんな事情で」女ふたり暮らしを始めます。

女友達同士って、女友達にしかない特別な絆がたくさんあるように思います。例えば、女性は自分の身に起きていることや、困りごとを気の置けない友人に相談する人が多いですよね。男友達に相談するとなると、悩み相談をしても「じゃあこうすれば?」というアドバイスの提示になりがちです。一方で、女友達同士は「まず感情を受け止めて共感する」能力に長けています。

本書の中で、著者や女友達はさまざまな事情で傷ついたり、疲れ果てている日があります。そんな時にそっと差し出される温かいごはんや、気の利いた一言。家に帰った時に、部屋が真っ暗じゃなくて、気持ちを汲んで優しくしてくれる人がいる……それだけで、毎日のストレスが全然違うのかもしれない。そう思わされる温かい交流が、本書に淡々とつづられています。

■「なぜ女2人?」「普通はさ」という暴力と、世間からの目

ですが、同性同士のルームシェアには意外なモヤモヤもあるよう。生活環境に対する価値観の違いで、女友達とケンカをしているシーンもしばしば描かれます。それに、心が思わずキュッとなってしまったのは、2人が周囲まで「いつまで女2人で暮らしているつもりなのか」という、目に見えづらい圧とずっと戦っているということ。

真剣に考えてはいなくても、私たちの心の奥底には「いつかは女性は男性と結婚し、暮らすもの」という、大昔からの刷り込みがあります。だからこそ「楽しそうだけど、実際問題女友達と同棲はできないでしょ」と、自分に言い聞かせてみたこともあるような気がします。

友達同士のルームシェアだと、お引越しの際になかなかOKしてくれる家を見つけられなかったり「結婚する気がないのか」なんて邪推をされまくったりと、パートナーとの同棲とは異なるデメリットがあることを、本書で始めて実感しました。

ただ、そんな世間からの辛い評価なんてどうでもいいと思えるほどに、2人の過ごす日々はどこかユーモラスで、暖かいのです。

事実として、独身者は「結婚願望があるのかどうか」を周囲の人に聞かれやすいように感じます。これは、いかに世の中で多様性が重要視されていても、今もまだ変わっていない“世間の目”であるように思いますが、2人がそんな抑圧に嫌気が差しているように見える瞬間があっても、最後には「誰が何を言っても、自分がいいと思うなら一緒に住めばいい」という決断をしてきたということが、とても印象的でした。

真ん中とか、標準と言われる場所から逸れる時には、いつだってその選択を突き通すために負荷がかかるのかもしれないけれど、だからこそ2人の選択に「尊さ」を感じる人もいるのではないかと思います。

■改めて考えてみて……女友達って、やっぱりいいよね

実際に本書を読んでみて「女友達とのふたり暮らし、いいかも」と思える人も一定数いるのではないかと思います。体調不良の時はお互いに支え合えて、同性同士だから、いい意味で気を遣いすぎずに済むし、本当に踏み込んでほしくない地雷も、察してスッと避けることができる……え、よく考えたら女友達同士、最高なのでは。

ルームシェアをするかどうかは置いておいたとしても、本書は「女友達の大切さ」を思い出すきっかけにもなってくれると思います。お互いの性格にもよるかもしれませんが、同性の友達とのコミュニケーションには“許し合い”が生まれやすいような気がします。パートナーというほどの近さではないけれど、パートナー以上に何年も続くのが友人関係というもの。時に、数年付き合った程度のパートナーでは知りようもない細かな価値観を理解して、先読みして行動してくれるのも、同性の友達ならではの交流です。

実際、今は世間から降り注がれる好奇の目から逃れる選択肢の一つに「親友婚」なんてものもあります。もちろんそれも一つ、目からウロコだけどなるほど感のある選択肢なわけですが、この本を読んでみたら「親友婚するかは置いておいて、いったん女友達と今以上に長い時間一緒にいられるかを試してみたらいいのでは?」なんて、柔軟な選択肢が生まれてきそう。

日常の小さくて愛おしいきらめきを一緒に面白がったり、お互いのちょっとした変化に気づいて褒め合ったり。大人になると、社会の問題なのではとも思えるような事情で女友達と疎遠になってしまうこともあるけれど、ピュアだった頃の私たちは、そうやって女同士、優しいコミュニティを作ってきたわけで。

誰と住んだとしても、人生色々あるけれど。支え合ってきた女友達の価値を考え直したくなる、すてきな一冊です。

(ミクニシオリ)

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