映画『ノルマル17歳。― わたしたちはADHD ―』W主演の西川茉莉(左)と鈴木心緒(右)(C)Deview

映画『ノルマル17歳。― わたしたちはADHD ―』でADHDの女子高生役にオーディションで抜擢された新人・鈴木心緒&西川茉莉に注目「ありのままの自分を隠して生きている人たちに届いてほしい」

2024.04.05 08:00
提供:Deview

 世界中の若者を中心に増えている発達障害のひとつ「ADHD (注意欠如・多動症)」をテーマにした劇映画『ノルマル17歳。― わたしたちはADHD ―』が4月5日より東京・アップリンク吉祥寺(ほか全国順次)にて公開される。本作で全国オーディションにより確かな演技力を見出され、「普通」の世界からはみ出してしまうADHDの女子高生を熱演したW主演の新人・鈴木心緒(すずき・こころ)と西川茉莉(にしかわ・まり)にインタビュー。本作のオーディションについて、ギャルの朱里(じゅり・鈴木)と進学校に通う真面目な絃(いと・西川)の2人の主人公の役作りについて、撮影のエピソードと作品テーマについて、そして今後の俳優としての目標について話を聞いた。

■映画『ノルマル17歳。― わたしたちはADHD ―』W主演 鈴木心緒&西川茉莉インタビュー

――まずは、2021年に募集が行われた本作のオーディションについて、応募のきっかけから、審査について、抜擢されたときの感想などについてお伺いします。

【鈴木心緒】「私はずっと女優になりたいと思っていたので、ネットでオーディション情報を見つけて、少しでも自分の夢に近づくチャンスになったらいいなっていう気持ちで応募しました。ちょうど女子高生だったので、自分とリンクしているところもあったので、挑戦したいなと思いました」

――オーディションで印象に残っていることは?

【鈴木心緒】「リモート面談と動画審査を経て、実際に対面で演技審査を受けた時、周りの人がみんなすごかったので、“絶対ダメだな”って思って、メロンパンを食べながら帰ったりしました。そうしたら3限の授業が終わった後に、“朱里役のほうで合格です”というメールが来て、本当に嬉しくて、次の授業に遅刻しました(笑)」

――朱里と絃は性格もビジュアルのイメージも対照的なキャラクターでしたが。

【鈴木心緒】「ギャル役では受からないだろうなと思っていたので、何よりも驚きました。当時は髪色も黒かったし、私は真面目なほうが演じやすかったので、受かるなら絃役かなと勝手に思っていたんです。でも新しい自分に出会えてとても楽しかったです」

――西川さんが応募したきっかけは?

【西川茉莉】「高校1年生の時に、表現者になりたいと思ったんですが挑戦をしたことがなくて。私、愛媛の出身で、隣の香川県で制作された短編映画(『父の声』)に出たことをきっかけに、もっともっとお芝居をやりたいって思って探しているうちにこの募集を見つけたんです。最初に募集記事を見た時にすごく惹かれて、これは絶対に受けなきゃいけないなって思いました」

――それは高校生が主人公であることや、作品のテーマに興味があったんですか?

【西川茉莉】「ADHDってなかなか映画が取り扱っていない題材ですし、私の身近にもADHDではないんですけど、精神疾患を持った方がいて、身近に接した経験があるからこそできることがあるんじゃないかということで、ピンときたんです」

――オーディションを受けている間のことで印象に残っていることは?

【西川茉莉】「それまでオーディションで書類審査を通過したことがなかったので、書類で合格した時点ですごく嬉しかったのを覚えています。動画審査用に、お父さん役とお母さん役のセリフを自分で録音して、それを流しながら絃ちゃんを演じたんですが、それを家族に見せた時に“こんなにお芝居ができると思わなかった”って、すごく褒めてもらえたんです。その時から絶対に絃ちゃんをやりたいと思っていました。朱里ちゃん役も練習はしたんですが、ちょっと怒り慣れてなくて、あまり上手じゃなかったので(苦笑)」

――対面での実技審査はいかがでしたか?

【西川茉莉】「実技審査の時は本当に不安だったんですが、家族が褒めてくれたことを支えに、私が絶対に絃ちゃんになるぞっていう気持ちでした。家族全員で結果を楽しみにしていたので、結果が届いたときは勝手に涙が出てきて震えが止まらなくて…。メールを何回もお父さんに見せて“合格って書いてるよね!?”って何度も確認しました(笑)」

――それぞれが演じた役についてはどのように考えましたか?

