「バチェラー2」小柳津林太郎がその後の生き様を語る 海外バチェラーのオーディションにチャレンジも?
取材・文:高橋千里/マイナビウーマン編集部、撮影:masaco
「ねえねえ、バチェラー観た?」
職場でも、友達と遊んでも、毎年とある時期になると必ず話題に上がるキーワード。Amazon Primeから配信される度にバズを起こす『バチェラー・ジャパン』シリーズ。
そんな『バチェラー』のシーズン2(2018年配信)は、わたし含め多くの人が「一番好き!」と支持する伝説の回。その主役ともいえる“2代目バチェラー”が、小柳津林太郎さん(38歳)。当時はサイバーエージェントグループの幹部を務めていた。
会社員として働いていた彼がバチェラーとして名を広げ、そして会社を辞めて起業した理由とは。インタビューからは、独特の野心が垣間見えた。
■バチェラー出演の条件は「3カ月の休職」
「知人から『林太郎さんに合う番組があるよ』と勧められたのがきっかけでした。最初は断っていたんですけど、何度も勧められたので、1回だけ話を聞きに行くことになって」
当時のことを振り返りながら、小柳津さんはゆっくりと語りはじめる。
「いざ行ってみたら2代目バチェラーのオーディション現場でした(笑)。6人くらいに囲まれて、いろんな質問をされて……。話を聞いてみると、たくさんのお金やスタッフさんが動いている、すごく大きなプロジェクトだったんです。僕がその主役になるなんて、生涯一度来るか来ないかの貴重な機会だし、素直に挑戦してみたいなと思いました」
『バチェラー』は20人の女性からひとりを選ぶ、リアル婚活サバイバル番組。バチェラー含む参加者たちは恋愛に集中するため、3カ月の撮影期間は仕事を休み、スマホなどの外部連絡ツールも手放さなくてはいけないルールがある。
「3カ月休職しなきゃいけないことで、すごく悩んで上司に相談しました。でも、今思えば単純に背中を押してほしかっただけ。上司の答えはOKでもNGでもなく『いい大人なんだから自分で決めなさい』。最終的には自分の中で『どっちを選ばないと後悔するか』を考えて、バチェラーに出演を決めました」
その3カ月で参加女性たちと誠実に向き合い、最終的にひとりを選んで、視聴者から大きな祝福を受けた小柳津さん。しかし交際後、1年足らずで破局。当時の心境を赤裸々に語る。
「番組中は“結婚”と向き合って、長期的に一緒にいられる、僕を愛してくれる女性を選んだんです。だけど結局は、自分に『好き』という感情がないと結婚まで発展しないことに気付きました。学生時代もそうだったので、原点回帰しましたね」
バチェラーを通して得た結婚観は、きっと大きな財産になったに違いない。
■「今のお前が転職とかダサくね?」
結婚には至らなかったものの、『バチェラー2』に出演したことで“小柳津林太郎”という名前は世に広まった。その知名度をどう活かすのか、分岐点が訪れたのは2019年のこと。
「バチェラーに出演してから、それ以上のチャレンジをしないと自分は“オワコン”になるんじゃないか、という危機感がありました。一過性の人にはなりたくないし、やべぇなって」
その向上心は、新卒から13年働き続けてきたサイバーエージェントで培ったものかもしれない。続けて「その悩みが会社を辞めるきっかけになりました」と語る。
「会社は好きだし、組織をなんとかしたい気持ちもあったけど、それ以上に『今ここで大きな勝負をしないと潰れてしまう』という思いのほうが強かったんです。だから、先は決まっていなかったけど、道を開くために会社を辞めました。逃げ場をなくしたかったんです」
退職後のプランがないのに会社を辞める、という選択。それは決して逃げじゃないし、むしろ前に進んでいる。小柳津さんの言葉からそう感じた。
「会社を辞めたあと、転職も考えていました。だけど、辞めたサイバー時代の同期たちと飲みに行ったときにそれを話したら、ひとりの同期に『今のお前が転職とかダサくね?』と言われて、ハッとしたんです。
転職が悪いわけじゃなくて、自分が幹部を経験したあとだったので、今目指すべきは転職じゃない。『だったら一緒に会社やろうよ』って、その同期と一緒に株式会社GHOSTを立ち上げました」
■分岐点に立ったら「人と違う人生を歩む」
バチェラーへの出演、13年間働いた会社の退職、そして起業。
たった3年もの間に大きなターニングポイントを3つも迎えた小柳津さんは、一般人の10倍のスピード感で生きているように見える。
さまざまな選択をするとき、どんな基準で選んでいるのだろうか。聞くと、曇りのない真っ直ぐな目で答えてくれた。
「僕は『人と違う人生を歩む』軸を大事にしています。大学時代に入った演劇部が、一人ひとりの個性が許容される環境だったんですよね。サイバーエージェントもそう。
“右習え右”で同調するのってすごくラク。だけど本当はみんなそれぞれ個性があるはずだから、『自分がしたいことってなんだろう?』『何が好きなんだろう?』と問いかけて、それに対する自分の正直な答えを肯定してあげてほしいです」
そして最後に小柳津さんが、30歳を目前にしたマイナビウーマン読者に伝えたいのは「“急ぐ”のはいいけど、“焦る”必要はまったくない」ということ。
「“急ぐ”のは自分の意思を持って早めに進めること。“焦る”のはまわりと比較して苛立つこと。焦って心情が乱れていると、正しい選択ができなくなるんですよ。
例えば婚活で焦ると、来るもの拒まずで適当な人を選んじゃって、結果あんまりよくない思いをしがち。だから“焦る”必要はないんです。もし“急ぎ”たいなら、平常心を保ちながら、アクションスピードを上げることが大事だと思いますね」
20代後半になると「30歳」をひとつのリミットにとらえて焦ってしまいそうになるけど、そんな必要はないんだって、人生の大先輩である小柳津さんの話を聞いて思い知らされた。仕事も恋愛も、何歳になっても新しいチャレンジができる。
取材が終わったあとも話は尽きない。起業した会社で新たに飲食事業を立ち上げる話、海外版バチェラーのオーディションを受けに行く話……。
どの話題も目をキラキラと輝かせて話す小柳津さんは、バラを持ったタキシード姿よりもずっと、かっこよく見えた。
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