善意で渡したリンゴがまさかの時限爆弾に…空港検疫の大切さを描いた漫画に「ゾッとする」の声【漫画】

2025.06.16 18:40

コミックの映像化や、小説のコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョンマンガ部」。今回は、ビッグコミックスピリッツで連載中の、竹良実さんが描く『植物病理学は明日の君を願う』より第29話『招かれざる果実事件』をピックアップ。

竹良実さんが5月12日にX(旧Twitter)で本作を投稿したところ、3.6万件を超える「いいね」と共に、多くの反響コメントが寄せられた。本記事では、竹良実さんにインタビューを行い、創作のきっかけや漫画を描く際のこだわりについて語ってもらった。

中国から持ち帰ったリンゴに潜む病害虫

植物病理学をテーマに、身近に潜む植物病の実態とその脅威に立ち向かう科学者たちの姿を描く本作。今回は、空港検疫に関するエピソードだ。

東京帝央大学の准教授で植物病理学者の叶木レンリ(かのうぎ)は、ある日生徒たちを連れて成田空港へ来ていた。植物病理学の観点から空港では何が起きているのかを見学することが目的だった。

植物防疫官の案内で、輸入貨物がどういった検査を受けているのかを見学する学生たち。全てが手作業で行われ、葉っぱも一枚一枚丁寧に検査を受けていることを目の当たりにする。異常が見つかった場合の対処法や、国内に病害虫を広めないために空港や港が阻止していることを学ぶ。

その後、携帯品検査場を見学することに。検査を拒むおじさんのカバンの中には、中国から持ち込まれたリンゴがあった。そして、そのリンゴはなんと「寄生果」であり、現在最も警戒されている病害虫「コドリンガ」の可能性であるとわかる。

事の重大性を防疫官が伝えると、おじさんは同じリンゴを見知らぬおばあさんに渡してしまったと言う。おじさんがおばあさんに善意で渡したリンゴが、まさかの時限爆弾となりかねない緊急事態となった空港。叶木や生徒もそのリンゴを持ったおばあさんを探すこととなる…。

作品を読んだ読者からは、「一般の方々が知らない・気づいてない事がまだまだ沢山ある」「知ってほしい情報が詰まっています」など、反響の声が多く寄せられている。

――空港検疫をテーマとした『招かれざる果実事件』は、どのようにして生まれた作品ですか？きっかけや理由などをお教えください。

一昨年、農林水産省で植物防疫(農作物などを病気や害虫から守るための広範囲での取り組み)についてお話を伺う機会がありました。それを聞いて、こんなにスケールが大きくて、それでいて身近な問題があるんだ…と。

その後農林水産省のポスターを描かせていただいたのですが、一枚の絵では伝えきれないのが残念で、たくさんの人に届くよう一話完結の漫画にしようと決めました。

――『植物病理学は明日の君を願う』のシリーズ全体を通して、特に心がけているところ、大切にしていることなどをお教えください。

ひとつは、こうした題材なのでやはりできるだけ現実の植物病理学に即したものを描くことです。

漫画なので誇張や省略をする部分もありますが、ご協力の先生方のお力を借りながら描いています。

もうひとつは、主人公の叶木先生はもちろん、他の研究者、植物防疫のために働く人たち、農家など、かっこいい仕事人を登場させていきたいなと思っています。

――『招かれざる果実事件』のなかで、特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。

「わずかな害虫でも大被害につながるのはなぜか」を叶木先生が説明したら、コワモテのおじさんが思わず「なるほど…」となってしまうところです。

科学はみんなのもの、という感じがして気に入っています。

――X(旧Twitter)の投稿には多くのいいねやコメントが寄せられましたが、特に印象に残っているコメントなどはありますか？

単に「空港にこんな迷惑な人が！」というトラブルとして取り上げるのではなく、なぜ持ち込めないのかをわかりやすく説明していて良かった、というようなポストをしている方がいらっしゃいました。

上の回答のようなことを考えながら描いたので、嬉しかったです。

また、とても多かったのは「こういうお仕事をしている方に感謝」というコメントでした。(本当にそうですね！！)

――竹良実さんご自身や作品について、今後の展望・目標をお教えください。

植物を守る戦いは空港だけでなく、遺伝子レベルの研究から畑、はては世界規模の取り組みまでいろいろなお仕事があるようです。

読んでくださる方々と一緒に、たくさんの驚きを見つけていきたいです。

――最後に読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。

『植物の君』を熱心に読んでくださる方々や、以前の作品からずっと応援してくださる方々にいつも励まされています。

これからも楽しんでいただけるように頑張ります！