スクリーンで観たい!神秘的で雄大な自然美に圧倒される映画『アニマル』

2024.06.16 17:05

「プラスチックと汚染と権力が支配するのを私たちの世代は見ることになる」「責任を負わなきゃいけないのは僕たち青少年ではない。未来の人だ」。気候変動と「6度目の大量絶滅」の危機の核心に迫るティーンエイジャーの言葉が突き刺さります。インド、フランス、ケニアなどを訪ねた若きアクティビストの記録は、行動することの大切さを教えてくれます。

子どもに「ゾウとイルカは滅亡した」と話す日が来ないために

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暗闇の中で響く鳥のさえずり。美しい声に耳を傾けていると「キモモミスツイの鳴き声。最後に残ったオスの届くことない求愛の歌」というナレーションが流れ、胸をえぐられます。

この40年間で絶滅した脊椎動物は60%以上、ヨーロッパでは飛翔昆虫の80%が姿を消しました。このことを科学者達は「6度目の大量絶滅」と呼んでいます。しかも、それは熱帯雨林を伐採して動物の生息域を破壊し、砂浜に廃棄したプラスチックゴミによる海の汚染といった人間の営みが引き金でもあります。

その現実を食い止めようと活動する2人の16歳がいます。ロンドンで暮らしながら野生動物と環境保護に奔走するベラ・ラック(写真右)と、気候変動にまつわるデモに参加していたパリ在住のヴィプラン・プハネスワラン(写真左)です。
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photo:©fanny Dion
そんな彼らは環境活動家で映画監督のシリル・ディオンに誘われ、絶滅の危機を回避する答えを探す旅に出ます。1つ目の訪問先は米国のカリフォルニア。

地球を想うベラとヴィプランは飛行機での移動をためらっていました。でも、それは問題解決の糸口を探るアクションになると納得し、考古生物学者のアンソニー・バルノスキーに会いに行きます。そこで「6度目の大量絶滅」には生息域の破壊、乱獲、気候変動、環境汚染、外来種の5つの要素が絡んでいると知ります。

清掃と啓蒙でプラスチックを規制する州法の制定にこぎつける

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課題のスケールと複雑さに希望を失いかけたベラとヴィプラン。それでも立ち向かおうと、インドのムンバイへと足を運びます。

弁護士で活動家のアフロズ・シャーは2015年にUターンをすると、海岸がプラスチックゴミで埋め尽くされていることに愕然とします。そこで彼は美しい故郷の砂浜を取り戻すべく、ビーチクリーンを開始。さらには、住民にプラスチックを使わなくてもいい暮らし方を発信し続けます。活動に共感した人々が徐々に増えていき、さらには2018年にプラスチックを規制する州法が定められました。

「まずは行動をすること。行動してから広める。アクションをしてないなら広めないように」というアフロズの発言に2人の心は揺さぶられます。

人間の胃袋を満たすための肥育現場の切実な舞台裏も描く

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家畜を育てるためには多大なエネルギーを要し、温室効果ガス排出量の約15%を占めます。ただ、動物性タンパク質は私達のカラダを作るうえでも重要とされています。現状を探るためにフランスの食卓ではおなじみのウサギ肉の畜産業者を訪問。

1羽あたりA4サイズのスペースしかないゲージに、所狭しとおさめられた数千羽の姿を目の当たりにした2人。思わず辛辣な質問を繰り広げます。ヴィプランの「なぜ、こんなことをするのか?」という問いに「情熱だよ」と答える生産者。「情熱ならばこのように機械的には扱えない」と反論するうちに協同組合と畜産農家の歪な関係と過酷な財政事情が浮き彫りに。

ショッキングな現場を見学し、経済成長と自然破壊は表裏一体であると思い知ります。打ちひしがれつつも、パリでソーシャルエコロジーを専門とする経済学者の話を聞き、新たな視点を授かります。そうして、生物界と共生する方法を模索し始めたのでした。

ベラが憧れていた動物学者のジェーンと対面

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そのヒントを得ようと、チンパンジー研究の第一人者であるジェーン・グドール(環境保護活動家、国連平和大使)にアドバイスを求めます。彼女は26歳の頃にタンザニアへ赴き、生態調査を行いました。

愛や利他精神といったきれいな面だけでなく縄張り争いまでをつぶさに観察。チンパンジーにも個性があるということを発表し、これまでの常識を塗り替えました。

「人間は自然となじむ経験がなければ、大切にできない」ジェーンが紡ぐ一言は都市での快適な暮らしを求め続ける私達の真理を突いています。

野生のゾウやキリンと出会うためにケニアへ

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広大な草原を闊歩する野生動物を至近距離で眺め、興奮を隠しきれない2人。ケニアのムパラ研究センターの所長から、ゾウはフンによって微生物を生み、様々な種を育むため、生態系のエンジニアであると解説を受けます。
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また、「生物の種を失い過ぎると人間も絶滅しかねない。空気も水も地球の産物で、多様性が保てないとバランスが崩れます。そして、私達に破壊して食い尽くす権利はない」と警鐘を鳴らしていました。

国の力で動物の楽園を復活させるコスタリカ

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中南米の同国は農地の開拓によって1980年代に20%まで減ってしまった熱帯雨林を45年かけて森へと修復し、さらに45年かけて原生林へと戻す計画を実行しています。減少が懸念されていたバクやピューマも見かけるようになりました。

2人は当時の大統領であるカルロス・アルバラードにもインタビューしています。「国民が多様性を守っているというプライドを持っているんですよ」というコメントに目を輝かせていました。

全編を通じて未来を築く彼らが今を作る大人達に直球で問いかける言葉はハッとさせられるものばかり。また、カメラが映し出す自然美に圧倒されます。この神秘を若い世代に引き継ぐには、大人である私達の自然と動物との共生へ向けた行動が鍵を握っています。
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writer / 松岡真子 photo / ©CAPA Studio, Bright Bright Bright, UGC Images, Orange Studio, France 2 Cinéma – 2021

※記事の内容(本文・画像など)に関しては、許諾を得て掲載しております。

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