異業種への挑戦がキャリアをつなぐ。美容医療のSNS戦略を牽引する女性リーダーが語る「素直さ」と成長の法則

異業種への挑戦がキャリアをつなぐ。美容医療のSNS戦略を牽引する女性リーダーが語る「素直さ」と成長の法則

2025.12.11 11:10

取材・文・編集:五十嵐紫月/マイナビウーマン編集部

撮影:渡会春加

「自分らしく働く」とはどういうことでしょうか?

今は、個人に合わせた多様な働き方やキャリア形成を選べる時代になりました。でもいざ自分のキャリアや人生について考えてみると、「自分らしさ」が見つからなかったり、経歴や年齢を気にして新しい挑戦に躊躇してしまったりすることもあるかもしれません。

「色々なキャリアが全部重なって、活かされています」

そう話してくれたのは、ゲーム業界から美容業界という異業種に転職し、現在はSBCメディカルグループ株式会社のマーケティング部・ドクター&クリニックブランディング部 第2グループのグループ長として働く堀越冴果さん。

未知への挑戦を前に、ポジティブでいられる秘訣を伺いました。

■音大卒業後、ゲーム業界から美容業界へ。転職のきっかけはライフプランの見直し

――まずは、SBCメディカルグループに入社するまでの経歴を教えてください。

実は私、小学校から大学までは音楽大学の附属に通っていたんです。ずっとピアノを専攻していたのですが、パソコンを使って作品を作ることに興味を持ち、大学では転科してコンピュータ音楽や3DCGを学びました。そして卒業後に、元々中学生の頃から好きだったテレビゲームの業界にCGデザイナーとして入社。ゲーム内のムービーの制作や、チームマネジメント・進行管理などを担当していました。

――クリエイターとしてのキャリアが社会人の第一歩だったのですね。なぜゲーム業界から美容医療業界へ転職しようと思ったのですか?

業界的にゲーム開発が大規模化する中で役割が細分化され、一部の工程の専門家としてのキャリアプランしか見えないことに違和感があり、転職を考えました。SBCメディカルグループには、企画から制作までを総合的に動かすポジションで働きたいという思いや、自分自身のライフプランを大きく変えたいという気持ちから入社を決めました。

また、“真逆の環境に挑戦してみたい“という思いもあったので、男性の割合が高かったゲーム業界から環境を変えて、女性比率の高い会社でワークライフバランスを整えたいと考えたことも入社理由の一つです。

――実際に、SBCメディカルグループに入社してからの業務内容も教えてください。

入社直後はクリニックのSNSマーケターとして、クリニックやドクターのブランディングを目的にInstagramやYouTubeの更新を担っていました。

動画の編集やSNSの運用に携わるのは初めてだったのですが、担当させていただいた先生(ドクター)が新しいチャレンジにも背中を押してくれる方だったので、自分なりに考えながら業務を行っていました。例えばコロナ禍でクリニックが休診日を設ける中、「SNSを見ている人は増えるのでは?」と仮説を立てコンテンツの更新頻度を増やすなど、自分の裁量で提案しながら挑戦することができたんです。

――確かにSNSで情報収集をする方はコロナ禍以降とても増えましたよね。

来院してくださるお客様には「YouTubeのコンテンツ全部見ました!」と言ってくださる方もいて、ありがたいなと思っています。

――私たち消費者も、そういったコンテンツで美容の知識を深めたり、施術の下調べを行ったりする機会は本当に増えました。それまで働かれていたゲーム業界と制作するコンテンツの内容は大きく異なるかと思うのですが、ギャップはありませんでしたか?

サービスの専門性が高い業界のため、医療業界特有の専門用語やお客様を守るための厳格なレギュレーションの勉強に時間がかかりました。お客様のコンプレックスに触れてしまう側面もあるので、コンテンツ制作を進める中でどうやってお客様に寄り添うのか、どのように伴走するのかを常に悩みながら取り組む姿勢はこれまでとガラッと変わりました。

――医療業界ならではの専門性の高い知識が求められるのですね。その後、SNSマーケティングに特化した新職種を立ち上げられたんですよね。

クリニックのSNS担当を1年ほど担当する中で、各院のSNSマーケターの専門性を専門職として向上させる動きがあり、全国のマーケターに向けての動画研修や、求められるスキルに関する教育コンテンツの制作に関わっていました。そうした背景があり、現在のドクター&クリニックブランディング部の前身となるCPP(クリニック・プロモーションプランナー)運営企画部に加わりました。

――全国向けに発信する立場となると、プレッシャーも大きそうですね……! マーケティングについての情報収集はどうやってされているんですか?

