エッセイタイトル:3月31日から4月15日へ伝達

3月31日から4月15日へ伝達:エッセイ/小林私「私事ですが、」

2023.04.16 01:12
エッセイタイトル:3月31日から4月15日へ伝達

美大在学中から音楽活動をスタートしたシンガーソングライター・小林私が、彼自身の日常やアート・本のことから短編小説など、さまざまな「私事」をつづります。今回は、アーティストと事務所、レコード会社との関係、そしてお金の話です。

この記事が公開されているということは、大体の話を終えた頃だろう。

4月2日にキングレコードHEROIC LINEに所属したことを発表し、事のあらましも大体喋っていると思う。

あらましを文章に起こしてみてもいいのだが、詳らかに書こうとするとどうにも告発文のようになってしまう。いわゆるデビューというものをしてから約3年、キングに拾ってもらうまでさまざまな異常事態に見舞われたわけだが、そのほとんどに私は怒っていない。むしろ、客観的に、怒るべきところで怒らなかったことで事態が複雑になったともいえよう。あくまで笑い話にしたいのだ。

と、ここまで書いて、外側をなぞるだけというのも変な気がしてきた。

それにここ数年の異常な動きを見過ごして応援し続けてくれ、というのはあまりに不誠実だ。私は諸君に対する説明責任がある。

それにせっかくの年度末なのだから、端的かつ、なるべくポップに書くことにしよう。

2020年2月、私の最初の事務所兼レーベルとなる母体、株式会社がんばれ(変な名前だ)の日の出である。後の代表取締役である美月リカ、SNS上で唯一共通の知り合いであったがんばれまさしげ、初の3人での会合。渋谷のチェーンの居酒屋で意気投合し、自主レーベル"easy revenge records"の立ち上げも決まった。

ここからの動きはとても早く、同月に「生活」「悲しみのレモンサワー」のアレンジを終え、翌月にはMVも撮り終えていた。デビューが6月になったのはコロナの影響だ。思えば私の音楽生活はコロナと共に始まっている。

がんばれの思い出を振り返ると、濃密すぎてとても本題に進めないのでここでは割愛する。でも、楽しい思い出ばかりだ。

ところで、キングレコードは実は3つ目の事務所である。特に公表されていないが、がんばれとキングとの間にもう一つの事務所が挟まっている。

2022年1月、私はとある問題に頭を悩まされていた。金が無い。全然無い。笑えるくらい無い。当時銀行の口座を2つ持っていたのだが、りそなの残高が確か77円、みずほが確か48円。YouTubeもほぼ収益化しておらず、当時の多いときで確か月2~3万円。余談だが、このときプロミスの審査も落ち、夜中に地元のセブンイレブンの駐車場でカードローンを申請し、受理されるまで何日か時間がかかることに気付いて絶望した記憶がある。

何故金が無かったのか?答えは簡単、貰ってなかったからである。

がんばれ初の会合の日、就活シーズンも迫っていた私は「所属するとして月いくら貰えるのか」ということを聞いた。その時には「月20万の固定給」を約束してもらっていた。この20万は結局貰えることはなかった。数ヶ月して「給与はどうなっているか」と聞いたところ何故か怒られてしまい、それから金のことは言えなくなってしまった。

どういう風に生きていたかというと、実家にしがみつきながらYouTubeの収益を貯める。交通費だけは領収書を送れば返ってきていたので、余裕のある月に領収書を溜めて適宜経費を回収する、という、ゆっくり総量が減っていく自転車操業をしていた。正直親が離婚していなかったら実家はさらに居辛かった。

(凄く余談だが、キング移籍発表と両親の離婚記念日が同じ日だ。当時離婚すると言われて(エイプリルフールみたいになるからズラしたのかな...)と思ったことを覚えている)

