永作博美『時すでにおスシ!?』に見る「50代女優が主演を張る」ドラマ界の“変化”
50歳を迎えると既婚、未婚に関わらず、生活環境はだいぶ変わってくる。例えば両親の介護が突然始まる、子どもが巣立って家族関係が変わる、毎日不調で体力が落ちる、老後が不安になる。何となく全体的に元気がなくなるイメージだろうか。そんな中年たちの応援歌になりそうな、ドラマ『時すでにおスシ!?』(TBS系)が放送中だ。
◆自分のセカンドキャリアを考えさせられるドラマ
50歳の待山みなと(永作博美)は夫の死後、シングルマザーとして一人息子の渚(中沢元紀)を育ててきた。そんな息子も社会人となり、一人暮らしが始まる。どうしたって時間が余る。そんな時に友人からのたまたまの縁で、鮨アカデミーに出会う。今まで家庭料理しか知らず、鮨職人のような専門職には縁がない。予期せぬ事態ではあるけれど、何かが見つかるかもしれないと、アカデミーの門を叩く。元職人で講師の大江戸海弥(松山ケンイチ)や、同じ生徒仲間らと出会い、第二のライフステージを始める……のは、大まかなあらすじ。
初回から物語が進み、私(を含む)の周囲の中年たちにも好評だ。みなとは今後の展開できっと、鮨職人としての技術だけではなく、今までの生活では得られなかったものを会得していく。ひょっとしたら恋愛だってあるかもしれない。そんな淡い期待を抱かせてくれる作品なのだ。
さらにここで気になったのは、主人公を演じる永作博美の55歳・実年齢。芸能人である云々の理由に関わらず、彼女はベビーフェイスも相まって非常に見た目が若々しく、可愛らしい。今回の役もとても似合っている。ただこの場で私が伝えたいのは、55歳の女優の主人公が、日本のオリジナル作品では稀有である事実だ。
◆増えていく、アラフィフ、アラカン主演
日本人撮影によるオリジナル作品の誕生は、明治31年の浅野四郎氏が撮影した短編『化け地蔵』や『死人の蘇生』と言われている。ここから始まり、テレビ局がドラマを制作して、令和では動画配信サービスが大きな人気を博している。が、昨今の作品を見渡してみても、主人公は圧倒的に男性の俳優がその座を占めている。女性の俳優が主人公の作品ももちろんあるけれど、NHK朝ドラヒロインの傾向と同じく、やはり年齢は若い。20〜30代が主軸といったところだろうか。5月1日公開の映画『プラダを着た悪魔2』に出演するメリル・ストリープは今年76歳で、メインキャストなのに。竹野内豊、風吹ジュンらが出演した2025年公開の映画『SPIRIT WORLD -スピリットワールド-』では、カトリーヌ・ドヌーヴが81歳で主演を務めているのに。日本で同じ立ち位置にあるとしたら、吉永小百合一択になってしまうのだろうか。華やかで自由な世界に見えて、実は男尊女卑意識があるのだと気づいたときは少し悲しかった。
ところがその潮流が近年、変わりつつある。例えばドラマにフォーカスを当ててみると、58歳の天海祐希が主演する『緊急取調室』(テレビ朝日系)を筆頭に、50代の女性の俳優の活躍がめざましい。昨年、還暦を迎えた沢口靖子も『科捜研の女』(テレビ朝日系)シリーズで、一時代を築いてきた。
「警察モノのドラマなら、年配の視聴者も多いでしょうし」と括られるのであれば、昨年放送され、いわゆるZ世代からも支持を受けた『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系)では、59歳の小泉今日子がアラカンヒロインになった。最終話では赤いちゃんちゃんこを着ていたのが思い出される。同年『ディアマイベイビー~私があなたを支配するまで~』(テレビ東京系)では、松下由樹が56歳や、今年の冬クールでは52歳の松嶋菜々子が『おコメの女-国税局資料調査課・雑国室-』(テレビ朝日系)で主演を務めている。
ドラマや映画を愛する年齢層の高齢化もあるけれど、確実に傾向は変わってきているので、この調子で主演俳優の年齢にも良きバランスを保ってほしい。それが人生100年と言われて、近々70歳くらいまで労働力を求められる私たちへの、ひとつのエールでもある。
(文/コラムニスト・小林久乃)
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