ハレクラニを満喫するわたし

【連載】「いのちの電話」をかけた夜/onodela「アナーキーアイドル」#8 メンタルのどん底から駆け上がった話

2025.01.29 19:00
ハレクラニを満喫するわたし

2019年7月に、ステージ上でいじめを告発した動画がバズり、アイドルを引退した「小野寺ポプコ」。その後、早稲田大学を卒業、カリフォルニア大学バークレー校へ留学し、卒業生代表としてスピーチをしたことも話題だ。物議を醸したあの日から一体どんな未来に繋がっていったのか。現在、onodelaとして活動する彼女が自身の言葉で書き綴るエッセイ「アナーキーアイドル」。連載第8回は、メンタルのどん底まで落ちた話についてお届けします。

#8 メンタルのどん底から駆け上がった話

夜10時、わたしはスマートフォンを握りしめ、「いのちの電話」に初めて電話をかけてみた。受話器越しに聞こえてきたのは、「ただいま大変混み合っております。しばらく経ってからおかけ直してください」という無機質な自動音声だった。その瞬間、期待していた救いの言葉が得られなかった虚しさに、思わず苦笑してしまった。あまりにも予想外の展開に、「こんなに深刻に悩んでいる自分が滑稽だ」とすら思えたのだ。この出来事が、皮肉にもわたしの心を少しだけ軽くしてくれた。

その頃のわたしは、いくつもの困難に押しつぶされそうになっていた。3月には卒業旅行で沖縄を訪れ、「ハレクラニ」に3泊した。その晴れやかな時間の裏で、卒業式のわずか一週間前に「卒業できない」という衝撃的な事実が発覚したのだ。その原因は、必要な単位を誤って計算していたことにあった。科目Aの単位が2つ不足していた一方で、科目Bを必要以上に履修してしまった。後から確認すると、大学から届いていた注意喚起のメールを見落としていたことが判明した。その時期、元交際相手の浮気が発覚し、動揺している最中で見落としてしまったという痛恨のミスだった。

その後、大学院からのオファーが舞い込んできた。UCLAからは奨学金付きのオファー、コロンビア大学からは通常の合格通知、UCバークレーからは1年後の入学で、それまでに「プレプログラムを修了する」という条件付きの合格通知が届いた。しかし、この知らせは喜びだけでなく、新たな葛藤をもたらした。父親から「〇〇さんの息子はコロンビアに通っているが、UCバークレーの方が上だよね」と言われたことで、期待に応えなければならないという圧力を感じたのだ。

だから私はUCバークレーへの進学を決めた。それに留年が決まった今、1年後の大学院入学が逆にありがたかった。早速受講し始めたUCバークレーのプレプログラムでは、数学、統計、プログラミングという文系出身のわたしにとっては非常に挑戦的な内容だった。宿題の基準も厳しく、時差の影響で深夜や早朝に授業を受ける日々が続き、精神的に追い詰められた。一度、ネットワーク障害で宿題の提出が2分遅れたが、状況を説明した結果、幸い減点は免れた。結果、大したトラブルでもなかったのだが、当日はストレスの限界に達して過呼吸に陥るほどのパニックを起こし「いのちの電話」をかけた、というわけだ。

人生とは白黒つけ難いもの

このメンタルブレイクをきっかけに、自分を見つめ直した。失敗や過去の選択を後悔するのではなく、「今できること」に目を向けるよう意識を変えた。

その一環で地元の神社での手伝いを始めたのだ。巫女装束を身にまとい、掃除や御朱印の作成に励む時間は、瞑想のような安らぎをもたらしてくれた。ある日、神社の庭に落ちている葉っぱをかき集めているとき、ふと考えた。「『いまがつらい』と思っているかもしれないけれど、歩いてきた道や自分のセンシティブさを振り返ると、これからの長い人生もつらいことが多いだろう。でも、それはどうしようもないことなんだ」と。数十億年の歴史を持つ地球を思い浮かべた。極寒期や小惑星の衝突など、幾多の困難を経験してきた地球。それでも地球は1ミリも自分の傷を気にしていない。この姿に、自分も「ネガティブなことを極力ポジティブに変えようとするより、ネガティブなことがあってもありのままを保てることが人生の課題じゃないか」と気づかされたのだ。

挫折があったからこそ、気を取り直して大学に通学する日々を送った。わたしは自分を律するために、必要単位の科目以外にも興味のあった韓国語、フランス語、イタリア語、スペイン語を履修し、勉学に励んだ。そして2022年8月、無事に卒業を迎えることができた。

六本木で過ごした1年間は、さまざまなことに挑み、何かを賭け続けた日々だった。進学か就職かどちらに進むか最初は迷っていて、院進学と並行して頑張っていた就活は失敗に終わったけれど、学部を無事卒業し、大学院の進学はいい結果を収められた。軽井沢やスキー場、ディズニーランドといったリゾート地へ友人と何度も足を運び、かつて過ごした日々も、いまでは懐かしく、いい思い出として心に残っている。

すべてがうまくいく、いかないという単純な話ではなく、人生とは白黒つけ難いものだ。何度か山場とどん底を経験してきた中で、はっきりと分かったことがある——どちらも永遠には続かないということ。順風満帆の時は謙虚に、長い暗い夜は諦めずに生きていきたい、ということを学んだのは、なによりの宝物だった。

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