神田沙也加はなぜ愛され続けるのか？「本物になりたい」と願った少女が「永遠」になった日

2日に投稿されたメッセージは、神田さんが生前所属した芸能事務所の名義で出された。文面には「神田沙也加の39歳を祝うお言葉をいただき、ありがとうございます。たくさんの皆様がお祝いしてくださり、神田が生きてきた証が残っていることを改めて実感いたしました。きっと神田も遠い空の彼方で喜んでいると思います」と記され、ファンからの祝福の声への感謝が示された。

さらに「お一人お一人へのお礼が叶わず、こちらでのご挨拶となりますことをご容赦ください。皆様のご多幸を祈念申し上げます」と呼びかけ、これに対してファンからは「沙也加ちゃん、ずっと大好きですよ！」「またディズニーシー行って沙也加ちゃんの声に会いたいな」「舞台で躍動する姿は絶対に忘れません」「ずっとファンで、応援していました。これからもずっとファンです」など、故人への思いが詰まったコメントが寄せられている。

神田さんは俳優の神田正輝と歌手の松田聖子の長女として生まれ、2001年に芸能活動を開始。CM出演、歌手デビュー、映画『ドラゴンヘッド』のヒロイン役での女優デビューとトントン拍子で大きな仕事が決まったが、当初は二世タレントならではの「親の七光り」批判があった。

しかし、二世タレントであることに誰よりも苦悩していたのは神田さん自身だった。

2004年、宮本亜門演出の『INTO THE WOODS』の赤ずきん役にオーディションで抜擢され、ミュージカルデビューを飾った。このとき神田さんは、宮本氏に対して「私は有名人の娘だから（オーディションに）受かったのですか？」と尋ねた。宮本氏が「いや絶対違う！オーディションで多くの人を見て、君が素晴らしかったからだ！」と答えると、神田さんは少し安心した表情で「私、本物になりたいんです」と語ったという。

当時17歳にして、すでにその覚悟を胸に芸能界で闘っていたのだ。歌唱力や演技力を磨くため、宮本氏いわく「異様なほど」の努力を重ね、その才能はミュージカルで見事に開花した。『ウーマン・イン・ホワイト』のローラ役や、『ファンタスティックス』のルイザ役、『レ・ミゼラブル』のコゼット役などで圧巻の歌声と表現力を発揮した。「神田正輝と松田聖子の娘」ではなく、自身の実力で“ミュージカルスター”としての地位を確立した。

その実力を買われ、2014年公開のディズニー映画『アナと雪の女王』でヒロイン・アナの吹き替え声優を務め、劇中で『雪だるまつくろう』『生まれてはじめて』などの楽曲の歌唱も担当。舞台で鍛えられた演技力と歌唱力の高さで、ミュージカルファン以外にも「女優・神田沙也加」の実力と魅力が広く知られることになった。

ディズニープリンセスの吹き替え役は「完全実力主義で選ばれる」といわれるが、それにふさわしい歌声と演技だった。この大ヒット作によって「神田沙也加は“永遠”になった」ともいえる。

これをきっかけにミュージカル女優としての人気と勢いはさらに増し、2017年に主演した『キューティ・ブロンド』で念願だった菊田一夫演劇賞を受賞。そしてついには、「もう一人の母」と慕う大地真央の当たり役として知られる『マイ・フェア・レディ』のイライザ役を演じるまでになった。神田さんが他界した当時の報道によると、「5年先の舞台の予定まで入っていた」といい、業界内の評価や信頼度の高さがうかがえる。

また、神田さんは母親譲りのロリータファッション愛好家としても知られ、人気ブランド「Angelic Pretty（アンジェリックプリティ）」や原宿系ファッション誌「KERA」（J International）のモデルとしてドレス姿などを披露。圧倒的な透明感とファッションへのこだわりでロリータ系女子からの人気が高く、あこがれやお手本となる存在だった。ミュージカルやディズニー映画だけでなく、そうした一面も彼女が愛される理由となった。

神田さんが天に召された後も、彼女の歌声や作品は生き続け、われわれに希望や勇気を与えてくれる。これからも彼女は、永遠に愛される存在であり続けるだろう。