安田顕、数々の“癖強キャラ”を熱演「名バイプレイヤー」「稀代のカメレオン俳優」と称される所以に迫る

2025.05.16 18:00

個性的なキャラクターから硬派な役まで、幅広く演じ分ける俳優・安田顕。最近ではドラマ「ダメマネ！ −ダメなタレント、マネジメントします−」(毎週日曜夜10:30-11：25、日本テレビ系)にて芸能プロダクションの冷徹ドS部長役を演じ、抜群の存在感を発揮している。本記事では、そんな安田の経歴や過去の出演作を振り返りながら、俳優としての魅力に迫っていく。

マルチな才能で活躍する“稀代のカメレオン俳優”こと安田顕

札幌の北海学園大学で演劇研究会に所属し、1996年に大泉洋や森崎博之、戸次重幸、音尾琢真と演劇ユニット“TEAM NACS”を結成したことから始まった安田のキャリア。舞台だけでなく、当時道内で人気を博していたバラエティ番組「水曜どうでしょう」(北海道テレビ)にも出演し、活躍の幅を広げていく。

そんな中、2008年に放送されたNHK連続テレビ小説「瞳」への出演をきっかけに知名度を全国区にまで押し上げ、以降もドラマ「ホタルノヒカリ」シリーズ(日本テレビ系)や「下町ロケット」シリーズ(TBS系)などの話題作に立て続けに出演。“ヤスケン”というニックネームで親しまれるようになった。

そして、放送中のドラマ「ダメマネ！ −ダメなタレント、マネジメントします−」では冷静沈着で常に合理的かつ、感情を人に見せない人物・犀川を熱演。主人公である新人マネージャー・神田川(川栄李奈)を“超ドS”な指示で振り回しつつ、時にはさりげない優しさも見せる“ツンデレ上司”を見事に表現している。

また、俳優以外にも幅広く活動していることで知られる安田。実父とのエピソードを綴ったエッセイ「北海道室蘭市本町一丁目四十六番地」(幻冬舎刊)を出版したり、北海道の音楽番組でナレーションを務めたり、雑誌で連載を持ったりと、マルチな才能を発揮している。

そんな安田の役者としての持ち味は、やはり唯一無二のキャラクター性だろう。彼の魅せる独特な間(ま)の取り方やセリフ回し、表情などは非常に個性的で、実際これまでも他に類を見ない演技を披露してきた。そして演じる役柄によって毎回イメージががらりと変わることから、“稀代のカメレオン俳優”とも称されている。

鼻につくキャラ、いじられキャラなど…唯一無二の名脇役ぶりを発揮

“名バイプレイヤー”としての呼び声も高い安田。主役を上手く引き立てつつ、印象に残るキャラクターを数多く演じてきたが、その中でも特に光る演技を見せた作品をいくつか紹介しよう。

新米編集者が、くせ者揃いの編集部員や漫画家たちを巻き込みながらチーム一丸となって仕事に打ち込むドラマ「重版出来！」(TBS系、2016年放送)。本作で安田は、「週刊バイブス」の編集者・安井を熱演。口を“への字”に曲げて嫌味を言ったり、人を見下したりする安井のキャラクター像を見事に体現し、“鼻につくキャラ”として存在感を放っている。

また映画「ザ・ファブル」(2019年公開)では、義理と人情に厚い裏社会の人間・海老原役を務めた安田。本作は、ボスの命令により1年間“殺し”を禁止され、普通の人間として生活を送る“伝説の殺し屋”ファブル(岡田准一)が、次々と問題に巻き込まれていくストーリーだ。安田演じる海老原はサングラス姿で強面(こわもて)だが、部下やファブルに対し面倒見の良い一面も持ちあわせた人物。安田の演技も相まって、男気や人情味に溢れる魅力的なキャラクターに仕上がっている。

一方、ドラマ「俺の話は長い」（日本テレビ系、2019年放送）は、ニートで実家暮らしのヘリクツ男・満(生田斗真)の義理の兄・秋葉光司を好演。口うるさい妻や面倒くさい義弟、そして反抗期の娘に挟まれながらいじられまくるキャラクターを、安田はコミカルに表現している。中でもニートとなった光司が、満とともに“ニートブラザーズ”を結成するシーンは当時視聴者の笑いを誘い、安田にとって当たり役の一つとなった。

このように、安田は嫌味なキャラから人情味あふれるキャラ、いじられキャラまで、同じ俳優とは思えないほど幅広い役に挑戦しており、“唯一無二の俳優”として映画やドラマで欠かせない存在となっている。

主演作でも持ち前の演技力で見る者を魅了

名バイプレイヤーのイメージが強い安田だが、主演作でも俳優としての魅力をいかんなく発揮している。

自身初となる主演映画「俳優亀岡拓次」(2016年公開)では、脇役メインの俳優・亀岡拓次を熱演。泥棒やホームレス、チンピラ…と、実際の安田のようにさまざまな役をこなす亀岡は、彼だからこそ演じられるキャラクターと言えるだろう。実際に安田は、以前メディアのインタビューにて「役柄的に、日頃のポジションと近しいものがありましてね。これならイケるかもしれないという思いがありました」と、オファーを受けた時の心境について語っていた。

また、主演映画「愛しのアイリーン」(2018年公開)は安田のさまざまな魅力を凝縮させたような作品だ。本作で彼が演じたのは、農家の一人息子で42歳独身、パチンコ店勤務の非モテダメ男・岩男。原作のコミックでは岩男は背丈2mほどの大男で、顔も決して“イケメン”とは言えない人物。一方の安田は身長が170cm台で端正な顔立ちのため、原作キャラとイメージが離れているように思えるが、吉田恵輔監督からの猛アプローチを受け、全身全霊で作品づくりに挑むこととなった。

作中で安田は、どうしようもないダメ男ぶりや、若い女性に振り回される情けない姿など、人間味あふれるキャラを怪演。彼の鬼気迫る演技は見る者を釘付けにし、各著名人からも好評を博している。

どのような役柄であっても、その作品に合った色に染まることができる安田。コミカルな演技からシリアスな演技まで、自在に順応できる名俳優の活躍に今後も期待したい。

なお動画配信サービス・Huluでは、安田が出演する「ダメマネ！ −ダメなタレント、マネジメントします−」「ホタルノヒカリ」「下町ロケット」「重版出来！」「ザ・ファブル」「俺の話は長い」「俳優亀岡拓次」「愛しのアイリーン」などの作品を見放題配信中。

◆文＝林ゆう