【鈴木心緒】「最初自分は絃ちゃんのタイプかなと思っていたんですが、台本を読んでいくうちに朱里ちゃんと私は結構似てるところがたくさんあったんです。“普通とは何か”というのが映画のテーマの一つだと思うんですが、高校時代の私は“普通にならないといけない”と思い込んでいて。集団行動がちょっと苦手なのに、一人でいると変な目で見られるのが嫌で、馴染むためにみんなに合わせて、それが結構辛かったり…。表現の仕方は朱里ちゃんとは違うけど、普通に対する違和感というところで、気持ちの上で共通点があったので演じやすかったです」

――これまで抱えていた想いを、朱里のセリフに乗せて表現した感じでしょうか?

【鈴木心緒】「彼女は爆発的にものを言うタイプなので、今までくすぶっていた想いをセリフに乗せて、自分のメッセージとしても伝えられたかなって思います」

――対する絃は内に秘めるタイプで、演じるのが難しかったのではないですか?

【西川茉莉】「このオーディションを見つけたのは高校1年の終わりだったんですが、その頃の友人関係って中学の時とは違って、自分の気持ちを友達に言うことがなかなか難しいなと感じていました。絃ちゃんみたいに、周りのみんなが笑うからとりあえず笑っとけばいいか、というふうに過ごしていたら苦しくて、3学期の頃には学校に行けなくなってしまったんです。そんな経験があってからのオーディション・役作り・撮影だったので、想いを言えない自分にリンクしましたし、気持ちを隠してしまうところにも共感しました」

――そんな経験が役に投影されていたとは。

【西川茉莉】「でも、絃ちゃんが朱里ちゃんと出会って刺激されて変わったのと同じように、私も映画と出会って、朱里ちゃん役の心緒ちゃんと一緒にお芝居をしたことで、自分の気持ちをもっと出してもいいよなっていうことを改めて認識して、成長できたんです。それまで自分から友だちを遊びに誘うこともできなかったんですけど、ちょっとやってみようかなって思うぐらいに変われたんです」

――二人は互いに影響しあう役柄を演じましたが、実際に演じていてお互いからどんなことを感じましたか?

【鈴木心緒】「絃ちゃんのセリフそのものももちろん素敵なんですけど、茉莉ちゃんの話し方が、柔らかいけどちゃんと言葉の中に芯がある感じですごく素敵なんですよ。一緒に演技をしていて、私もこんなふうにもっと素直に言葉を発したいなってめちゃめちゃ思いました。顔合わせや本読みや練習はリモートで、初めて会ったのは撮影が始まった時くらいだったんですけど、“前から会ってたかな”と思うぐらい一緒にいて心地よくて。ベンチにポンと座っているシーンでも“何回も一緒にここに来たことあるよね?”って思うくらいでした」

【西川茉莉】「オンラインで顔合わせの時、カメラがオンになった瞬間、綺麗なお姉さん過ぎて“やばい!”ってなりました(笑)。私なんか隣に並んで大丈夫かなって思うぐらい本当にドキドキしていたんですが、実際に会ったらめちゃくちゃ優しくて、本当に色んな話をしてくれました。でもお芝居の時は切り替えがすごかったです」

――演技の面ではどんなことを感じましたか?

【西川茉莉】「ちゃんと朱里ちゃん像が見えていて、こう演じたいという想いがあるのが印象深かったです。歩き方から鞄の持ち方まで朱里っぽくて、そういうところまで気を遣っていて自然というか、ずっと見ていたいって思うくらいでした」

――鈴木さんはご自身はギャルではなかったとおっしゃっていましたが、ギャルの佇まいは研究されたんですか?

【鈴木心緒】「高校生の時のクラスでギャルだった子って、どんな感じだったっけなぁって思いだしたり、YouTubeで動画を見たり。撮影の頃は大学に入っていたんですけど、露出度の高い子を注目して見てました(笑)」

――話し声のトーンもギャル役にハマっていたと思うんですが、激高して感情を吐き出す時との温度差が衝撃的でした。

【鈴木心緒】「爆発させるところは爆発させるぞ!っという勢いでしゃべっていたので、やっぱりエネルギーを使いましたね。お姉さんとケンカするシーンでは何回も何回も泣いたりしたので」

――逆に絃はあまり大きく感情を表に出さないので難しい部分もあったかと思うんですが。

【西川茉莉】「練習の段階で、気持ちを内に秘めつつも出さなきゃと考え過ぎてしまって、監督から“今、出そう出そうとし過ぎてるんじゃないの?”って指摘されたのを覚えています。“出さないようにしている不安定さが大事だから”と言っていただけたので、あんまり考え過ぎず、お母さん役の真鍋かをりさんや朱里ちゃんとのお芝居のなかで自然に出るものを大事にしようと思いました」

――朱里の住む街の商店街の方々と話しながら、絃が影響されて変化していく繊細な演技も印象深かったです。

【西川茉莉】「八百屋さんのシーンはすごく安心感がありました。八百屋のおばちゃんや、お魚屋さん、お洋服屋さんを演じた役者さんのお芝居がとても自然で、気づいたら飲み込まれていて、そんな雰囲気が出せたのかなって思います」

◆観終わった後、爽やかなあったかい気持ちになって、また明日頑張ろうって思えるような映画だと思っています

――本作で注目して見てほしいシーンを挙げるとしたらどこでしょう?

