

テレビドラマは時代を映す鏡…NHKのドラマを担当する“編成”の仕事について聞いたみた

「国民的ドラマ」で思い浮かべるのがNHKの「連続テレビ小説」(※以下:朝ドラ)と「大河ドラマ」だろう。ドラマコンテンツは民放各局で多数放送されているが、NHKでも「朝ドラ」「大河」以外にも「ドラマ10」などの多彩なドラマ枠が存在している。どうしてNHKがドラマに力を入れるのか、NHKがやるべきドラマってどういうものなのか?また、よく耳にするが知っているようで知らない「編成」の仕事についてなど、素朴な疑問についてNHKの阿曽沼路加さん、河村陽介さんに教えてもらった。
編成の仕事とは?「ケーキ屋さんに例えれば、ショーウィンドウの中の並べ方や見せ方を考えるようなもの」
ーーまず、阿曽沼さん河村さんお二人の仕事内容についてお聞かせください。
阿曽沼路加:編成の仕事は、日々の放送に関わる細かい作業が多いですが、一方で、例えば秋からの、あるいは来年度からの、ドラマをはじめとして多くの定時番組をどうしたらいいか、あるいは定時の番組がないところにはどういう番組を編成していくのかを考えるのが主な仕事です。私は今はNHKBSとBSP4Kの編成をしていて、またドラマ番組全体の編成も担当しています。
河村陽介:私は総合テレビの編成担当で、また同じくドラマ番組全体の編成担当でもあります。基本的には朝ドラや大河ドラマを含めて、総合テレビのドラマ全般にかかわっています。ほか、広報やPRも一部担当しています。
ーーいきなりですが、「編成」というのは説明が難しいお仕事ですよね。
阿曽沼路加:そうですね。私は先輩から教わってなるほどと思ったのですが、ケーキ屋さんで例えると、ケーキを作る職人さんは番組を作る制作チームの人たちで、編成は、出来上がったケーキを、それぞれの特色を理解して、ショーウィンドウのどこに、いつ、どんな風に並べると、多くの人に届くか、を考える仕事だと思っています。
ーーNHKのドラマには、夏に戦争を題材にしたものをやっているような、「単発ドラマ」がありますよね。そして定時枠では、総合テレビでは「朝ドラ」「大河」、火曜夜10時の「ドラマ10」、月曜から木曜まで夜10時45分の「夜ドラ」、それに土曜夜10時の「土曜ドラマ」などがあります。BSではどういうドラマがありますか?波や枠での特色などがあったらお聞かせください。
阿曽沼路加:NHKBSでは「BS時代劇」、「プレミアムドラマ」という枠があります。BSのドラマはBSP4Kでも放送する高精細なものなど、比較的落ち着いてゆっくり見られるようなドラマを意識しています。
河村陽介:最近だと『団地のふたり』が「プレミアムドラマ」ですね。
阿曽沼路加:あとはNHKBSでは海外ドラマも沢山放送しています。『朝鮮弁護士カン・ハンス 誓いの法典』が始まっていますし、毎日17時台にはBSP4Kで『ミス・マープル』『ジェシカおばさんの事件簿』などのミステリー、や『大草原の小さな家』を放送しています。また、今の視聴者に改めて見ていただきたい名作ドラマがNHKには沢山ありますので、今年度はNHKBSとBSP4Kで年間通して真野響子さん主演の『御宿かわせみ』を放送しています。
河村陽介:地上波の総合テレビはNHKの中で一番の基幹のチャンネルです。特に朝ドラや大河は日本中の多くの人に見ていただくように取り組んでいます。「ドラマ10」や「土曜ドラマ」は特定の主題に取り組んで、共感を呼べる人間を描いていきたいですし、また、今という時代を映すことも大きな役割です。
1~2年先の「時代や流行を意識している」
ーー流行も踏まえて企画決定されているのでしょうか。
河村陽介:そうですね。世の中でどういったものが求められているのかは考えています。例えばテレビだけじゃなくて、動画配信サービスで今どういうドラマが流行っているのかもチェックしています。ただそれをそのままNHKに置き換えても、公共放送として正しいとは限らないので、世の中のニーズを押さえたうえでNHKではどんなドラマを届けたらいいのか、届けるべきかを考え続けています。
ーーNHKのドラマはどのように生まれるのでしょうか。おふたりはドラマの編成担当として、企画の決定にはどのように関わっていますか。
