渾身のサソリ固めで前哨戦ながら、王者・渡辺未詩を下した荒井優希。その裏ではさまざまな想いが交錯していた

【東京女子プロレス】元SKE48荒井優希、「言っちゃったからには、もう逃げられない」自ら追い込んだ王座への挑戦

2026.03.28 20:03
提供:ENTAME next

プロレスデビュー5周年を目前にして、東京女子プロレスの最高峰であるプリンセス・オブ・プリンセス王座への挑戦が決まった荒井優希。ある意味、これまでのプロレス活動の集大成となる一戦を前に「ダメダメだった2025年」と「あえて自分を追い詰めた2026年」の真実を赤裸々に語る。

――早いもので荒井さんがプロレスラーとしてデビューしてから、この5月で5年を迎えます。そして、昨年春にSKE48から卒業し”二刀流“からプロレス一本の道を選んでから、もうすぐ1年です。

荒井 そうですね。正直、昨年はいまひとつというか、全然、結果を残せなくて。

――どうしても『プロレス一本で!』という宣言を聞くと、観る側も期待してしまいますが、明日から急に変わるなんてことはないわけで。気持ちの面では大きく変わったでしょうけど、肉体改造だったり、試合運びなどは変わっていくのに時間がかかります。そういう意味ではイメージ的に少し損をしてしまった印象もあります。

荒井 いや、私が甘えてしまったんですよ。周りに優しい人が多いから、アイドルを卒業したあととかも「11年もSKE48でがんばってきたんだから、今は少しゆっくりしてもいいんじゃない?」みたいな言葉をかけられて、それに甘えてしまった部分はありますね。昨年の3月31日に卒業したんですけど、引っ越しとかでドタバタしていて、落ち着いたのは6月ぐらい。そこからはプロレスに専念できる環境が整って、道場での練習のほかにジムに通ったりしたんですけど、その成果が出はじめたのは夏ぐらいからですね。

――7月には当時、瑞希が保持していたプリンセス・オブ・プリンセス王座に初挑戦しましたが敗退してしまいました。

荒井 瑞希さん、強かったです。私、まだまだチャンピオンの器じゃな言って痛感した試合でしたね。そこからトーネメントなんかでも、全然、結果が残せなくて。なんか思ったようにいかないというか、パッとしなかったですよね。年末になって、1年を振り返ったときに『あぁ、今年はダメな1年だったなぁ〜』と思っているところで、山下(実優)さんに秒殺されて……(12・21たま未来メッセ大会でのシングルマッチにて、わずか65秒で惨敗)。ダメな1年だって認識したタイミングでの瞬殺だったので、ショックだったし、ものすごく落ち込みましたね。

――チャンピオンでもなくなって、アイドルとの二刀流でもなくなって、正直、取材する側としては、いままでよりちょっと離れた距離から定点観測するような形になったんですけど、俯瞰で見ると、そこまでダメダメだったとは感じていなくて。それこそ夏あたりから、グッと体が大きくなって、プロレスラーらしい体つきになったな、と。背も高いので、相手の攻撃を受けても弱弱しくないというか、逆に映えるようになった気がします。そういえば昨年春に対戦した里村芽衣子さんが、荒井さんの頑丈さにびっくりして「いったいアイドルってどんな鍛錬をしているんですか?」と聴かれました(笑)。

荒井 特別なことはしてこなかったですよ。たしかに運動量は多かったですけどね。体力とは別の部分ですけど、ひとつ言えるのは『逃げださない心』はものすごく鍛えられましたね。ダンスのSKEと呼ばれてきたので、求められるレベルも高くて、レッスンも厳しかったんですけど、まだ高いレベルまで到達できていないとわかっていてもステージに立たなくちゃいけないし、一度、ステージに立ってしまったら、曲が終わるまで歌って踊り続けなくてはいけないから、逃げ出すことができないじゃないですか? それでかなり精神的に鍛えられましたね。バックステージに戻るとみんなで「辛い」って泣いたりしていましたけど、それはステージでは出せないですし。