ただ、1円も貰っていなかったかというと語弊がある。

これは必要でリストアップしたのである程度正確な値だが、2020年2月の固定給(予定)の半分10万円、2021年5月に詳細不明のギャラ約27万、同年10月以降に「流石に死ぬ」とお願いして貰っていた月7万円を4ヶ月分28万の計約65万円。これがざっくり私の2年分の稼ぎである。

勿論アルバイトも視野に入れていたのだが、有難いことに仕事自体はひっきりなしに来るので、そんな暇はついぞなかった。

ここまでで音楽に多少明るい人なら疑問に思うであろう、著作権や配信使用料についてだが、まず著作権を申請しなければならないということを誰も知らなかった。これが判明した時、本当に大笑いした。

サブスクの収益に関しても誰がどう管理しているのかすら分かっていなかった。2年経ってようやく、我々は勘で会社を立ち上げてしまった!...ということに気付いたのだ。

CDの売り上げに関しても行方知れずで、タワレコメンアワード アーティストオブザイヤー2021という賞まで頂いているのだが、これにより受け取ったものはトロフィーのみである。(このトロフィーも渡し忘れていたらしく、2022年の下半期に突然受け取った。タワーレコードさん、ありがとうございます。)

物販も、私がほぼ全てのデザインを担当していたわけだが、もちろんノーギャラだ。後半はどうせ1円も貰えないからと制作の人にめちゃくちゃな値下げ交渉をしていた。会場限定で出した栞に至っては原価割れスレスレの設定にし、値段の打合せ中に制作担当が何度も天を見上げていた。

ライブに関しても同様。先日大阪のライブ制作でお世話になっている人に都内で出くわしたのだが、顛末を軽くお話していたら「僕、絶対プラスになるようにお返ししてたのに...」と言われてしまい、申し訳ないがめちゃくちゃ笑ってしまった。(ライブ制作で特にお世話になっているKさん、Sさん、本当にありがとうございます。)

この他にも1000万円をとられる等(これに関しては生々しすぎるので詳細を省きます)、桃鉄で常時ボンビーが憑りついている状態だったわけだが、一つの転機が訪れた。

「そこに居続けるのはマズい、新しい事務所を紹介したい。」

こう言ってくれた人が現れたのだ。Nさん、その節は助かりました。

事務所の移籍に関しては正直かなり揉めた。時間にして3カ月は余裕で揉めた。その結果生まれたのが今となっては超謎のレーベル、YUTAKANI RECORDSである。レーベル名は私が決めたのだが、今思い返すとかなり切実な名前だ。まさしくYUTAKANI(豊かに)なりてえと思い、名付けたのだ。

さて、なんとなく察しているかと思うのだが、これは2つ目の事務所。ここが問題なければ、3つ目のキングレコードへの移籍はない。ここでも揉めた。

金銭面に関しては、ようやく給与が頂けたので比較的落ち着いた。音源が幾つか消えたり変わったりもあったが、大きな問題はそこではない。

新しい事務所に伴って新しいマネージャーがついたわけだが、Nによるマネージャーへのパワハラが発覚した。詳細は伏せるが、この3年間の活動で唯一キレた。金輪際貴方と仕事をしません、という旨と共に、新しい事務所にも辞める意向をお伝えした。

結果、事務所がNに払っていた給与や制作費を含めた約460万円を請求されてしまった。新しい事務所とはまだ契約書を結んでいなかったので(というかこの3年間で契約書の類全てが何度言っても貰えなかったので法的にはずっとフリーだった)支払い義務は無いと言えば無かったが、正直この時点で私の思考は、

「もう勘弁してくれ」

これに尽きていた。そもそも2年間ギリギリで生きていたので金があるわけもなく、2つ目の事務所の社長に「どう支払うのか」と問われ半ばギャグで「アコムとかプロミス(審査に落ちている)ですかね~」と返したところ「そういうところは金利が高いから友達に借りると良い」と言われてしまった。本当に、勘弁してくれ。