最初はたくさん本を買って読みました。できるだけお客様の気持ちに寄り添うことが大切だと考えているので、可能な限りいろいろな情報を見るようにしていました。特にSNSは移り変わりが激しいので、通勤中などにチェックして勉強するようにしています。

勉強と思いすぎると辛くなってしまうこともあるので、実際に関わっているドクターのいちファンとして「先生の友達の○○先生はこんなことやってるんだ」と、知人をリサーチする感覚で情報収集しています。

■企業理念への共感が行動指針になっている

――お話を聞いて「寄り添う」や「伝えていく」といったキーワードが印象的だなと思っていたのですが、そういった姿勢の根底にある堀越さんのモチベーションの軸は何かあるのでしょうか。

キャリアチェンジを通して「生活に必須ではないがあった方がいいもの」「それがあることによって救われる、人生が豊かになる商材やサービスに価値貢献したい」という思いが自分の中で共通していることに気づきました。

また、SBCはさまざまな理念や行動指針がしっかりと定められている会社なのですが、それにしっかりと共感して業務に活かしていくという文化があります。何か判断に迷った時は理念に沿って自分はどう考えるのか、「お客様・スタッフ・社会の三方良し」の行動になっているかを客観的に考えたり、現場で話し合ったりすることで解消しています。

――企業理念が自然と根付いていてすてきですね。マネジメント業務でも理念に基づいた考え方を大切にされているのでしょうか?

評価のフィードバックを行う際にも、企業の理念という共通言語があることでメンバーの伸びしろや魅力を具体的に伝えやすく、チームの意識を統一しやすいと感じています。

――数ある理念の中で、堀越さんが大切にされているキーワードはありますか。

一番好きな理念は「素直」です。社会人歴も長くなり、マネジメントする立場になると分からないことを分からないと言いづらくなることってあると思うんです。どんな立場の人からも学び続ける意識を持つことが大切だなと考えています。

常に「120%成長のために、最短で近づくための素直さをもったアプローチができているか?」と自分に問いかけながら仕事をしています。

■ドクターとお客様の架け橋に

――お忙しいかと思いますが、オンとオフの切り替えはどうされていますか?

元々SNSを見るのは好きで、その延長線上として仕事があると感じているのであまりオンとオフを意識しすぎず情報収集は行っています。プライベートでは、動物が好きなので動物園に行ったり動物の動画を見たりしてリラックスしています。動物園では母にショート動画の取り方をレクチャーすることも(笑)。

――本当に楽しみながらお仕事をされていることが伝わってきます。堀越さんの今後のビジョンも教えてください。

現在はドクター&クリニックブランディング部で医師やクリニックの魅力の発信やブランディングを主に担当しているのですが、お客様の悩みに寄り添った治療別の専用メディアを軌道に乗せることが今の目標です。

美容医療業界全体の情報が増えすぎてしまい、誰に何を任せればいいか迷ってしまう方も増えていると思います。SBCでは会社全体の取り組みとして「マルチブランディング戦略」を推進しています。その一環としてマーケティング部では、例えば「二重整形であればこのドクター」といったようにお客様の細分化されたニーズに対応できる情報発信を行い、美容医療に対するハードルを下げる取り組みを進めています。また、シンガポールやタイをはじめとするASEAN市場を中心にグローバル展開を広げており、世界中のより多くのお客様に寄り添えるよう、挑戦を続けています。

――最後に、キャリアに悩む読者へ向けて、これまでの歩みから感じていることや、今後大切にしていきたい考え方を教えてください。

異業種のキャリアチェンジですが、「生活に必要ではないけど、あったらいいものを届ける」という自分の軸は変わっていません。その手法や関わる立場は変わりましたが、コンテンツ制作からスタートして、マーケティング戦略や分析、SEOの知識などできることの幅が地続きで広がったなと感じています。

“ワークライフバランス”と言われますが、人生の中で大きな時間を占める仕事で何をしたいか考えた時に、業務時間だけ過ごすのではなく、やっぱり好きなことをしたいという気持ちを譲れなかったです。できることを増やし続けたい、新しい挑戦をし続けたいという気持ちが未来につながっていくのではないかと思っています。

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