J-POPの新風“ヒゲダン”Official髭男dism、ヒットの理由は何だったのか【2019年末特集】
2019.12.31 07:00
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4人組ピアノPOPバンドの“ヒゲダン”ことOfficial髭男dismの楽曲を今年何度聴いたことだろう?と思うほど、日本中が彼らに惹きつけられた1年だった。そして、いよいよ今夜「第70回NHK紅白歌合戦」初出場を果たす。ここでは、J-POPの新時代を築いた彼らの生い立ちや音楽のルーツを辿り、改めて楽曲の魅力やヒットの理由を探る。
Official髭男dism「Pretender」とんでもないヒット記録
まず改めてOfficial髭男dismを紹介する。2012年6月7日結成し、メンバーの藤原聡(Vo/Pf)と松浦匡希(Drs)が鳥取県出身、小笹大輔(Gt)が島根県出身。また、楢崎誠(Ba/Sax)と松浦が島根大学を卒業、小笹が松江高専卒業という島根県・鳥取県が輩出したバンドだ。“髭”の生えたメンバーは1人もいないが、そのユニークなバンド名には「髭の似合う歳になっても、誰もがワクワクするような音楽をこのメンバーでずっと続けていきたい」という熱い意味が込められている。
大学卒業後、松江・米子を拠点に活動し、2015年4月に1stミニアルバム「ラブとピースは君の中」でインディーズデビュー。
2016年に上京後、彼らの知名度を一気にあげたのは、女優・長澤まさみ主演月9ドラマ「コンフィデンスマンJP」(フジテレビ系/2018年4月期)の主題歌に抜擢された「ノーダウト」だった。インディーズバンドが月9の主題歌を初めて担当したことから話題を集め、同曲はメジャー・デビュー1stシングルとなった。ディスコミュージックのようなサウンドを奏で、若手バンドであるにも関わらず、その実力の高さに驚いた人も多かったことだろう。
今年に入ってからの彼らはさらにグレードアップ。5月に公開された映画「コンフィデンスマンJP」の主題歌を引き続き担当した2ndシングル「Pretender」は、週間チャートで1位を獲得。23日付で、Billboard JAPANストリーミング・ソング・チャートにて、国内週間ストリーミング再生数の最高記録となる30週連続1位を達成。国内史上最短で1億再生を突破するなど、とんでもない人気ぶりをみせている。
同曲をグラミー賞3年連続(2015~2017年)で受賞した米アカペラ5人組・PENTATONIXがカバーしたことも話題を集めた。
同曲は、失恋ソングだが、切ないリリックと相反した明るいメロディが特徴。予想外の巧妙な音楽展開をしていく。この曲のテーマともいえる「もっと違う設定で もっと違う関係で 出会える世界線選べたらよかった」という1フレーズ。そんな架空の恋愛を語ることによって、現実の恋愛に対して綺麗すぎるほど爽やかに別れを告げる。王道ポップスのような口ずさみたくなるメロディと、壮大なスケールの世界観を描くリリック、そしてその魅力を最大限に引き出すバンドアンサンブルがリスナーの心をえぐる。
また、10月にリリースしたメジャー1stフルアルバム「Traveler」は週間チャートで1位を獲得するなど、ヒットが止まらない。
さらに、8月に3rdシングル「宿命」が2019ABC夏の高校野球応援ソング/「熱闘甲子園」(テレビ朝日)、「ビンテージ」がNetflix・FODにて配信された「あいのり:African Journey」の主題歌、9月には「イエスタデイ」がアニメーション映画「HELLO WORLD」の主題歌など、続々とタイアップが決定し、彼らは世間にどんどん浸透していった。
Official髭男dism藤原聡、多彩な音楽を生み出すルーツは“島根県”に
ブラックミュージックを感じさせるダンサンブルな楽曲から、心に染みるバラードまで鳴らすOfficial髭男dism。作詞作曲を手掛ける藤原は「グッドミュージックを届けたい」とあらゆる場面で言葉にしている。彼のつくる楽曲は、「宿命」「Stand By You」「FIRE GROUND」などの心地の良いグルーヴ感が特徴的。また、「Pretender」「ビンテージ」「バッドフォーミー」のように、リピートしたくなるエキセントリックな展開も魅力といえるだろう。基本は王道ポップスでありながら、その絶妙なハズし方と新たなサウンドへのこだわりも聴く人を驚かせ、心躍らせる。そして、藤原の紡ぐ素直でストレートなリリックが歌声とマッチ。韻の踏み方も秀逸でリズミカルな刻み方が、リリックからも感じさせるのだ。