【鈴木心緒】「終盤の公園のシーンですね。朱里ちゃんが絃ちゃんに本心を吐露するんですが、そこまでは引っ張っていく立場だった朱里ちゃんと自分の想いを隠して来た絃ちゃんの立場が逆になるところが記憶に残っているので、そこはぜひ注目していただきたいなと思います。そのシーンはかなり長めに回して、本当にこの二人の流れで作り出した世界という感じでした。朱里は爆発的に感情を表現するタイプなんですが、そのシーンでは本当に辛くて心の底からどうしたらいいか分からないっていう気持ちが溢れて、それを絃ちゃんが支えてくれる、とても素敵なシーンになったと思います」

【西川茉莉】「見てほしいのは、友達のために何かできることないかなって、絃が初めて自分から動き出すシーンです。周りの人たちの温かい言葉を受けながら、朱里ちゃんのために何かを探そうとする心境の変化や、以前一緒に行った神社で朱里ちゃんのことを想うところは、私的に気持ちを込めて大事にしたシーンなので、注目していただきたいですね」

――この作品の撮影に入るにあたって、ADHDについて学んだと思うのですが、その中で感じたこと、この作品に触れて変わった部分はありますか?

【鈴木心緒】「ADHDって目に見えるものじゃなくて、“普通の人”と同じに映るからこそ“普通ってなんだろう?”ということに悩み、心に傷を抱えてしまう人が多くいるんだということを改めて知りました。自分も“普通であるべき”とか“周りに合わせないといけない”という思いに捉われていたことがあるので、人と違うということをもっと大切に、尊重していけたらいいなって感じました」

――“俳優を目指す”ということ自体、周りからはちょっと普通じゃないと見られることも多いですよね。

【鈴木心緒】「高校生の時から俳優に憧れていましたが、それを言うことによって周りからどんな目で見られるかわからないからずっと隠していたんです。でも、大学に入って仲良くしている友達に、実は芸能活動をしているんだよねっていう話をしたら、周りの子たちも知っていて、私が言わないから“隠したいのかなと思って言ってなかっただけで、本当は私たち応援してるよ”って言ってもらえたんです。そこからもっと自分に自信を持って、ありのままに生きていきたいなって思いました」

――西川さんはいかがですか。

【西川茉莉】「先ほど身近に精神的な疾患を抱えている方がいると言ったんですが、私は小さい頃からその人の傍にいたので、色眼鏡を通さずにその人自身として見ていました。だからADHDだとしても、人自身を見て接するのが大事なんだと思います。ADHDと一言で括っても、朱里ちゃんみたいなタイプも絃ちゃんみたいなタイプもいるし、関わっているうちにその人自身の特性なんだと思って接していくことが大事かなって思いました。
あと、私は父が“しっかりした仕事に就きなさい。それが普通でしょ”というタイプだったんですが、それは“お父さんの普通”であって、世の中にはいろんな人がいて、いろんな価値観があると思うので、臨機応変に柔軟に、“普通”って言われることに立ち向かうというか、選ぶことが出来るようになればいいなと思うようになりました」

――この映画をどんな方に観てほしいか、どんなことを感じてほしいかについてメッセージをいただけますか? 

【鈴木心緒】「ADHDを取り扱った作品ですが、必ずしもADHDに関わる方々だけに向けた作品ではないと思うんです。私自身も普通が苦手で、人に合わせなきゃいけないことに悩んできたので、そんなふうに、ありのままの自分を隠して生きている人たちのためにもある映画なのかなと思います。そんな悩みを抱えている人にも届けばいいなと思っています」

【西川茉莉】「ADHDの当事者の方だけではなく、周りにいる人や、親の世代の方、ちょっと生きづらさについて悩みを持っている方など、本当にいろんな人に見ていただきたいと思います。観終わった後、爽やかなあったかい気持ちになって、また明日頑張ろうって思えるような映画だと思っています」

――この作品が公開されたら俳優として注目されると思うんですが、今後の目標を教えていただけますか?

