40歳で実家暮らしの“子供部屋おばさん”

【漫画】40歳、実家暮らしの“子供部屋おばさん”が自立を迫られる…現実を突きつけられた姿に「キツくてよい」「すごくわかる!!」

2024.05.27 09:00
40歳で実家暮らしの“子供部屋おばさん”

コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、めちゃコミックで配信中の木村イマさんが描く『よそとせ自立』をピックアップ。

2024年4月26日にX(旧Twitter)で本作を投稿したところ、1.8万件を超える「いいね」と共に、多くの反響コメントが寄せられた。本記事では、木村イマさんにインタビューを行い、創作のきっかけや漫画を描く際のこだわりについて語ってもらった。

実家暮らしで世間知らず、恋愛経験0の40歳女性が自立を目指す

主人公の名前は“涼風まのん”。16歳で鮮烈なデビューを飾った天才漫画家だ。現在は、実家暮らしの40歳。早すぎる漫画家人生の始まりで、青春の全てを漫画に捧げた結果、彼女は現実世界から遠ざかる生活になってしまっていた。これまで、ご飯や洗濯など身の回りのことは育ての親でもあった祖母がすべてお世話してくれていた。しかし、状況が一変する。祖母が病気により亡くなってしまったのだ。

否が応でも自立しなければいけない状況になったまのんは、一念発起して東京で一人暮らしを始めた。天才漫画家として十分な収入はあったため、環境はすぐに整った。しかし、それからまのんは自分の状況を痛感することになる。伸びっぱなしだった髪と白髪が気になって訪れたおしゃれな美容室では、まじまじと鏡を見て想像以上に自分が老けていることに驚愕した。そして、担当してくれた男性スタッフから「お子さんおいくつですか?」と質問されて、“自分は子供がいてもおかしくない年齢”という現実を突きつけられてしまった。男性スタッフの優しい接客にときめき、大人の女性になるための“恋の予感”すら感じ始めていたまのんは、思わず恥ずかしい気持ちになって足早に美容室を後にするのだった。

改めて鏡を前にして自分の顔を見つめると、40歳という年齢を実感する。すぐには自分の世間的な立場を受け入れられず、思わず泣き崩れてしまったまのんはこれからどのように“自立”への道を進んでいくのだろうか――。

X(旧Twitter)の投稿には、「つらいなあ…」「すごくわかる!!」といった共感をはじめ、「頑張れ」「泣くな」など、主人公・まのんを応援する声が寄せられた。

作者・木村イマさん「『明るさ』をかなり心掛けて描こうと」

――『よそとせ自立』(X投稿時のタイトル『40歳、子供おばさんの話』)を創作したきっかけや理由などをお教えください。

はい、まずご挨拶一言挟ませてください。

こんにちは~~~!!!ご機嫌いかがですか?木村イマです!Xに投稿した漫画を見て気になってくれた方は是非一見していってね!!!

さて、質問にお答えします、『よそとせ自立』はタイトル通り、よそとせ=40歳 自立 という意味なのですが私自身が長年、親から自立している自信がなく、というか出来ていないと思っていてこのお話を描こうと思いました。当方40歳です。プライベートな話にはなりますが、私も昨年一人暮らしをした時期がありました。一人暮らしをする半年以上前から漫画を描くことが苦しくなっていっていて、原因は二つくらいハッキリしている中で、精神的にも体調的にも生活が行き詰ってゆき、この問題を切り抜けるために漫画を描こうと思いました。

――本作を描く上で、特に心がけているところ、大切にしていることなどをお教えください。

1つ目の質問でお答えした事と繋がるのですが、とにかく調子が悪く、これまでの流れを断ち切らないとなりませんでした。前作は『シュガーレス・シュガー』という結婚した女性のやりたい事、平たくいえば夢について描いていましたが、主人公の性格、特に「強い流れの中にいると折れてしまう意志」を慎重に描いていたところ、自分自身もかなり憂鬱になりました。現実世界で折れてしまいそうでした。そのため、『よそとせ自立』では「明るさ」をかなり心掛けて描こうとネタ出しの時点から決めていました。ただその「明るさ」を上手く、いえ、全く描けずに、1話を描いた後、8ヶ月ほどお話を止めてしまいました。