河村陽介:ドラマ番組の企画決定は波や枠によってさまざまですが、どんなドラマもかならず誰かの企画案からはじまるのは変りません。私たちも編成のドラマ担当者として企画の審議に関わることが多々あります。色々な角度から検討しますので、一概には言えませんが、テーマや届けたいメッセージがふさわしいかどうか、あるいはエンタメとして上質か、世の中のニーズを捉えているだろうか、などなどさまざまな要素を加味して考えます。ドラマ番組は準備や制作に時間がかかるので、1年後、2年後に放送するものを企画決定することが多いです。
ーー1~2年後に放送されるドラマを企画決定するというのは、予知能力があるわけではないですし大変難しいですね。時代や流行の“流れ”をどのようにとらえていますか。
阿曽沼路加:編成は視聴者と番組を作る制作スタッフとの間にいる立場だと思っています。制作スタッフのことも考えますが、視聴者としての目線もすごく大事なんですよね。【パッと見て直感的に面白いと思うか】というところを大切にしています。その上で、それが1年後2年後もちゃんとホットな話題かどうかというのは気にして選ぶようにはしています。
河村陽介:トレンドや未来を考えるというのは、企画決定してから放送まで時間がかかってしまうドラマ番組特有の事情かもしれません。それがなかなか、難しいです。
求められているのは「悩みや生きづらさを共感できるようなドラマ」
ーー先ほどネット配信サービスの話が出ましたが、生活者のスタイルも様変わりをしています。昔と現在とでは、ドラマ番組の見せ方も変わりましたか?
阿曽沼路加:変わっていることも多いと思います。例えば、地上波の放送(総合テレビ、Eテレ)は、受信料を払っている方は追加料金無しでほとんどの番組が放送から1週間は見逃し視聴ができる「NHKプラス」のサービスがあります。今はNHKプラスでどう見られるかも、大事な要素になっています。
河村陽介:NHKプラスで番組をスマホやタブレットで視聴する、あるいはテレビアプリで視聴する、といったスタイルも増えています。放送で見てもらうことが大前提にはなりますが、NHKプラスと組み合わせることで、「これまでのやり方では届かない、違う層の視聴者にも見てもらえるかもしれない」ということも考えるようになってきています。そういう意味では10年前20年前とは全然考え方が違いますし、これからもっと変わっていくと思います。
ーー総合テレビのドラマ10で6月17日(火)夜10時からスタートする「舟を編む~私、辞書作ります~」のように、BS波で放送したドラマが総合テレビで蘇るパターンも近年出てきています。
河村陽介:『舟を編む 〜私、辞書つくります〜』はNHKBSのプレミアムドラマ枠でかなり反響が大きかったので、より多くの人に見ていただけるように総合テレビで放送することになりました。いろいろチャンネルを持っているのがNHKの強みなので、それを駆使して少しでも多くの人に届けられるかを考えています。
ーーBS波のドラマ番組はこれまでよりも需要が高まっているのでしょうか?
阿曽沼路加:そういう肌感覚はありますね。プレミアムドラマとBS時代劇は、去年から好調な番組が多いです。コンスタントにより多くの方に見ていただけている手ごたえがあります。
ーー“時代の映し鏡”としてテレビは今日まで続いてきました。特に「ドラマ10」や「土曜ドラマ」ででは社会派のテーマの印象があります。
河村陽介:そうですね。NHKのドラマはやはり社会性や時代性を大事にしていると思います。好評をいただいた『しあわせは食べて寝て待て』は暮らしの中のささやかな出来事を取り扱っていますが、同時に今の時代ならではの悩みや生きづらさを扱っています。そういうところで共感できるようなドラマを期待されている視聴者の方は多いと思います。
阿曽沼路加:面白くなくてはいけないと思いますが、面白いだけでは終わらないドラマを届けたいですね。「視聴者が見たいもの」と「視聴者に見てほしいもの」両方を考えて作られているのがNHKのドラマだと思います。
NHK編成担当がすすめるドラマとは?