今年4月に放送されたNHK総合「髭男“ヒゲダン”ふるさとへ」では、藤原の過去が明らかに。藤原は、ピアノだけでなくドラムも学んできた。藤原は高校生の頃にスタジオに通い、親子ほど歳が離れたピアノ調律師の恩師たちと、3大ロック・ギタリストと呼ばれるJeff Beckのコピーバンドを組んでドラムを担当していたという。
当時について、藤原は「一緒にやっていたジャズ・フュージョンのコピーも、ぼくはドラムでやってたけど、(恩師に)『このコードどうなってるんですか』って教えてもらったりだとか」と回顧。「自分のなかで、こういうすばらしい音楽もあると知ることができたのがすごく大きかったですよね」としみじみと語った。
その後、20歳の頃に藤原は、地元で活躍する社会人のアマチュアバンドに参加。番組では、当時の映像でEarth,Wind & Fireの「September」をバンド内でキーボードを演奏している様子が流れた。このように、バンドでセッションを重ねていくうちに、さまざまなジャンルの音楽を自分のものにしていったという。
藤原は「音楽の師匠が自分の住んでいる町にいっぱいいて、すごく恵まれた環境でした」と地元について語り、「結構東京に出てから『どこでそんな音楽聴いてたの?』とか『どこでそういうフレーズを?』みたいなことを聞かれることがあるんですけど、それは全部地元で音楽をやっていたという自分のバックボーンがあるから、そういうのができているんじゃないのかなって思っています」と自身の音楽ルーツを明かした。藤原の生み出す“グッドミュージック”たちは、地元が起源となっていたのだ。
ヒゲダンは「山陰の誇り」と県知事も絶賛 鳥取県&島根県が全力応援
そして今年11月「第70回NHK紅白歌合戦」初出場が発表され、その反響は地元でも起きていた。12月21日に放送されたTBS系情報番組「まるっと!サタデー」(土曜あさ5時30分~7時)では、いま島根県にて街のいたるところに、Official髭男dismの紅白出場を祝した看板が設置されていることが放送された。
島根・松江市の市役所では、Official髭男dismへのメッセージボードを掲示しており、松浦正敬市長は「ある意味(松江は)出発点、原点ですのでそれを忘れないで頑張ってほしい」とエールを送った。
また、島根県庁と鳥取県庁の屋外には、紅白出場を祝う大弾幕が装飾されており、鳥取県と島根県が共同で設置しているものだという。さらには、鳥取県庁前にある電光掲示板まで…と、島根と鳥取がまさに“ヒゲダン一色”に。
Official髭男dismをなぜ県をあげて盛り上げているのか。鳥取県の平井伸治知事はこう語った。「山陰のバンドがなんと紅白にいくわけです」とにっこりとし、「今までは、やっぱり都会に対して引け目を感じていたわけなんですけれども、ヒゲダンさんがこうやって紅白に出ることで、そういう引け目もどっかに飛んでいっちゃうわけであります」と胸をはった。
続けて「やっぱり若干ね…紅白に出る歌手もなかなかおられないでしょう。鳥取から出したいなっていう気持ちがこれまでずっとありましたから」と悲願だったことを話し、Official髭男dismの快挙ぶりが伺える。そして「島根県とこうやってコラボしてやることになって“山陰の誇り”だと思っています」と称し、「ぜひ応援していますので、紅白で暴れだしてください」とパフォーマンスに期待していた。
このように彼らは地元を愛し、愛されるバンド。島根で集結した彼らの巡り合わせが“グッドミュージック”の根底にあったのだ。
Official髭男dism、2020年の活動に期待高まる
2020年には、1月スタートのTBS系火曜ドラマ「恋はつづくよどこまでも」(毎週火曜日よる22時~)の主題歌として、新曲「I Love...」が抜擢。また、映画「キャッツ」(2020年1月24日公開)では藤原が歌手のジェイソン・デルーロが演じるキャッツ界イチのワイルドな猫ラム・タム・タガー役の日本語版吹替えキャストとして選出され、声優にも挑戦することが発表された。
さらに、3月からは横浜アリーナ、大阪城ホールなどを含む全国10箇所18公演に及ぶ自身初・最大規模のアリーナツアー「Official髭男dism Tour 2020 – Arena Travelers –」を開催予定している。
いまや若者に限らず、幅広い世代から親しまれているOfficial髭男dism。紅白を経て、彼らは国民的バンドとして日本のJ-POPをますます盛り上げていくことだろう。(modelpress編集部)
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