ドラマ「SHOGUN 将軍」サントラ、グラミー賞ノミネート アレンジャー務めた石田多朗「日本の伝統音楽のクオリティは世界に誇れる」
俳優・真田広之が主演で、作曲家・石田多朗が総合音楽アレンジャーを務めたドラマ「SHOGUN 将軍」(ディズニープラスで配信中)のサウンドトラックが、グラミー賞で「最優秀映像作品スコア・サウンドトラック」にノミネートされた。授賞式は2025年2月2日(日)、日本時間2月3日(月)にロサンゼルスのクリプト・ドットコム・アリーナで開催される。
「SHOGUN 将軍」とは
2024年2月から4月に渡って全10話が世界配信され、日本の戦国時代を舞台にしたテレビドラマシリーズ「SHOGUN 将軍」。本作は真田が主演、プロデュースを務め、日本の専門家たちが現地の制作チームと共に戦国時代、侍の文化を研究し、衣装や小道具、所作など細部まで徹底的にこだわって制作された。
「第76回エミー賞(R)」では作品賞・主演男優賞・主演女優賞をはじめとした主要部門を総なめし、エミー賞史上最多18部門を制覇。日本人の受賞者も史上最多9名となる歴史的快挙を達成した。
アカデミー賞受賞歴を有する3人の音楽家と初タッグ
グラミー賞は、音楽界最高峰の祭典で優れた作品を手がけた音楽業界のクリエイターを称え表彰する。アカデミー賞(映画)やエミー賞(テレビ)、トニー賞(舞台)と並ぶ世界中の音楽業界関係者、音楽ファンが注目する音楽賞となっている。
本作のサウンドトラックは、アカデミー賞受賞歴を有するアッティカス・ロスをはじめとするレオポルド・ロス、ニック・チューバの3人が担当。「日本の伝統音楽を劇中曲に生かしたい」という熱い要望を受け、雅楽作曲家、音楽プロデューサーでもある石田が総合音楽アレンジャーを務めた。
ドラマと共にサウンドトラックは高い評価を獲得。エミー賞でもテーマ曲賞、作曲賞2部門に選出された。雅楽や日本伝統楽器が効果的に使われた映像音楽、楽曲がノミネートされること自体が史上初の快挙となった。
坂本龍一さんと同じタイミングでのノミネート
2023年に亡くなった坂本龍一さんの最初で最後の長編コンサート映画「Opus」の音源作品が「最優秀ニューエイジ/アンビエント/チャント・アルバム」にノミネートされた。
無名だった石田が初めて作曲した雅楽「骨歌(こつか)」を聴き、「いいじゃん、雅楽を続けなよ」と最初に温かい声を掛けてくれた人が坂本龍一さんだったという。
石田は「あれから10年。憧れのグラミー賞に同じタイミングでノミネートされるなんて運命を感じずにはいられません」と感動を口にした。
Instagramを通じて石田多朗を抜粋
リアリティの追求は、サウンドトラックも然り。脚本を読んだアッティカス・ロスら3人は自分たちの創るエピックに「本物の日本の楽器を取り入れ、SHOGUNの世界を音楽で表現したい」と日本音楽を研究。雅楽を取り入れた楽曲を手掛けていた石田を知り、Instagramを通じて協力を打診した。
石田は総合アレンジャーとして加わり、3人のスケッチを基に伝統音楽のアレンジ、採譜、邦楽器演奏者のマネジメント、レコーディングなどを務めた。
ロサンゼルスのアッティカスらとリモートで連絡を取り合い、約2年。ダイナミックなエピックと笙、篳篥といった雅楽楽器、尺八、胡弓、法螺貝、三味線などの邦楽器が融合。荘厳かつ繊細、ミステリアスな「SHOGUN 将軍」の世界を表現した。
例えば、アッティカスたちからビート感が強い音楽のスケッチと共に、そこに「日本的な要素を加えたい」との要望のメールが届く。石田は、仏教の経文を朗唱する「声明」を提案し、実際に日本のある寺院で録音、編集。その声明の音源は作曲家チームに大好評だった。その結果、日本の伝統的な響きを現代のビートに融合させることができた。声明の音源は「SHOGUN 将軍」のテーマ曲の他、様々なシーンでも使用され、日米融合の音楽が一層の深み、臨場感を与え、陶酔させた。
「SHOGUN 将軍」のサウンドトラックから雅楽を世界に
本作のサウンドトラックは、雅楽を始めとした日本の伝統音楽のポテンシャルとクオリティを世界中に広める機会となった。雅楽と西洋音楽の融合により、日本固有の音色が現代の映像作品で新たな価値を生み出し、伝統音楽の未来にも光を投げかけている。
石田多朗よりコメント
映像とサウンドトラックが合体した完成版を拝見した時、雅楽が様々な場面に散りばめられていて、台詞では描かれない要素を醸し出すなど、作品の重層感に寄与できたのではないかと感動しました。世界の先端を走るアッティカスたちが、雅楽や邦楽器のレコーディングを聴く度に、「マジカル!」「すごい!」と返してくれたこともすごくうれしく、自信につながりました。
「SHOGUN 将軍」のサウンドトラックを通じ、雅楽をはじめとする日本の伝統音楽のクオリティ、ポテンシャルの高さは「世界に誇れる」と証明されたと思います。
現在、日本国内での伝統音楽への関心は必ずしも高いとは言えず、後継者不足や資金不足など多くの課題に直面しています。今回の反響を機に、その素晴らしさが再認識され、伝統音楽の未来に向けた前向きな取り組みが進むことを期待しています。
私自身も、西洋音楽と雅楽の融合に挑む、世界初の雅楽プロジェクトを進行中です。制作中の楽曲は、映画やゲーム、アニメなどのサントラとしての可能性を探ることを目指しています。映像やゲームを通じて若い世代の方々に自然な形で雅楽、日本の伝統音楽に親しんでもらい、日本文化の継承につなげられたら嬉しいです。
最後に、日本の伝統音楽の一流の奏者、関係者の皆さん、広大な情報の海から僕と雅楽を見つけてくれたアッティカス・ロスたちに心から感謝申し上げます。
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