撮影/加藤アラタ

「性自認は女性、好きになる相手は女性」天使ニアが年間売上2億円の“女の子ホスト”になるまで

2024.05.11 06:03
提供:ENTAME next

歌舞伎町の夜の世界で異彩を放つホストがいる。並み居る男性ホストを押しのけ、年間2億円を売り上げる女性ホスト、天使ニア(あまつかにあ)だ。今年2月からは新店「Blue Rose」でホストクラブ初の女性代表に就任した。性自認は女性、好きになる相手は女性という彼女にホストになったきっかけから、男性社会で働く現状について話を聞いた。(前後編の前編)

――改めてお聞きしたいのですが、天使さんの性自認は女性で、好きになるのも女性なんですよね。

そうですね。女の子が好きです。中学生のときに、初めて好きだなと思ったのが女の子で。そこからずっと女の子が好きですね。好きになれる男の子に会ったことがないんですよ。やっぱり女の子の方がかわいいし、いい匂いだし。惹かれるのは女の子ですね。

――キャリアのスタートはコンカフェとお聞きしました。

接客業は、コンカフェが初めてですね。大学生のときでしたけど、当時男装のコンカフェが流行っていたんですよ。始めてみたらすごく楽しかったんですけど、コンカフェって個人の売り上げが出ないんですよね。毎月、誰がどれくらい売っているか。自分は店長だったのでみんなの売り上げも全部知っていたけど、表には出せないし。このままコンカフェやっていても、なんか目標がないなと思っていて。そこで、いつかホストをやりたいという気持ちが出てきた感じですね。

――ホストの方が目標を持てそう、というイメージですか。

売り上げを競っているのがいいなって。でも、ホストになった3カ月くらいは、想像よりつらかったですね(笑)。1カ月分頑張った売り上げが、次の月はゼロになるじゃないですか。その瞬間に、うわー、なんか喪失感ヤバいみたいな。そこからまた上げなくちゃいけないんだって。

ホストのモチベーションなんて、売り上げを上げることでしか上がらないですから。そのために、とりあえず動かなきゃって感じでしたね。さすがにもう今は全く思わないですよ。ゼロになってつらいとか。今は楽しいが圧倒的に大きいです。

――ホストになってよかったなと思うことはありますか。

今はもう全部よかったなと思っています。人生にちゃんと目標がある日々を送れているから楽しいです。売り上げを競うのも楽しいですね。

――競争するのが楽しいってすごいですね。

でも、誰かと競うというよりも今はもう自分とずっと戦っています。自分が勝手に立てた目標と戦ってる。今年は年間3億円売るって決めているので、それに向けて頑張っているのがとにかく楽しいだけなんですけどね。――コンカフェからホストの世界へ。当時から女の子でホストというのは、珍しい存在だったかと思います。始めるのに不安はありませんでしたか。

全くなかったですね。新しいことを始めるときに怖いなと思うことがないんですよ。なんか楽しみだな、わくわく!という気持ちでした。面接を受けるときはちょっと不安でしたけど。初出勤のときにはもう全然。

――前日、眠れないとかも?

なかったですね。でも、当時働くことになったのが朝営業のホストクラブだったので、朝始発で行かなくちゃいけなかったんです。そういう意味で、眠れなかったですね(笑)。2時間おきくらいに起きて、まだ大丈夫って。でも、そのくらいかな。入って気付きましたけど、メンタルが強いんですよね。

――メンタルの強さは小さいころから変わらない部分ですか。

どうだろう。でも、僕が女なことでこれまでも人より多くいろんなことがあって。麻痺しているわけじゃないけど、もう気にしないようにしているというか。気にならないんですよね。SNSとか、事実と違うことを書かれることもあるし、ホストクラブで女が働いていることに対するアンチみたいなものもある。でも、その気持ちも分かるんですよ。それは、本当にごめんねって。気持ち分かるよ、嫌だよね、ごめんねって思うけど、それを気にしていてもどうしようもないから。

――落ち込むこともあまりない感じですか。

体調悪くて休んじゃったときくらいですね。お店に出られなくて休んだときは、死ぬほどメンタルが荒れ狂っちゃう。自分のお客さま、姫たちはきっと休まず働いているのになんで自分が休んでいるんだろうって。そのときが一番メンタルをやられますね。

――先ほど、ホストになって毎日が楽しいとおっしゃっていましたが、逆にホストになってちょっと後悔していることはありますか。

いや、全くないですね。本当に毎日ずっと楽しいんですよ。楽しすぎて、辞めどきが分からなくて困ってる(笑)。今年2月に新店「Blue Rose」の代表になったのもあって、当分辞められないなと。楽しいと思っているうちに辞めようと思っていたんですけどね。でも、続けるからこそは結果は出したいし、頑張ろうと思っています。

――21年9月にホストを始め、2年半ほどで年間2億円プレイヤー&新店の代表に。今の立ち位置は当時、想像していたものでしたか。

いや、自分は人の上に立つのが本当に向いてない人間なんで、よく代表にしたなとずっと思っています。代表になりたいと思ったこともなかったので、本当にびっくり。でも、ホストとして売れるな、とは思っていました。絶対に自分は売れると分かっていたけど、代表にまでなるとは想像していなかったですね。――売れると思っていた理由は?

よく分からない自信(笑)。接客業なら売れるだろうって。実は、僕昔はアイドルになりたかった時期もあったんです。中学生のころはAKB48が好きで、王道アイドルになりたかったんですね。でも、歌って踊るアイドルの才能は全くなかったから。でも話すのは好きだし、接客業ならいけるだろうみたいな気持ちがあったのかもしれないですね。

――その結果、実際にも売れたわけですけどご自身の強みはどこにあると思っていらっしゃいますか。

その人が今、何を考えているのかめっちゃ分かるんですよね! それは、接客業をやっているなかで身についたスキルなのかなと思うんですけど、別にメンタリスト的なことではないですけど、話しているときに本当はこう思っているんだろうなとか。そういうことに気付けるのって多分すごく大きくて。言われたことを全部真に受けていたらうまくいかないこともたくさんあるので。それが判断できるのは強みなのかなと。

――それを後輩に教えたりすることもあるのでしょうか。

これって、具体的に説明するのが難しいんですよね。感覚って感じなので、直接教えることはあんまりないですね。でも、姫のLINEにどう返信したらいいですか?とか、聞かれたことにはめっちゃ答えるし相談にのります。やっぱり男の子と女の子は、考え方がマジで全然違うから。うちの男の子たちがそのまま返信すると「何言ってるんだ、こいつ」って思うこともたくさんあって(笑)。それは、僕が女性だからというのもあると思いますね。逆に男の子の考えていることは全然分からないので、それは男ばかりのホストクラブで代表をやるようになってちょっと困っているところでもあります。

コンカフェの店長をやっていた当時も、男装カフェで全員女の子だったから。今は逆に全員男の子。考えていることが1ミリも分からない(笑)。マジで違う生き物だと思いました。

――でも、そんな男性社会のホスト業界で代表を任されるようにもなっているというのは、うまく対応できているということでは?

うまくやっていけたのは、周りがみんないい人だったからですね。「女です」と言いながら突然店に入ってきたのに、分け隔てなく接してくれて。みんな優しくて明るくていい人たちだったから、うまくいったのかなと思います。ほかのお店を選んでいたら、こんなにうまくいかなかったかもしれない。最初に冬月グループを選んでよかったなと心から思っています。

(取材・文/吉田光枝)

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