

<九龍ジェネリックロマンス>「最終話の後に、もう一度第1話を観てほしい」 プロデューサーが語るアニメ独自の構成と狙い

恋はいつか消える記憶なのか、それとも永遠に残る真実なのか――。眉月じゅんによる漫画「九龍ジェネリックロマンス」(以下、「九龍GR」。毎週土曜夜23:00〜、テレビ東京系/ABEMA・ディズニープラス・FOD・Hulu・Lemino・TVerほかで配信)のアニメーションが佳境を迎えている。さらに8月には実写映画も公開予定。ミステリーとロマンスが交錯する独特の世界観は、どのようにして映像に落とし込まれたのか。その挑戦に挑んだのは、バンダイナムコフィルムワークスの有澤亮哉プロデューサー。今回は、アニメの企画の立ち上げから、最終話に迫る本作制作の裏側まで語ってもらった。
「九龍城砦」のどこか懐かしい街並み
――まず、今回「九龍GR」のアニメーション、そして実写映画化までの経緯はどのように進んでいったのでしょうか。
弊社(バンダイナムコフィルムワークス)はアニメーションをメインとしつつ、特撮作品、あと実写映画の制作も手掛けています。しかも、メディアに応じた縦割りではない組織なんです。つまり、アニメも実写も両方できる環境にあるので、それを活かせる作品はないだろうかと考えたのがスタートになります。そんな中、『九龍GR』に出会い、漫画を一気に読んでのめり込み、キャラクターや九龍の風景、ミステリーの要素に惹かれました。アニメでも映える要素が多く、実写実写でもリアルに再現できる要素でドラマが構成されていると思い、アニメと実写の両方をやらせてくださいと企画書を提出した流れになります。
――原作サイドの方々とはどのような会話をしましたか。
まずアニメ版については、こちらから「TVシリーズ1クールで完結させたい」という意向をお伝えし、ご了承いただきました。その上で、眉月じゅん先生に先々のストーリーをお聞きして、1クールに収める構成を制作していった形になります。さらに構成シリーズを作るにあたり、海外ドラマのように毎話のラストに「これ、どうなるの!?」と次回が観たくなる構成にしたいとお話しさせて頂き、「いい狙いですね」と先生も仰ってくださいました。
――確かに毎話ラストシーンがグッときます。その本作は監督を岩崎良明さんが務めていますね。
原作の意図や、その雰囲気を丁寧に汲み取って映像を作ってくださっています。実際、原作から構成を変えても違和感なく「九龍GR」として楽しめるのは、岩崎監督の力だと思いますね。あとこれも監督の持ち味だと思うのですが、大人のラブロマンスではあるのですが可愛らしさがあるんです。特に主人公の鯨井令子は過去の記憶がない人間なので、演出やお芝居も相まって、原作のちょっと大人びた印象よりも、少しアニメの方が可愛く見えると思います。
――令子を中心に、ラブストーリーとしての魅力がふんだんに盛り込まれています。
そこは脚本・シリーズ構成の田中仁さんとともに、キャラクターの感情の流れが自然で唐突にならないよう心掛けました。また、キャラクターの気持ちが動くシーンは視聴者が共感しやすいよう注意しています。シナリオ面でも演出面でも、感情の変化を繊細に表現できるよう意識しています。
――一方、「九龍城砦」をアニメで描くためには、どのような点に注力を?
