大胆な濡れ場、サイコパス演技…2025年もっとも「覚醒」した女性俳優3人

まず特筆すべきは、強烈なヒール役が記憶に新しい白石聖だ。結婚情報誌『ゼクシィ』の12代目CMガールに抜擢され一躍有名となった彼女は、ここ数年で着実に表現の幅を広げてきた。特にAmazon Originalドラマ『私の夫と結婚して』で演じた江坂麗奈は、それまでの“清楚系俳優”というイメージを覆すほどの話題を呼んだ。

麗奈は、主人公・神戸美沙（小芝風花）の親友でありながら、裏切りを重ねる悪女という役どころ。第1話では美沙の夫と関係を持つだけでなく、彼女を高所から突き落とすという衝撃的な展開が描かれた。

浮気現場を押さえられ、表向きは「ごめん」と取り繕う一方で、開き直った瞬間に見せた冷然とした表情は凄みに満ちている。取り乱すことも怒りをあらわにすることもなく、氷のような眼差しで美沙に引導を渡す姿は、白石の新たな一面を鮮烈に印象づけるものであった。

そんな白石は、2026年1月4日放送開始のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟！』において、仲野太賀演じる主人公・小一郎（のちの豊臣秀長）の幼なじみ・直（なお）役として出演。本作への起用は、当初出演予定だった永野芽郁の降板を受け、白石が代役として抜擢されたという経緯がある。

大河ドラマの代役といえば、2020年放送の『麒麟がくる』でもキャスト降板に伴う交代劇があった。当時、代役として抜擢されたのが、今や誰もが認める人気俳優となった川口春奈。代役とはいえ、それが大きな飛躍のチャンスとなり得ることはこの例が示している。白石にとっても今回の抜擢は、俳優として一段階上のステージへ進む好機となるだろう。2025年に注目を集めた俳優として、加藤小夏も外せない。ホラーゲーム『SILENT HILL f』では主人公の深水雛子を演じ、さらに自身のYouTubeチャンネルで同作の実況プレイを公開したことでも大きな話題に。玄人ゲーマーというわけではないが、「女版・狩野英孝」と評されるほどの奔放なリアクションや等身大のプレイスタイルが支持され、初回配信は500万近い再生数を記録。エンタメ界を大いに盛り上げた。

もちろんゲーム実況だけでなく、俳優としてのキャリアも順調に積み上げている。加藤は桂正和の人気マンガを実写化したドラマ『I"s』（BSスカパー！）でヒロインの一人・麻生藍子役を演じ、連続ドラマデビュー。2022年には大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で、源実朝を献身的に支えた正室・千世役を好演するなど、清純派の役柄が多かった印象が強い。

しかし、2025年の秋ドラマ『娘の命を奪ったヤツを殺すのは罪ですか？』（カンテレ・フジテレビ系）で挑んだのは、息子を金儲けの道具としか見ていない毒親役。『鎌倉殿の13人』で見せた真摯な女性像とは対照的に、常に酒に酔ったような焦点の定まらない表情で破綻した人物像を体現しており、そのギャップが強烈なインパクトを残した。表現の幅をさらに広げつつある加藤は、2026年に一段と大きく飛躍する気配を漂わせている。

そしてもう一人、忘れてならないのが森七菜だ。彼女は新海誠監督のアニメ映画『天気の子』でヒロインを演じて以降、さまざまな作品に名を連ねてきた。本来なら森は“これから飛躍する”という括りに当てはまらないほどの人気俳優だが、この1年間で見せた活躍ぶりは、あえて取り上げたくなるほど際立っていた。

中でも印象的だったのが、映画『国宝』の彰子役。吉沢亮演じる主人公・立花喜久雄を慕うヒロインの一人として、身支度を手際よく整える仕草や、大胆な濡れ場に挑む姿は、それまでの森に対するイメージを大きく更新するものだった。

ほかにも松たか子主演の映画『ファーストキス 1ST KISS』では、同じ職場の同僚として主人公を支える世木杏里を好演し、豪華客船を舞台に新型コロナ集団感染の最前線を描いた映画『フロントライン』では、正義感あふれるクルーズ船クルー・羽鳥寛子を熱演。新海監督作品の実写映画『秒速5センチメートル』では、主人公に密かな想いを寄せる高校生・澄田花苗役、さらにNHKドラマ『ひらやすみ』では「マンガを描くことは恥ずかしい」と思い込みながらも、マンガ家を志す小林なつみとして、繊細な内面を表現していた。

いずれも2025年に公開・放送された作品でありながら、森が演じたキャラクターは一つとして重ならず、それぞれでまったく異なる表情を見せている。しかも出演作はいずれも高い評価を受け、ネット上で「森七菜の出演作にハズレなし」と称されるほど。2026年春には主演映画『炎上』の公開も控えており、その勢いはしばらく止まりそうにない。

2025年に確かな存在感を放った3人の躍進は、間違いなく次のステージへの布石となった。来る2026年、今度は誰が新たな才能を開花させ、シーンの主役へと躍り出るのか――。エンタメ界の動向からますます目が離せない。