登録者数280万人!エガちゃんねる仕掛け人が語るヒットの秘訣「過激なだけだと続かない」
新型コロナウイルスが全国で猛威を振るう直前の19年2月1日に産声を上げ、わずか9日で100万人登録を突破した「エガちゃんねる」。浮き沈みの激しい芸能人YouTube界だが、伝説のキワモノ芸人として知られた江頭2:50がオリコンの「好きなYouTuberランキング」でも石橋貴明や本田翼を抑え1位に輝くことを、だれが想像しただろうか。開始3年目を迎え、今なおエネルギッシュに走り続ける「エガちゃんねる」の仕掛け人であり、2月に『エガちゃんねる革命』(宝島社)を発売した「ブリーフ団D」こと藤野義明ディレクターにチャンネルの裏側を聞いた(前後編の前編)。
――現在「エガちゃんねる」は登録者が280万人を突破。始める前はここまでの成功を予想していましたか?
藤野 いやもう想像を絶すると言いますか、僕も江頭さんも全員が驚いて状況がわからないままどんどん人が増えていったという感じですね。スタートダッシュに関してはこれまで江頭さんが培ってきたもの、それこそ『浅ヤン』から『めちゃイケ』『ぷっスマ』『みなさんのおかげです』なんかの番組で作ってきた伝説、江頭さんが作ってきたキャラクターによるところが大きかったと思います。
――時代的にも、過激なだけのお笑いが好まれなくなってきたという風潮がある中、これだけ多くの「あたおか」(※「エガちゃんねる」ファンの総称)を獲得したのは凄いと思います。
藤野 江頭さんの場合やっぱり芸風が唯一無二で、あの爆発力は他のタレントさん、芸人さんでも他に見たことがない。それが魅力の一つなわけですけれど、2年前にはもうすでにテレビではコンプライアンス的にも過激なものが求められなくはなっていました。それができる場所としてのYouTube、「エガちゃんねる」だと思って始めたところはあったんですが、それだけじゃ体力的にもしんどいし、ネタも尽きてきますので、僕が知っている江頭さんの人間としての魅力は見せていこうと思っていました。
本当に裏表のない人だし、仕事に対してはストイックだし、応援してくれる人が増えたのは、そのギャップが魅力的だったからじゃないかなと。あんまり言うと江頭さんに対して営業妨害みたいになっちゃいますけど(笑)。コメント欄なんかでも「テレビで見ていた頃は嫌いだったけど、『エガちゃんねる』で人柄を知って好きになった」という人はとても多いですね。
――そもそもなぜ江頭さんでYouTubeチャンネルを始めようと?
藤野 18年にさっき名前が挙がったような、江頭さんが出てきた大きな番組が軒並み終わって、仕事が無くなってしまったんです。僕は自分が携わっていた『ぷっスマ』も含めて、江頭さんとは20年近くいろいろ仕事をしてきて、素の江頭さんがすごく好きで。お笑いとして成立する面白さを持っているとも思っていましたし。それを誰も知らないまま、いわば江頭さんが「嫌いな芸人」の立場のまま終わってしまうのが嫌で。ラストチャンスではないですが、素の江頭さんを知ってもらうチャレンジがしてみたかったんです。
――2年前だと、今ほど芸能人YouTubeが盛り上がっていなかったと思うのですが、話を持ち掛けた時の江頭さんの反応はいかがでしたか?
藤野 もともとネットとかにもすごく疎い人ですから、偏見だったり下に見ていたりと言うわけではなく、単にわからないから遠ざけていた、というのはあったかもしれません。でも最終的には「藤野君が面白いと思うんならお願いします」って言ってくれましたね。
――「エガちゃんねる」では、江頭さんの通う「夜のお店」の女の子をドッキリの仕掛け人にしたりと攻めた企画をなさったりもしますが(笑)、動画の企画はどのようにして決めるんですか?
藤野 ドッキリ系は別にして、基本的には江頭さんがやりたいことがベースです。だいたい雑談の中から「これやってみよう」っていう感じで決まりますね。まあ、1発目の動画の「お尻書道」(※お尻の穴に筆を突っ込んで書道をする)とか、下品な企画はほぼほぼ江頭さんの発信だと思ってもらっていいです(笑)。
――中でも、藤野さんが「これは会心の出来だ!」と思う動画はありますか?
藤野 たくさんあるんですけど、ひとつは「誰も江頭を知らない街」ですね。山形の温泉街で街ブラロケをしたら、その街の誰も江頭さんのことを知らないというドッキリなんです。そもそもそれを撮る前に大阪ロケの企画があって、「江頭さんは大阪のベタな笑いとも違うし、あんまり人気ないんじゃないのか?」と思ってやったら、実際は街ですごく声も賭けられるし大人気だったんですよ。それで僕は「なんかつまんないな」って(笑)。人気がない事を逆手にイジって面白くなればと思っていたので。だから逆に、江頭さんを誰も知らない、っていうドッキリは面白いんじゃないかと。
――そういう伏線があったと。
藤野 ただ、どうやってやるんだ? と。絶対知ってる人が声をかけてきちゃいますから。エキストラを雇うにも何人かかる? って。現実的には無理だと思ってたんですが、その温泉街から「コロナで人も来ないからPRして活気づけてほしい」という話が来たんです。山の中の温泉街で通行人も店も少ない、これならいけるかもしれない、と。先方も「街を挙げて協力します」と言ってくださったんで、地元の方を何十人か集めて演技指導して。これって、江頭さんでしか実現できない企画なんですよ。超人気のYouTuberを知らない年配の人はいても、江頭さんを知らない人はなかなかいないですから。
――確かにそうですね。
藤野 江頭さんも「なんで誰も知らねえんだよ! おかしいよ!」ってどんどん落ち込んでいって(笑)。「もう帰ろうよ」とか言い出すのもリアルで良かったです。編集もちょっとミステリーっぽさを出したりして、自分で言うのもなんですけど会心の出来だと思っています。ほかにも、「江頭55歳、初めてのマクドナルド」という動画なんかも、江頭さんくらいなんですよ、あの年までフィレオフィッシュしか食べたことがないのは(笑)。そういう人だから緩急つけた色んな企画ができる、作る側も飽きずに面白くやらせてもらってるなと思っています。(後編につづく)
▽書籍『エガちゃんねる革命』(宝島社)著者・藤野義明 (ブリーフ団D)定価1,650円
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