ーードラマはやはり人気のコンテンツだと思いますが、ドラマジャンルにおいておふたりがこれまでに印象的だった作品はありますか?
阿曽沼路加:夜ドラ『ワタシってサバサバしてるから』は、実は私自身は企画書の段階ではそんなに響いてなかったんですが、編成の先輩方が推していた作品でした。蓋を開けたらヒットして、シリーズ2も放送することになったので印象的でした。私はまだ若かったなと思いました。今は面白いなと思って見ています(笑)。
河村陽介:私は『東京サラダボウル』です。新宿を舞台にしていて、海外の人や性的マイノリティーの方も増えている中で生じる問題を説教臭くなく伝えていて、かつドラマとしてもすごく面白いです。ちゃんと社会に切り込んでいく感じが印象的でした。
ーー今後の注目作についてお聞かせください。
河村陽介:総合テレビでは、6月21日(土)夜10時から放送がスタートする土曜ドラマ「ひとりでしにたい」です。主演が綾瀬はるかさんで、今の時代の生きづらさを抱えている主人公をチャーミングに描いた作品です。綾瀬はるかさんだからこそ皆さんに伝わるものがきっとあります。テーマは「終活」ですが、コメディー要素もあり“よりよく生きて、よりよく死ぬ”という前向きな作品になっていますので、土曜の夜の時間帯に多くの方々に見ていただければと思います。
阿曽沼路加:NHKBSでは6月22日(日)夜10時からスタートするプレミアムドラマ『照子と瑠衣』です。70代女性二人が主人公の作品で、耐えてきたこれまでの人生をかなぐり捨ててふたりで逃避行を始める・・・、というドラマチックな、非日常感がある作品です。女性ふたりの友情、連帯、が時にコミカルに、歌と笑いと涙いっぱいに描かれます。演じられる風吹ジュンさんと夏木マリさんの息がぴったりで、ワクワクして楽しんで見ていただけると思います。
編成業務は「視聴者の方の良い反響を見られるのが醍醐味」
ーー編成として特に策を練った事例はありますか?
阿曽沼路加:大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』は、PRなどで初回を盛り上げて放送しただけではなく、時間枠が決まっている再放送以外でも、機会があるときに再放送をどこに編成するかということも、編成全体としてかなり考えています。あと『浮世絵ミステリー』などの関連番組をBS波ではいつ放送するのが適切か、地上波で放送する時はEテレがいいのか総合テレビがいいのかなど、色々考えました。
河村陽介:それこそドラマ10の『しあわせは食べて寝て待て』はかなり好評をいただいたので、最終回の前に出演者のスペシャルトークと名場面をお届けする特番、『しあわせは食べて寝て待て~ありがとうSP』を放送しました。そういう柔軟な編成も大事だと思っています。
ーー最後に、編成の仕事の醍醐味をお聞かせください。
河村陽介:世の中の流れを読んで、求められているものを把握して、アウトプットしていくことに充実感があります。いかに多くの人の心に響く番組を届けられるかと常に考えて、実際に視聴者の方が感動してくれたり笑ってくれたりする反響を見るとやはりうれしいですね。
阿曽沼路加:私は自分が面白そう、楽しそうって思ったことを大事にするっていうのをモットーにしていて、それを具体化できるのが編成の仕事の醍醐味だと思います。他の人が面白いって思わなくても、「自分は引っかかった」という思いが、ときには周りを動かすきっかけになることもあって。自分の編成によって視聴率や反響という形で結果が出ると、すごく嬉しいです。その瞬間にやりがいを感じます。
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