芳根京子、6年ぶりの舞台で中井貴一の母親がモデルの役に「ずっと緊張している」

芳根京子が6月7日、都内で開催された舞台「パルコ・プロデュース2025『先生の背中　～ある映画監督の幻影的回想録～』」プレスコール及び開幕前会見に、中井貴一、柚希礼音、土居志央梨、藤谷理子、升毅、キムラ緑子と演出を手掛ける行定勲と共に登場した。

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映画界の巨匠・小津安二郎をモデルにした人間ドラマ

同作品は、映画界の巨匠・小津安二郎をモデルに、苦悩する名匠のとある一日をユーモアと味わいたっぷりに描いた人間ドラマ。6月8日[日]より東京・PARCO劇場で上演。

昭和30年代。テレビ時代を迎え、映画はその黄金期を終えつつあった。「先生」と呼ばれる日本映画界の名匠・小田昌二郎(中井)は新作の撮影を始めたが調子が出ない。娘のようにかわいがる食堂の看板娘・幸子(芳根)の婚約報告を受けさらに撮影を引き延ばす小田。脚本家の野崎(升)や名女優・谷葉子(柚希)も心配顔だ。

皆の前では粋な振る舞いする小田だったが内心は混乱していた。もう歳だ。健康が優れない。これが最後の1本になるかもしれない。その恐れが小田の心の中から関わりのあった女たちの幻を引き出す。元芸者・花江(キムラ)、戦争未亡人・和美(土居)、銀座のホステス・千代(藤谷)。いつしか小田自身も記憶の中に引きずり込まれる。

映画人として昭和の巨匠の“イズム”を次の世代に残したい

登壇した行定は、制作に至ったきっかけについて「中井さんから“日本映画界の全盛期”と呼ばれている時代の話をよく耳にしていたんです。その話がめちゃめちゃ面白いっていう。その頃の昭和の巨匠や名匠たちを巡る話というのは、僕は映画人としてもものすごく感動するんです。で、こういう話って、時代が進む中で知っている人たちが減っていく。だからせめて物語にしたり、演劇にしたりして、次の世代に伝えていきたいという思いがありまして」と告白。

さらに、「その中で、僕が憧れていた小津安二郎監督のお話に、中井さんのお父さん、お母さんが絡んでいくという。その話は、神格化された巨匠のものではなく、一人の人間としての話だったのが、すごく面白いなと思って。本当は映画にしたいと思ってたんですけど、なかなかの背景が大事過ぎて立ち行かなかった時に、PARCO劇場さんが『まず演劇にしてみたらどうか』という話をいただいて」と語った。

また、行定から熱烈なオファーを受けたという中井は「最初は断りました。最初(のプロット)はもっと小規模で、うちの母の実家というのが(神奈川)大船の撮影所の前で『月ヶ瀬』っていう食堂をやっていまして、『舞台にしたいんです』と(話を)持っていらっしゃったタイトルが『月ヶ瀬食堂』だったんです。(行定から)『中井さんが生まれるまでやりたいんです』って言われて、『自分が生まれる芝居を自分が出るのは嫌だ』と(苦笑)」と打ち明けた。

さらに、「でも、行定監督の『映画人として、そういうものを舞台で残していきたい』という熱意にほだされて、『天国に行った時に、小津先生に怒られるのは俺が一番いいんだろうな』と思ってお受けすることにしました」と回顧。

芳根京子「すごく貴重な機会をいただけてうれしく思っています」

一方、中井の母がモデルとなっている食堂の看板娘・幸子を演じる芳根は「中井さんのお母さまがモデルということを聞いてからずっと緊張しているのですが、中井さんのお母さまのお話をたくさん聞かせていただいたりしたので。すごく貴重な機会をいただけてうれしく思っています」とにっこり。

そんな芳根について中井は「芳根さんから、よく『私、(母親に)合ってますか』って聞かれるんですけど、『(あくまでモデルなので)いや、合ってなくていいですよ』って(笑)。こんなにきれいで可憐じゃないですから。でも時々、見ていて『ちょっと母っぽいな』と思うところもあります」とコメントした。

そんな中、6年ぶりの舞台出演について聞かれた芳根は「本当に皆さんがお優しくて！支えていただいているので、ここに居られています。本当にご迷惑をたくさんおかけしておりまして…。でも、すごくわくわくしております」と恐縮しながらも、久しぶりに感じる舞台の空気を楽しみにしていることを述懐した。

◆取材・文＝原田健