【鈴木心緒】「私は女優として活動していくのが目標です。ただヒロインとか主役とかを目指しているのではなくて、3番手、4番手、5番手、6番手とか、むしろ主役を支える側で、演技力で勝負をしていきたいと思っています。個性派な俳優になれるように頑張ります」

【西川茉莉】私も芝居が光る個性派女優になるというのが目標です。親からも“可愛さでは勝負していけないから、芝居でいきなさい”って言われるんですよ(笑)。私もそうだなって思います。今回の映画で選んでいただいたように、きっとハマる役があるはずですし、西川茉莉をキャスティングしてよかったなって関係者の方にも、作品を観ていただいた方にも思っていただけるような、唯一の女優さんになりたいです。大学に進学して、愛媛から上京してきたので、もっと幅広く挑戦したいと思っています」

■北 宗羽介監督が語る俳優・鈴木心緒と西川茉莉

 二人とも芝居勘が光っていました。街中のロケでは音の問題でアフレコ処理をしないといけなかったんですが、自分の芝居を忠実に再現できる俳優さんってなかなかいないんですよ。でもこれが2人ともほぼ完璧にできてたんですよね。そういう資質はオーディションの時に直感的に分かったので、今回抜擢しました。
 心緒ちゃんの場合は、朱里役のすごく感情の起伏が激しい演技を自然にできていたところが特に良かったですね。いかにも芝居するぞという感じではない自然さで、実際に精神的な問題を持っている方が激高する感じを表現できていたのが素晴らしかったと思います。
 茉莉ちゃんは、セリフよりも表情や目線など、本当に繊細な動きが要求される役だったんですが、そこを上手く捉えて表現してくれたかなと思います。セリフの言い方にしても、絃の意志が自然にセリフに込められていました。
 二人とも自然な演技が映像向きの女優だなと感じましたし、今後映画やドラマで活躍して行くのが楽しみです。

■プロフィール
●鈴木心緒(すずき・こころ)
2004年3月19日生まれ、神奈川県出身
フジテレビ『オールナイトフジコ』にフジコーズのメンバーとして出演中

●西川茉莉(にしかわ・まり)
2005年6月7日生まれ、愛媛県松山市出身
短編映画『父の声』(2022)主演

■映画 『ノルマル17歳。 ― わたしたちはADHD ―』

【あらすじ】
進学校に通う絃(いと/西川茉莉)はまじめな子であったが、発達障害のひとつであるADHDと診断されており、ひどい物忘れで生活や学業に支障を来していた。
重要なテストの日、絃は目覚まし時計をかけ忘れて寝坊してしまう。
ショックのあまり絃は登校せず、いつもは行かない道をさまよって見知らぬ公園に来てしまう。
そこで突然、茶髪で派手なメイクのギャル女子高生・朱里(じゅり/鈴木心緒)に声をかけられる。
「何してんの?」「あ…今日は寝坊して」
「あたしなんかほとんど寝坊か欠席。学校行ったけど落ち着かなくて帰ってきた。あたし発達障害あってさ。ADHDっての。知ってる?」
いきなりADHDだと言う朱里に驚く絃。

朱里は強引に絃を街へと遊びに誘う。
古い商店街や裏山が見渡せる公園、野良猫たち。 普段は家と学校の往復しかしない絃にとって、それは新鮮な世界であった。

朱里と絃は友達となり、後日も遊びに行くが、絃の母(眞鍋かをり)に見つかってしまう。
絃の母は朱里の派手な身なりに不快感を持ち、朱里との交際を禁止してしまう。

一方で朱里は、自分の物忘れで姉(花岡昊芽)との喧嘩が絶えず、父(福澤朗)や母(今西ひろこ)からも厳しく言われて家庭内で孤立していた。
やがて朱里は絃とのメッセージのやり取りもやめ、次第に部屋に引きこもっていく。

朱里と絃との距離は次第に離れ、再び元の日常に戻りつつあったが…

【出演】鈴木心緒、西川茉莉、眞鍋かをり、福澤 朗、村野武範 、小池首領、今西ひろこ、花岡昊芽 ほか
【スタッフ】
監督:北 宗羽介脚本:神田 凜、北 宗羽介
音楽:西田衣見撮影:ヤギシタヨシカツ(J.S.C.)
エグゼクティブ・プロデューサー:下原寛史(トラストクリエイティブプロモーション
プロデューサー:北 宗羽介、近貞 博、斎藤直人
製作:八艶、トラストフィールディング    配給:アルケミーブラザース、八艶
後援:日本発達障害ネットワーク(JDDnet)、NPO法人えじそんくらぶ 他 
文化庁「ARTS for the future!2」補助対象事業
(C)2023 八艶・トラストフィールディング /80分/カラー/5.1ch

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