企画の立ち上げから、最大の課題は九龍城砦をちゃんと描けるかどうかだと考えていました。今回、アルボアニメーションさんとご一緒できると決まってから、すぐに美術監督の金子雄司さんにお声がけさせていただいています。この作品のことをお伝えしてぜひ挑戦したいと言って頂けたんです。最初期にはCGで描くことも選択肢にあったのですが、結果手描きでどこか懐かしい街並みを描いて頂いています。おかげで、本当に素晴らしい九龍城砦になっていると思います。
鯨井令子と鯨井Bは、一人二役の予定だった
――「王様ランキング」などの美術を手掛ける金子雄司さんによる、九龍の街並みは没入感がありますよね。また劇伴も挑戦的です。
音楽プロデューサーの土橋陣さんが佐高陵平さんをご紹介してくださいました。僕からは、「劇中のラブロマンスの感情が唐突にならないようにしたい。そして、複雑で情報量が多い作品なので、大袈裟なぐらいその状況を音楽で伝えられるようにしたいんです」とお願いしまして、見事に実現してくださいました。ほかに音楽には日本人が思い描くベタなオリエンタルテイストもあえて入れていただいています。
――鯨井令子役の白石晴香さんは、どのような点に魅力を感じてキャスティングしたのでしょうか。
令子のキャスティングは少し特殊でした。実は原作のプロモーション用PVでは令子を山口由里子さん、工藤を杉田智和さんが演じてくださっていました。ただ、アニメではあらためてメインキャラクターはオーディションをさせていただいたんです。もともと令子と鯨井Bは1人2役で演じる前提で考えていました。けれど、非常に多くのオーディションテープを聴かせていただき、制作チームで協議を重ねた結果、無垢で純粋な雰囲気がありつつも大人のロマンスの印象も出せる白石晴香さんに令子を、大人の色気とミステリアスさが際立つ山口さんに鯨井Bをお願いすることになりました。のちに知ったのですが、白石さんご本人も原作の大ファンだそうで、非常に熱意を持って役に臨んでくださいました。
――工藤発役の杉田智和さんに関しては?
贅沢なことに杉田さんも含めて、オーディションを行いました。ただ、工藤というキャラクターに一番しっくりきたのはやっぱり杉田さん。ご自身も絶対に出たいと強い気持ちで挑戦してくださって、TVアニメでも工藤役をお願いできることになりました。
――そのおふたりを中心に展開されたアフレコ現場の様子はどうでしたか。
原作者の眉月先生がすべてのアフレコに立ち会われていたので、制作サイドとしては少し緊張感もありました(笑)。でも、役者さんたちは原作の大ファンの方も多く、また、出演が決まってから原作を読んだ方々も皆さん「面白い!」と口を揃えて言ってくださって、現場の熱量は本当に高かったです。
――そのおふたり以外で、とくに印象的だった声優の方は?
個人的な意見ですが、タオ・グエン役の坂泰斗さんですね。オーディションテープは聴いていましたが、現場で初めて聴いた瞬間から、「グエンがいる!」と驚きました(笑)。眉月先生も初回のアフレコの段階で「最初からグエンってこんな声だったよね」とおっしゃっていて。初めて聞いたのに、ずっとこの声だったかのように錯覚するほどで、キャラクターとあまりにぴったりでした。先生も隣でうれしそうにされていましたのが印象的です。
最終話のあとに第一話を観てほしい
――これまでの放送で、特に印象的だったシーンはありますか。
個人的には、楊明とグエンといったサブキャラクター同士の絡みがすごく好きです。ただ最も印象深いのはやっぱり第1話。原作単行本の1巻分を丸ごと1話に詰め込むのは挑戦でした。原作1巻の構成が完璧だからこそプレッシャーも大きくて…。でも、シナリオの段階で手応えを感じていましたし、監督の素晴らしい映像表現、音楽の力が加わって、理想的な第1話にできたと感じています。まだ本作を見たことがない方がいらっしゃれば、お決まりの文句ですが、ぜひまず第1話だけでもご覧いただきたいです。
――本当に素晴らしい1話目でした。物語はいよいよ終盤です。今後の見どころを教えてください。
アニメでは原作には描かれていないラストになります。原作ファンの方々はその展開に不安を感じられる方もいるかもしれませんが、きちんと物語として完結します。ただ、謎解き要素のある作品は、どうしても解釈が分かれますし、全員にとっての正解を提示することは難しいとは思います。それでもキャラクターの成長や心情の変化を丁寧に描き、しっかり結論にたどり着く構成になっているので、安心して見届けて頂きたいですね。最終回のあとは、もう一度アニメを見返したり、実写の「九龍GR」や原作漫画でまた違う角度から、物語を楽しんで頂くのも面白いと思います。
■取材・文=河内文博
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