そしてその渦中で、そんなことは何も知らないキングレコードからレーベルの誘いが来る。

知らない人に軽く説明をすると、事務所とレーベルは異なる機能を持っている。事務所は主にマネジメント、スケジュールの管理やブッキング、遠征の手配など、演者に付いて回ってくれる機能。レーベルは主にCDなど音源にまつわる制作を担当してくれる機能を持っている。この2つを兼ねていることもある。が、キングレコードに事務所としての機能は本来ない。

しかし話さないわけにもいかないので「お誘いは非常に嬉しいのですが今は面倒事を死ぬほど抱え込んでおり、ひとまず事務所としての機能が欲しいのですがいかがでっしゃろ?」と大体このようなことを言った。最悪のアーティストである。

この最悪に対して「じゃあうちで何とかしましょう」と言ってくれたのがキングレコードHEROIC LINE宮本御大である。いつでも靴を舐めます。(HEROIC LINEは無論、小林私の為に用意されたレーベルというわけではありません。)

そして正式にキングレコードHEROIC LINEに所属したというわけだ。念願の契約書も書いた。本来印鑑を持っていくはずの日に忘れて、レトロリロン、Dannie Mayとの対バンの楽屋で印鑑を捺していた。(笑われた)

現在3rdアルバム鋭意制作中なのでお楽しみに。今のところ不安要素はチームの人数がどんどん増えていっているせいで顔と名前を覚えられるか、ということだけだ。あと大体落ち着いてきた頃にカードが14万7016円不正利用されたのは本当に意味が分からなかった。あれだけはまだ納得いってない。

ここからは視聴者も含めて特に仕事の関係者に向けて書いておきたい部分である。

例を挙げると先日ビバラロック出演が決まった際のツイートだ。

<鹿野さんから直でライン来たの面白かったな>

<いや、本当は反則技なんだよ、このやり方。僕、ガーシーじゃないし。だけど、今どんな大人と一緒してるのかとか本当にわからなかったし、とにかく久しぶりに会いたいから、だったら直接招けばいいと思ったんだよ。爆喰いして何度もトイレ行ってから帰りな。ありがとう。>

こういうやり取りがあった。先日久々に以前何度もお会いしていたビクターの方にも似たようなことを言われた。つまり「小林私が今誰とチームで誰に連絡をしたらいいのか分からない」ということだ。

小林私のTwitterのDMは解放されているし、LINEを持っている人ならすぐに連絡も取れるのだが、鹿野さんが”反則技”と言っている通り、基本的に仕事上でこの連絡の取り方は推奨されるものではない。本人に毎度直接連絡が行っては何のための事務所か分からない。鹿野さんはあくまで私との関係値を含めて通してくれたのだ。

それに、がんばれ時代の連絡不備や去年の半年以上の期間をNが私への仕事に確認をせずに勝手に受けたり断ったりということも度々あった。(ヤバすぎる)

そういった隠れた経緯もあり、此度のビバラの件は本当に有難かった。

ということで、この度からはきちんと連絡が届くはずです。恐らく私の知らないところでの無礼もあったことでしょう。

このエッセイをここまで誰が読んでくれているか分かりませんし、またお会いした際に再度説明と謝罪をするやもしれませんが、今まで大変なご迷惑、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。特に音源周りのゴタゴタに奔走してくださったユニバーサル、NexTone、勿論その他大勢。

まあ、これからもかけることになるとは思いますが、経緯を話すタイミングのあった友人、先輩、恋人各位にも改めてありがとうございました。

これで今まで伏せていたあらましは大体書けたと思う。細かい話は、生配信とかで話しているかな。

伏せていた理由は別になんでもなく、何も解決していない端からどんどん問題が積みあがっていくせいで話すタイミングが無かったというだけなのだけど、ここまで辛抱強く待ってくれていた視聴者もありがとう。

最後に、読んでないかもしれないけど、まさしげさんへ。二人で蒸されまくった俺の子供部屋で宅録しながらほっともっと食ってた時がなんだかんだ一番楽しかったです。また何か、何でもやりましょう。

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