撮影/武田敏将 HAIR&MAKE:佐々木博美 STYLIST:村上利香 衣装:LEONARD アクセサリー:UNOAERRE

熊本豪雨を描く『囁きの河』 清水美砂が明かす被災地での撮影体験「痛々しくて、なんとも言えなかった」

2025.07.11 06:03
提供:ENTAME next

1987年のデビュー以来、幅広い役柄をこなす演技派として数多くの作品に出演。2025年も映画の出演が続く清水美砂。2020年7月に豪雨で壊滅的な被害を受けた熊本・人吉球磨地域を舞台にした映画『囁きの河』で、主人公の元恋人で、半壊した旅館の再建を目指す女将を演じる彼女に、撮影エピソードを中心に話を聞いた。(前後編の前編)

――映画『囁きの河』で清水さんが演じるのは、熊本豪雨で半壊した老舗旅館「人吉三日月荘」の再建を目指す女将です。初めて脚本を読んだときは、どんな感想を抱きましたか。

清水 水害で多くのものを失ってしまった人たちが、そこから立ち直って、静かに生活を立て直していく中で、人間模様も再生していく、そこに人間の力強さを感じました。静と動がしっかりと絡み合っているイメージで面白かったですね。

――撮影はいつ頃だったのでしょうか?

清水 2024年の2月と6月です。限られた予算の中で制作された映画なので、大掛かりなことはできなかったのですが、撮影時期を冬と初夏に分けることで、季節や風景の移り変わりをしっかりと映像に込めました。

――初めてロケ地の人吉市に行ったときの印象はいかがでしたか。

清水 小さな町なので静寂がありつつ、お店などには活気があって、町を立て直そうという人吉の方々の力強さを感じました。その一方で廃墟になっている場所もあって、その混じり合いが切なかったですね。ほとんどのビルは2階ぐらいまで水害による水の跡が残っているんです。ある地域では、道が遮断されて孤立した状態となり、今もくま川鉄道が通れないままです。ある地域では、今後のためにと町自体を水没地域に指定して、そこから住民が引っ越していなくなっていました。それを目の当たりにすると痛々しくて、なんとも言えない気持ちになりました。まだまだ町全体を立て直すには時間がかかるんですよね。

――2009年に建設中止が発表された川辺川ダムが、2020年の豪雨災害を受けて、治水対策として再び検討されたという背景もあります。

清水 川辺川ダムの建設が計画されたのは1960年代の話で、それが完成に至らず長期化して、住民からの信用がなくなっていったんですよね。その結果、河川整備がされないままの状態になってしまった。それで2020年の豪雨災害を受けて、水没地域を作らざるを得ない状態になったという現実があるんですよね。

――撮影中は舞台となった旅館に寝泊まりしての撮影だったそうですが、豪雨の怖さはなかったですか?

清水 ありました。特に6月の撮影は映画にも描かれていますが、集中的に雨が降って、水かさが増して、実際に警報が鳴ったんです。「まず高齢の方々は避難を」というアナウンスも流れたのですが、そういうことが撮影中に何度か続きました。そのたびに皆さん避難しなきゃいけないので、特にお年寄りの方々は大変だろうなと思いましたし、そのうち皆さん警報に慣れてしまい、避難しなくなることもあるのではないかと、いろいろなことを考えさせられました。

――作品は重苦しいシーンが多いですが、撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?

清水 主演の中原丈雄さんと、私の夫役を演じた三浦浩一さんは、とても気さくな人たちで、普段からおおらかに過ごしていらっしゃるので私も救われました。やっぱり重苦しいシーンが続くと、自然と気持ちも塞ぎがちになりますからね。舞台となった「人吉旅館」は撮影中も営業していたのですが、そこのコーヒーショップで三浦さんとお茶をして、いろいろなことを話す中で助けられた部分もあります。――光と闇が印象的なシーンが多かったのですが、現場はどのような状況だったのでしょうか。

清水 少人数で撮影していたのもあって、ほとんど照明機材も使わず、自然光を活かす形でした。自分で照明を持っていこうかと思ったぐらいで(笑)。ただ最近のカメラはすごいですね。夜に撮影したシーンも、ちゃんと明るく映っているんです。自然の光を活かすことによって、静かな佇まいの中に、それぞれの生き様が浮き出ているような印象を持ちました。

――清水さんが演じられた女将の雪子という役柄は、どのように捉えられましたか。

清水 旅館の再生を強く望んでいて、夫がPTSDになってしまっても、自分が代わりに立ち上がらなければいけないという強い意志を持った女性だなと感じました。ただ、そこに至るまでの過程は台本に描かれていなかったので、このシーンをどういうふうに表現したらいいのかと悩むこともありました。

――雪子のモデルとなった方がいらっしゃるそうですね。

清水 プロデューサーの方から「雪子のモデルは人吉旅館の女将です」と、最初に紹介していただきました。実際にあったこととは全く違う内容になっていますし、私は映画の中で生きなければいけないので、そこは台本を大切にしましたが、いろいろなお話を女将さんに聞かせていただきました。人吉旅館には水害のときの写真が展示されていますし、人吉旅館のウェブサイトに女将さんのプロフィールが載っていて、彼女の思いなども書かれてあって、とても参考になりました。

▽『囁きの河』2025年7月11日(金)より池袋シネマ・ロサ、シネスイッチ銀座ほかにて全国順次公開

出演:中原丈雄 清水美砂 三浦浩一渡辺裕太 篠崎彩奈 カジ 輝有子寺田路恵 不破万作 宮崎美子

監督・脚本:大木一史配給:渋谷プロダクション

“熊本豪雨”から半年後のある日、母(寺田路恵)の訃報を聞いた今西孝之(中原丈雄)は、22年ぶりに故郷の町に足を踏み入れ、山が削られ、多くの家屋が流されて、川の地形まですっかり変わり果てた故郷の姿を目にする。孝之は、22年会うことのなかった息子の文則(渡辺裕太)と再会。文則は孝之の以前の職である球磨川下りの船頭になるための修業に励んでいるが、かつて幼い自分を見捨てた父に心を開こうとはしない。航空会社の社内に立ち上げられた地方活性化プロジェクトの一員として熊本に戻ってきた元同級生・中川樹里(篠崎彩奈)との関係性を、父の過去と重ねる文則。孝之のかつての恋人である老舗旅館「人吉三日月荘」の女将の雪子(清水美砂)は、半壊した旅館をなんとか再生しようと試みるが、孝之の幼馴染でもある夫の宏一(三浦浩一)は、目の前で父が土砂に呑み込まれるのを見てから、雪子と口を利けていない。孝之の隣人・横谷直彦(不破万作)は、妻・さとみ(宮崎美子)のリクエストで、仮設住宅を出ることにするが……。

公式サイト:https://sasayakinokawa-movie.com/

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