アンチ・ブラックフライデーのミッション掲げるバシリカ・ファーム&フリー(杉本佳子)

2025.12.02 06:00
提供:繊研plus

アメリカは、感謝祭(11月最終木曜日)の翌日のブラックフライデーから歳末商戦がスタートする。かつては早朝からセール品を求めて買い物に行ったことがあったが、もうずいぶん前からそうしたところに行く意欲がなくなっている。そうした中、「ああ、こういうショッピングイベントはなんか今っぽい」と思えるイベントに行ってきた。

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その名は「バシリカ・ファーム&フリー・ホリデーマーケット」。ニューヨーク市から車で北に2時間以上行ったハドソンという街で、28日から30日までの3日間開催された。主催者によると、今回は120社が出展。今年からアジア系のマーケット「エノキ」が隣接して開催されるようになり、5千から6千人が訪れている。

バシリカ・ファーム&フリー・ホリデーマーケット会場外観
バシリカ・ファーム&フリー・ホリデーマーケット内観

創業者のメリッサ・オウフ・デー・マウーさんは、モントリオール生まれのカナダ人。結婚を機にアメリカに移住し、かつてロックバンドでベースを弾いていたという。マウーさんは大企業への対抗意識が強く、「アンチ・ブラック・フライデー」の位置付けで古着、ハンドクラフト、農場のフードを取り入れた「バシリカ・ファーム&フリー」を2013年に始めた。

創業者のメリッサ・オウフ・デー・マウーさん

手作りや古着の温もり感が漂うマーケットを象徴するものの1つは、入り口近くにいたラッピング屋さん。古い布地とリボンを再利用したラッピングを10ドルから25ドルで提供していた。

ギフトラッピングのコーナー
ギフトラッピング

天然染めの服を売っているベンダーは天然染めのキットも販売していて、日本のインディゴやメキシコのマリーゴールドも売られていた。

天然染め

ニューヨーク市在住の篠原倫代さんは、手織りの服のブランド「Shino」で2〜3年前から出展している。「手仕事の好きな人、子連れでお金に余裕のある人が多いイメージ」と篠原さん。規模と人出は変わらないものの、ベンダーからの人気が高まっているそうだ。その理由は出展費が325ドルから450ドルと格安な上、同じくニューヨーク北部のキングストンで開催されている同様のショッピングイベント「フィールド+サプライ」と客層が変わらないことにある。フィールド+サプライの方が規模が大きい分、「売り上げは多いけれども、ここ(バシリカ・ファーム&フリー)も負けてない」と篠原さん。ちなみにShinoの売れ筋はアフリカの生地と自分で織った生地をドッキングしたカーディガン(330ドル)で、7〜8年前にブランドを初めて以来のロングセラーになっているそうだ。

Shinoの篠原倫代さん

エノキには、ニューヨーク在住の大竹さん夫妻によるジュエリーブランド「8.6.4.」が出展していた。大竹さんによると、時期柄、カシミアのビーニーがよく売れたという。

8.6.4.

フードコーナーでは、土壌の健康を害さない上に気候変動対策にもなり得るリジェネラティブ農法を実践し、刑務所に投獄された人々とその家族に食料のサポートをしている黒人経営の「スイート・フリーダム・ファーム」が出展。ワッフルやメープルシロップなどを売っていた。「GROW FOOD NOT PRIZONS」のスローガンを掲げていて、マウーさんは「ミッションのあるベンダー、非営利組織も入れるようにしている」と話していた。

スイート・フリーダム・ファーム

マウーさん自身がミッションを感じて、バシリカ・ファーム&フリーを運営しているのだろう。入場料をとっているが、1人5ドルと手頃で、しかもここ10年変えていないという。バシリカ・ファーム&フリーは、毎年この時期以外に5月と7月も開催されている。

ハドソンはアーティストが移り住み、ここ7〜8年は特に小洒落た店やレストランが増え、人気が高まっている街だ。

ハドソンのワレンストリート

ニューヨーク在住のイラストレーター、ココマスダさんも昨年、メインストリートのワレンストリートに日本から取り寄せた商品を売るセレクトショップ「CoCollaborations」をオープンした。

オープン以来売れているのは「ブンザブロウ」だ。巻き上げ絞りのパンツ(450ドル)が履きやすくて華やかなことから、特に人気が高い。最初は黒のみで小さいサイズしかなかったが、お客から「ブルーや赤はないの?」と聞かれることが多く、サイズもミディアムとラージが売れることから、色とサイズを増やしてもらったそうだ。同様のスカートも人気で、トップやドレスも売れている。大きく伸びる小さいバッグ(42ドル)も、ギフト向けに人気が高い。

売れ筋のパンツを持つココマスダさん
ブンザブロウのミニバッグ

他のセレクトショップでも、日本のブランドやニューヨーク在住の日本人によるブランドの商品がちらほら見かけられる。高所得者層が多く訪れる人気の街、ハドソンにじわじわと日本の商品が広がっている。

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89年秋以来、繊研新聞ニューヨーク通信員としてファッション、ファッションビジネス、小売ビジネスについて執筆してきました。2013 年春に始めたダイエットで20代の頃の体重に落とし、美容食の研究も開始。でも知的好奇心が邪魔をして(!?)つい夜更かししてしまい、美肌効果のほどはビミョウ。そんな私の食指が動いたネタを、ランダムに紹介していきます。また、美容食の研究も始めました(ブログはこちらからどうぞ)

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