【漫画】「救えなかった親友へ、想いを伝えるために」演劇を通しての熱いメッセージ 高校演劇が舞台の青春漫画に「涙が止まらなかった」「冒頭からやられました」の声
コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回紹介するのは、田川とまたさんがX(旧Twitter)上に投稿した漫画「CHANGE THE WORLD」だ。10月2日時点で1万以上のいいねがつく反響が集まり、話題となっている。
今作は、マンガアプリ『マンガワン』で連載されている作品。続きは『マンガワン』で読むことができる。今回は作者の田川とまたさんに制作の背景を伺った。
演劇で世界を変えられるのか?胸が熱くなる青春ストーリー
“全国中学校総合文化祭 神奈川大会” 全国から中学生が集う文化芸術活動の祭典。
そこに主人公の陽太が所属する北星中学校演劇部が北海道代表として、ボクシングを題材とした演劇作品を上演する。
事のはじまりは、陽太と のりちゃんの出会い。2人は小学2年生の頃に学童で出会い、いつも1人で脚本を書いていた陽太に、社交的なのりちゃんが声をかけてくれたことがきっかけだった。
のりちゃんは陽太の作るお芝居の初めてのお客さんだったのだ。
のりちゃんは小さな頃からボクシングをしていた。
全国アンダージュニアボクシング大会 小学生の部 49kg級の決勝戦。陽太はのりちゃんの応援に行ったが、試合中にのりちゃんは鼻の骨を折り脳震盪を起こして緊急搬送された。
翌日、のりちゃんを励ましに行った陽太。落ち込んでいるだろうと思っていたが、そこには落ち込むどころか「陽太、俺さ、ボクシングで世界を獲るわ」と宣言するのりちゃんの姿が。思わず陽太は涙をしてしまう。
その翌年、新型コロナウィルスが流行し、のりちゃんが感染してしまった。何か月か学校を休んだのりちゃんだったが、ある日給食を食べ終わった後にのりちゃんが暴れた。机やら椅子やらをぶん投げたが、幸いにも怪我人はなく、落ち着いて陽太と2人になるのりちゃん。「弱いんだよ、俺は。だから負けたんだよ」というのりちゃんを必死に激励する陽太。
しかし、のりちゃんは涙を流し「弱いんだよ」と言葉を残し、そこからまもなく神奈川県に転校してしまった。
そんな出来事があり、陽太は『親友ののりちゃんを立ち直せることができなかった』『僕が発する言葉は、無力だった」と後悔し続けた。ただ、“演劇なら、彼と張り合えるはずだ”と信じ、のりちゃんの強さを証明するために、ボクシングを題材とした演劇作品を上演することにした。
神奈川県で行われる全国中学校総合文化祭に、のりちゃんを誘った。LINEに既読はついたが、返事はなく、来てくれることを信じて演じる。
果たして、のりちゃんは来てくれるのか。陽太の想いを伝えることはできるのか。
その後、高校に入学した陽太は演劇で世界を変えることはできるのか。ぜひ、その目で確かめてみてほしい。
実際に漫画を読んだ人達からは「最高すぎる、、、!!」「ちょっとこれ面白すぎるか」「とても刺さる」「これはすごい」「涙が止まらなかった」「冒頭からやられました」「一気に惹き込まれました」と、いった声があがっている。
今回は、作者・田川とまたさんに『CHANGE THE WORLD』の制作について話を伺った。
作者・田川とまたさんの創作背景とこだわり
――「CHANGE THE WORLD」を創作したきっかけや理由があればお教えください。
小さい頃から絵を描くのが好きで将来は漫画家になると決めていたのですが、大学を卒業するまでほとんど漫画を描かず、ひたすら演劇に没頭していました。演劇をはじめて観たのは中学3年生のときです。のちに母校となる高校の演劇部が上演したお芝居に感動し、高校入学後すぐ演劇部に入りました。意見を出し合いながら脚本を作り、毎日何時間も稽古をして、顧問の怒号が飛び交う中なんとか本番を乗り越え、審査講評でボコボコにされ悔し涙を流しました。演劇部の活動は体育会系ばりの大変さでしたが、仲間と互いをさらけ出しながら夢中でモノづくりに励んでいたあの時間は、もう2度と味わうことのできない、青春そのものでした。
「いつか高校演劇を題材にした漫画を描きたい」という気持ちは現役当時からありました。新人漫画家としてデビューして以来、売れないとわかっていながら演劇部モノの企画を歴代の担当さんに打診し続けてきました。
商業漫画家になりその夢は半ば諦めかけていたのですが、東大の演劇サークルで同じように青春を捧げ、自ら劇団を立ち上げた経験もある千代田さんからTwitterのDMでお声がけ頂いたことがきっかけとなり、今作の企画がスタートしました。十数年間温めていたものをこのような形で世に送り出すことができてとても感慨深いです。
――「CHANGE THE WORLD」を描くうえでこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントはありますか?
