中国の「25年度十大ネット流行語」 余白や完璧でない存在に共感

中国を語ろうとすると経済減速や国際関係といった硬い話題から入ってしまいがちだ。しかし、より肌感覚で理解するのなら、ネット上で人々が日常的に使っている言葉を見るとよい。
AIがトップ
昨年12月に国家言語資源監視研究センターが発表した「年度十大ネット流行語」には成長や競争よりも暮らしの実感や感情の置きどころを巡る言葉が並んだ。そこに浮かび上がるのは、外から見れば強硬に映りがちな中国社会の意外なほど柔らかな側面である。
流行語の筆頭に挙げられたのがAI(人工知能)の「DeepSeek」だ。低コストかつ導入が早く、瞬く間に生活の現場へ入り込んだ。宿題の手伝い、ECでの対応など、様々なサービスに組み込まれ「気付いたら使っていた」。実用優先の姿勢が、AIを一過性の話題ではなく、25年の空気として定着させた。
同時に、人々が重視し始めたのが「情緒価値」である。元々はマーケティング用語だが、今では消費や人間関係にまで広く使われている。機能、効率、成果だけでなく、自身の気持ちが満たされるかが重視される。ショート動画では、自分自身に乾杯する「敬自己一杯」という投稿が目立つ。成功を誇るのではなく、平凡な一年や失敗経験も受け入れ、自分をねぎらう所作だ。一方で「何ができるでしょうか?」という言葉のようにプレッシャーに対処するための自虐的な表現もはやり、過度な上昇志向から距離を取り、感情を整えることに価値を見いだす感覚が広がっている。
余白や完璧でない存在
郊外や農村部に増えた「村カフェ」も入った。都市の緊張から少し距離を置き、何もしない時間を過ごす。頑張りすぎないための余白が求められているのだろう。
話題のアニメ映画『浪浪山小妖怪』も流行語入りした。描かれるのは圧倒的な英雄ではなく、失敗を重ねる名もなき小妖怪たち。完璧でない存在が試行錯誤する物語に共感が集まった。もちろん人生を諦めているわけではない。「来財」という言葉が示すように、人々は今も幸運を願う。ただし、一獲千金ではなく少しの運への軽やかな期待だ。
「野心が強く、強硬かつしたたかで、打たれ強い中国」というレッテルをめくると日本人として共感ができることも多いことに気付く。「お隣さん」は変わらない。三回前の午年には日中平和友好条約が調印されている。今年は日中関係がウマくいくことを願う。
(愛豊通信科技上海副総経理・野村義樹)
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