気を付けたい「鳴り物入り」のネガティブな意味合い

気を付けたい「鳴り物入り」のネガティブな意味合い

2020.07.25 09:10

「鳴り物入り」は、「鳴り物入りでデビューした新人」のように、よく使われる表現ですが、どういう意味なのか、なぜ「鳴り物入り」という言い方をするのかなど、深くは理解していない人も多いのではないでしょうか。

本記事では「鳴り物入り」の意味や語源、使い方の注意点について説明していきます。

■「鳴り物入り」の意味やネガティブ要素

まずは、「鳴り物入り」の意味について解説していきます。

◇「鳴り物入り」の意味は「おおげさな宣伝をすること」

「鳴り物入り」は、「物事をおおげさに宣伝すること。にぎやかに景気をつけること」(『日本国語大辞典』小学館)という意味です。

主に、始まる前から大々的に盛り上げる様子を指し、「鳴り物入りでデビューした」「鳴り物入りの新人」などと使われています。

◇「鳴り物入り」のネガティブ要素

前述した定義にも「おおげさに」とあるように、ネガティブな要素も含んでいます。

実力や実態が伴わないのに大々的に宣伝することに対し、呆れ、非難する気持ちを込めて使う場合もあるのです。

以下のように、辞書にもネガティブな語義が掲載されています。

ものものしい宣伝。(『三省堂国語辞典』三省堂)

※ものものしい=おおごとだ、という感じを与える様子。大げさに力を見せつける様子。

前宣伝が度を越して行なわれたりなどして、ちょっとどうかと思われる様子。(『新明解国語辞典』三省堂)

例えば、「事前の宣伝や評判により期待が高かったのに、実際のところ、それほどでもなかった」というケースで、後から振り返って「鳴り物入りで登場したにもかかわらず、振るわなかった」などと評することがあります。

これは、スポーツ選手や芸能人を評価する文章でよくある使い方です。

「鳴り物入り」の由来・語源は歌舞伎

「鳴り物入り」は、日本の伝統芸能である歌舞伎から生まれた言葉です。

歌舞伎の上演に際して、三味線が主たる伴奏楽器として使われますが、助奏として小鼓・大鼓・太鼓・鉦(かね)・銅鑼・笛などの和楽器も使われています。

これらの楽器を総称して「鳴り物」と呼んでいます。

もともと、これら「鳴り物」を鳴らすことにより、舞台や舞踊を大いに盛り上げることが「鳴り物入り」でした。

つまり、楽器でにぎやかにはやし立てる様子を「鳴り物入り」といったわけです。

例えば、島崎藤村の小説では、実際に笛・太鼓で盛り上げている情景に「鳴り物入り」が使われています。

「あの先年の「ええじゃないか」の騒動のおりに笛太鼓の鳴り物入りで老幼男女の差別なくこの街道を踊り回ったほどの熱狂が見られるでもない」(島崎藤村『夜明け前』)

こうしたところから意味が広がって、にぎやかにはやし立てて宣伝すること全般を「鳴り物入り」というようになりました。

■「鳴り物入り」の使い方(例文)

「鳴り物入り」の使い方を例文で見てみましょう。

・本格派右腕と高く評価され、鳴り物入りでの入団だった。

・主演俳優の妹役で、宣伝ポスターにも大きく写るほどの鳴り物入りのデビューを飾った。

・新商品は、記者会見にも社長が参加するなど、鳴り物入りで発表された。

このように、周囲が注目し、大いに盛り上げている様子をいうわけです。

一方で、以下のように、「大々的に宣伝する割にはいまいちだった」「実力が伴わないのに大げさに喧伝される」という皮肉・非難の意で使われている例も多いです。

・鳴り物入りで始まったBSデジタル放送であるが、予測よりも視聴者の増加が伸び悩んだ。

・改編の目玉として鳴り物入りでスタートしたものの、視聴率は芳しくなかった。

「鳴り物入り」が使われる時には、どのような意図で使われているか、文脈を注視する必要があるわけです。

「鳴り物入り」の言い換え表現

「鳴り物入り」は、単ににぎやかに盛り上げる様子をいう場合と、宣伝が大げさ過ぎると皮肉を込めて使う場合とがあります。

ですから、自分はポジティブな意図で使ったとしても、相手は、皮肉・嫌味を言われたとネガティブに受け取る可能性があるのです。

誤解を避けるためには、「鳴り物入り」を使わずに、他の表現に言い換えた方が安心です。

◇にぎやかな様子を表したい場合

にぎやかな様子を表したい場合には、以下のような表現に言い換えてみると良いでしょう。

・華々しく

・大々的に

・盛大に

・派手に

・にぎにぎしく

◇少々やり過ぎだという皮肉を込めたい場合

少しやり過ぎである様子に対して皮肉を込めたい場合には、次の表現への言い換えが可能です。

・大げさに

・大仰(おおぎょう)に

「鳴り物入り」は文脈を読むことが大事

「鳴り物入り」は、歌舞伎に由来する言葉で、小鼓や太鼓・笛などの楽器(鳴り物)ではやし立てる様子をいった言葉でした。

そこから意味が広がり、大々的に宣伝する様子に使われています。

新人や新商品が大いにPRされている時に「鳴り物入りで」と表現されることが多いです。

宣伝が大げさな割に実力が伴わない、というネガティブな皮肉の意味で使われている場合もありますので、使われている文脈をしっかり読みましょう。

(吉田裕子)

※画像はイメージです

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