演劇部の活動を丁寧に紹介するような方向性だとどうしてもターゲットが狭まってしまうので、演劇に全く関心のない人でも楽しめる王道の青春マンガを目指しました。現実を生きる我々人間の生々しさを作品に反映させるこれまでのスタイルを見直し、二人の運命的な出会いだけでなく、キャラ造形、演出、台詞にいたるまで徹底して「マンガ」を作ることにこだわっています。
ただテーマ設定だけは他作品との差別化を図りました。高校演劇の世界では高校生の等身大の青春ドラマだけでなく、社会性を帯びた重厚な作品が数多く生まれています。主人公達がそういったお芝居に挑戦することを想定し、あえて彼らを社会とは切り離さず、現代人が抱えている諸問題(世界)に彼らが演劇(表現)で対抗するという構図になっています。
――今作は演劇を題材にされていますが、ストーリーを描く際に参考にされたものなどあったのでしょうか?
ネームを進める段階で演劇関連の書籍やマンガをたくさん読んできました。特にいまの高校演劇を知るために役立ったのが相田冬二さんの著書『舞台上の青春 高校演劇の世界』とTBSラジオ記者の澤田大樹さんが制作された『高校演劇ZINE』です。各大会で優秀な成績を収めた学校の演劇部員や顧問の先生にしっかりと取材されていて、数ページ読むだけで高校演劇に携わる人々の「熱」がひしひしと伝わってきます。『CHANGE THE WORLD』を通してこの世界のことをもっと深く知りたいと思ってくださった方におすすめの二冊です。
それからストーリー面では取材で得た知見が活きています。第1話、物語が総文祭から幕を開けるという大胆な構成になったのはとある高校演劇ウォッチャーの方から頂いたアイディアがきっかけですし、村岡の過去エピソードも「気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館」へ取材に伺った際偶然知った被災者の体験談を反映しています。
――今作で特にお気に入りのシーンやセリフなどがあれば理由と共にお教えください。
お気に入りのシーンはやっぱり第1話、陽太が『蒼鬼』を演じるシーンです。「大切な人のためにお芝居を演じる人がいて、大切な人がそのお芝居を観ている」という構図は演劇部だった頃から一度は漫画で描いてみたいと思っていました。もしかしたら私自身が大切な人のためにものづくりをするタイプだからより強く共鳴できるのかもしれません。
お気に入りの台詞は村岡の「みんなが愛したい人間でいたい」ですね。村岡は自分を俯瞰で捉えられる大人の一面と、みんなに好かれたがる子どもの一面を併せ持っています。自分は男性なので特に女性の描写にこだわりを持っているのですが、女性特有の掴みどころのなさ、軽やかさが感じられるいい台詞だなと思います。
――田川とまたさんの今後の展望や目標をお教えください。
単行本が出版された暁には、漫画賞の候補にノミネートするなど多くの人の目に留まるような機会があると嬉しいです。そのためにも誰もが知り合いに勧めたくなる、激面白マンガ目指して引き続き頑張ります。
あと映像化も目標の一つです。演劇の重要な構成要素である役者の声色や豊かな間、繊細な所作などは漫画の制約によってどうしても表現しきれません。作品の魅力を最大化するためにもメディアミックスの話が持ち上がることを期待しています。「漫画は読まないけどアニメは観る派」の人たちにも届けたいですね。
――最後に作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。
めちゃくちゃ気合い入れて描いた自信作なので、まずは騙されたと思って3話まで読んでみてください!何度も読み返したい方は単行本の方も何卒よろしくお願いします!
そしてこの作品を応援して頂きたいのはもちろんなのですが、ぜひ実際の演劇も観に行ってみてください。観劇料も数千円と、特に若い方にはハードルが高いかと思いますが、まずは一度劇場へ足を運んでみてほしいです。あなたの人生を変える出会いがあるかもしれません。私がそうだったように。
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