M-1ファイナリスト・真空ジェシカ川北が語るバラエティでの苦戦「ふざけてないと意味がない」
2021年の『M-1グランプリ』で決勝進出し、その名を一気に全国区へと知らしめた真空ジェシカ。慶應義塾大学出身の川北茂澄と青山大学出身ガクの高学歴コンビとしても知られ、朝の情報バラエティ番組『ラヴィット!』(TBS系)にもゲストで呼ばれるようになり、ある日の放送では、川北がニッチェの江上敬子の顔と髪の毛を“逆”にした“逆ニッチェ”というギャグを炸裂し爪痕を残した。今回、ボケ担当の川北にM-1までの道のりや、バラエティ番組での“苦戦”について話を聞いた。
──普通だったらM-1本番までにできる限りライブに出演してネタを仕上げるところ、真空ジェシカは各ライブでド下ネタをやっていたそうですが。
川北 僕らが出るような地下ライブはお笑い好きなお客さんが来るので、M-1でやるようなネタは見飽きているんですよ。だから、ふざけて下ネタをやっていたんですけど、何回もやっていたら仕上がって。最終的にはそのネタが決勝でやるネタの候補に入ってきたんです。危ないところでした。
──ネタを仕上げるより、新鮮な状態でやりたいという気持ちもあるんですか?
川北 それもあります。やってる本人たちが飽きてしまうと、観ているほうも面白く感じないと思いますから。
──そのM-1では、「屈折のエリート」というキャッチフレーズもあって、知性を感じさせるネタで勝負するコンビだと誤解されました。
川北 それが本当に嫌で、「屈折のエリート」というキャッチフレーズも「変えられないですか?」と聞いたんです。僕はマニアックなことが好きなんですけど、「エリート」がつくと知識をひけらかしているように思われてしまうじゃないですか。でも、制作側が「これで行かせてください」と言うので、渋々納得して。ネタが終わった後、「だから言ったのに」と思いました。あのネタに関していえば、「二進法」や「酸性雨」というワードに引きずられて「知的なネタ」と捉えられてしまったけど、本当に好きなのは誰も知らないような芸人の名前を出すネタなんです。
──『ラヴィット!』のゲスト出演で知的イメージが崩れて、結果的によかったんじゃないですか?
川北 イメージが変わった人もいたみたいですね。「ネタはしっかりしているのに、平場はしっかりしてないからビックリした」と言われましたから。M-1はM-1用のネタをやっただけで、普段の劇場ではめちゃくちゃふざけているんです。M-1のネタが名刺になってないという(笑)。
──『ラヴィット!』がふざけている番組なのに、「ふざけるな」と怒られるのもすごい話で。
川北 それにしてもスベッたということだと思います。世間の声は厳しいです。
──スベッたことは反省しているんですよね。
川北 もちろん反省してます。次に活かしこそしないですけど。
──(笑)。
川北 反省は毎回していこうと思ってます。
──(『ラヴィット!』で披露したギャグの)“逆ニッチェ”や“まーごめ”を、どうしてもやりたくなってしまう。
川北 基本的に自分が面白ければいいので、ウケてなくてもいいっちゃいいんですよ。
──(お笑いコンビの)カナメストーンやケビンスの山口コンボイまでいくとマニアックなのかなと。
川北 TBSラジオのポッドキャストで番組(『真空ジェシカのラジオ父ちゃん』)をやらせてもらっているんですけど、現在、一時的に地上波で放送していて。ポッドキャストと同じノリでカナメストーンの名前を出したら、ディレクターに「地上波期間はカナメストーン禁止」と言われたんです。
──厳しいですね(笑)。
川北 でも、なぜか山口コンボイは許されてる。わけのわからないことをたくさん言ってると、抜け道もできるんですよ(笑)。
──そこには芸人愛があるんですか?
川北 まったくないです(笑)。ただ面白がっているだけ。なのに、「名前を出してくれてありがとう」と感謝されることもあるのでラッキーですね。
──『日曜サンデー』(TBSラジオ)では、爆笑問題さんが真空ジェシカの悪ふざけを理解してくれて。
川北 誰が見ても「これはダメだろう」という答案用紙を見せたら全部に「はなまる」がついて返ってきました。「『まーごめ』を言い続ける草の根運動は大切だよね」って。世間の人たちが日常的に「まーごめ」を使うようになるまで言い続けたいと思います。
──「まーごめ」は使い勝手がいいですからね。
川北 「まーごめ」はすべての言葉の代用になるんですよ。将来的に、日本の国語辞典は「まーごめ」と書かれた一枚の紙になりますから。
──川北さんは面白いことだけをやって売れたい気持ちがあるんですか?
川北 「ふざけてお金を稼げるっていいな」と思って芸人になったので、ふざけてないと意味がないと思うんです。
──テレビにおいては人柄が見えない状態でふざけると拒否反応があるんでしょうね。
川北 漫才でも「人柄が出てない」と言われることがあるけど、人柄を出そうと思って出すのも違うじゃないですか。それでもずっとふざけていようと思ってます。
──悪ふざけを貫いて、キャラクターが浸透すれば状況は違ってくるかもしれません。
川北 1回目で「こういう奴なんだ」とわかってもらえて、2回目に出た時はラクになるよと聞いているんですけど、今のところほとんどの番組が1回目のまま(笑)。厳しい戦いが続きそうです。
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