――ある意味、プロレスにもつながる精神論ですね。ただ、アイドルの場合、曲が流れているあいだはたしかに逃げ出せませんけど、プロレスでは気持ちが折れてギブアップしたり、体力が尽きて3カウントをとられてしまったら、その場で強制終了です。

荒井 そこなんですよね。正直な話、上を目指さなければ、毎日、楽しく過ごせるんですよ。いま、東京女子プロレスには優しくて甘えさせてくれる先輩がたくさんいて、かわいい後輩たちもたくさん増えて、人より一歩前に出ようと考えなかったら、平和に過ごせる環境なんですよ。でも、私は現状に満足していないので。今年のあたまの時点では、とにかく山下さんに勝たないと先に進めない、ということで頭がいっぱいで。だから、タイトルに挑戦することも考えていなかったんですよ。挑戦者決定6WAYマッチには出場したんですけど、同じ試合に出ていた山下さんに勝つことしか頭になくて。結果、サソリ固めで山下さんに勝ったら、挑戦権もついてきた感じで。だから、しばらくはフワフワしていましたね。本当に私でいいのかな?って思いもちょっとあって。

――1月に挑戦権を獲得して、2月と3月はまるまるチャンピオン・渡辺未詩との前哨戦になりました。2・14後楽園で渡辺をエプロンからのフルネルソンバスターで場外に投げ下ときに「たしかに、そこまでしないと勝てないよな」と震えたのと同時に「あぁ、ついに腹を括ったんだな」と。先日の調印式ではチャンピオンを飛び越えて、東京女子プロレスのエースになる、という強気な発言も飛び出しました。

荒井 正直に言っていいですか? かなり背伸びをした発言でした(苦笑)。これはもう自分に発破をかけるというか『言っちゃったからには、もう逃げられないよ。やるしかないよ』と自分を追い詰めるために言いました!

――なんと正直な! ただ2カ月間に渡る前哨戦を追っていると、とにかく渡辺未詩がどんどん怖くなっていくのが、本当に恐ろしくて。タイトルマッチを迎える前にふたりとも燃え尽きちゃうんじゃないか、と心配になるレベルでした。

荒井 前哨戦がはじまって、最初に感じたのは『あっ、未詩さん、本当に強いんだ』。いままで、あんまり当たることがなかったので、その強さを肌で感じたというか、そうか、チャンピオンって強くなくちゃダメだよねって。

――前哨戦はずっと押されっぱなしでしたが、3・7新木場でのタッグマッチでようやく1勝をマーク。しかもサソリ固めでのギブアップ勝ちです。

荒井 もう限界に近かったんですよ。自分を追いこむために強気なことばかり言ってきたのに、全然、勝てていない。このまま前哨戦が全敗で終わってしまったら、どうしようと、違う意味で追い詰められていたので、ああやって荒井が勝つ姿を見せることができてよかったなって。これでファンの方も荒井がチャンピオンになれる可能性を信じられるようになってくれたら、と。

――怖くないですか、鬼気迫る渡辺未詩は。

荒井 怖いですよ! でも、それよりも怖いのはそんな未詩さんと闘うことがだんだん楽しくなってきている荒井自身ですよ(笑)。

――両国国技館ではいままで見たことがないような荒井優希の姿を期待する声も高まってきています。新しい技とか。

荒井 新しい技を出すか、出さないかはまだわからないですけど、そういう問題じゃないというか。ただ新しい技をひとつだしたことで「いままでに見たことがない荒井優希だ」と言われるのはちょっと違うなって。今まで5年間、やってきたこと、積み上げてきたことを出し切った上で、新しい荒井優希、見たことがない荒井優希を感じてもらえたら。とにかく、やりきりたいですし、その上でチャンピオンになって、東京女子プロレスのエースになりたいです!

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