――主人公のまのんは、同年代の大人と比べて一般常識や経験などが不足している部分が描かれていますが、自分が自立できていないことを周囲から“祖母のせい”と言われると祖母のことをかばうなど優しい一面も垣間見えます。木村さんが感じる、まのんの好きなところをお教えいただけますでしょうか。

まのんの好きなところは僻まないところ。まのんが卑屈だったらこの漫画はもっと地獄です。それこそ、この状況を乗り越えることは出来ないと思う。状況の悪い時に卑屈になってしまうのはよくある事ですが、まのんはそういうところが少ないと思います。

――X(旧Twitter)の投稿には、多数の“いいね”や「続きが気になる」というコメント、共感の声などが寄せられていました。今回の反響について感想をお聞かせください。

私は続きを楽しみにしてくれる声が大好きで、というのは(自分と同じ読み方だ~)って思えるからです。これまで描いてきた読み切り以外のお話は全て、続きを意識して描いています。だって連載なんですよ…!1話で納得されてどうするのでしょう?続きこそ気になってもらえねば。そして共感については、「子どもおばさん」なんてワードを入れているのに共感してくれて有り難う本当好き。と思っています。こういう蔑称が入っているにも関わらず、イイネ!や私のことかも、とか言える正直な貴方のために描いています。私のために描いている事と貴方のために描いている事とは大した違いがないんです。

――投稿されている作品は第2話までとなっていましたが、本作のその後の見どころや注目してほしいポイントなどをお聞かせください。

続きを読み進めるために物語はあるのです。勿論、自己判断で見切りをつけてくださって結構なのですが、読み方が違うのだなぁと思います。私は多くの人に読んで欲しいけれど、みんなに好評を受けなくて構わないと思っています。ただどこかザワザワした読み心地があるのだったら読み進めてほしい。展開はかなり早いと思います。読み応えもあります。レビューや反応を読むと無料の1話分ですでに脱落宣言をしてる方もいましたがその脱落の原因はもしかしてこの先の展開への伏線かも知れない?そういう風に自分の感覚を疑いながら読み切ってみて初めて受け取る新しい感覚があります。そこにご注目あれ~✩

――最後に、読者やファンの方へメッセージをお願いします。

インタビューを読んでくださり有難うございました。私自身、最近変わったことがあります。新しい感覚です。インタビューを受けることが自分の創作に良いのか悪いのかつい最近までわからなかった。80%は受けたくない20%は読んでもらえる可能性上げるなら…という20%の部分すら受けたいとは程遠いネガティブなものでした。

それが変わったきっかけのお話を少しさせてください。パレスチナ問題について積極的に発信している知人の作家が私には数名おります。私は彼や彼女が絵を描いていなくてもこの問題には関心は持っているだろうし心を痛めていたでしょうが絵を描いていたから興味を持って友人になっていました。しかし、彼や彼女が全てを絵によって表現する訳ではないということに共鳴のような感覚を持ち、それを同じ苦境を通じてリアルに体感しました。「作品はリアルに生きている私たちが話して関わっていくためのきっかけになるんだ」と思いました。「作品を説明することは、作品として完結できていないからだ」とか、もう本当に簡単に言ったら「格好悪い」とか、あのさぁ 作品を作りたいって思った時点で言いたいことあるんじゃん!?今更カッコつけてもダメだよ。って思って。すごく腑に落ちた。格好良いって私大好きだけど。ペラいのはやだな。

勿論、読んで作品を受け取ってくれるそれだけでもいいけど、こうして今インタビューを読んでくれたり、漫画を読んだ後にレビューを書いてみたり、人と話題にしたり、私に手紙を送ってくれるのもそうだけど、もう一つ行動を起こしてくれた方とは漫画で描いたよりもう少し込み入ったお話をして、お互いの生活をもう少し豊かにしたいなって思った。生きてる楽しみを見出すために。

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