<弁護士に聞く!離婚>児童手当は元夫の口座に!?お金は取り戻せる?離婚前にできる一手は【第2回】
2026.10.22 11:00
提供:ママスタセレクト
離婚してホッとしたのも束の間、気になるのがお金のこと。元配偶者が何年も家族の生活費を負担してくれなかった。そのうえ、子どものための児童手当まで使い込んでいた……。そんな状態が何年も続いていたら、離婚後に、これまで自分が負担してきた生活費や、元配偶者が受け取った児童手当を返してもらうことはできるのでしょうか。ママからの質問
『婚姻中の数年間、元夫は生活費をほとんど払わず、元夫名義の口座に振り込まれた児童手当も一人で使い切っていました。現在は離婚が成立し、子どもと2人で生活しています。これまで私が負担してきた生活費や、元夫が受け取っていた児童手当相当額を取り戻すことはできますか?』
今回は悩めるママに代わって編集部が、アディーレ法律事務所の3名の弁護士に聞きました。



アドバイスをくれたのは、離婚問題や慰謝料請求を扱い、自身もひとり親としての子育てを経験した正木裕美弁護士。養育費や財産分与などの離婚事件を年間60件以上担当する近藤姫美弁護士。養育費やひとり親を支える制度について幅広く相談に応じる大垣優希弁護士です。
過去の生活費や児童手当、取り戻すことはできる?
── 婚姻当時、元配偶者は生活費を負担せず、児童手当まで使い込み、子どものためには使われていなかったそうです。相当額を、離婚した後から請求することはできますか?
近藤姫美弁護士(以下、近藤弁護士):婚姻期間中、元配偶者と同居していた期間の生活費や児童手当相当額を請求することは、法的にはかなり難しいです。
調停などで任意に返還を求めることはできますが、元配偶者に法的に返還に応じる義務はありません。
過去の分をさかのぼって回収するのは非常にハードルが高いのが現実です。そのため離婚前に、「過去のお金を取り戻す」ことだけにとらわれるのではなく、これからの生活費(婚姻費用)を確保する方向に切り替えるのが現実的です。
離婚前に別居すれば生活費(婚姻費用)を請求することは可能
── では、どのようにしたら生活費を確保できるのでしょうか。
近藤弁護士:早急に別居をすることを選択するべきです。別居をすれば、相手に対して生活費(婚姻費用)の請求ができるようになります。
── すでに別居していたら、別居生活を始めた時点の分まで、さかのぼって婚姻費用を請求できますか?
近藤弁護士:実務上は、婚姻費用の請求時点以降を基準に判断されることが多いものの、具体的な扱いは請求方法や個別の事情によって異なります。たとえば、令和8年4月に別居し、婚姻費用を同年6月に請求した場合、4月分と5月分の生活費を受け取れない可能性があります。
別居したら、できるだけ早く、内容証明郵便で婚姻費用を請求するか、婚姻費用の調停を申し立てて、別居中の生活費を確保することが大切です。
離婚届を出せば、自動的に児童手当の振込先が切り替わる?
── 児童手当についても教えてください。離婚や別居をしたら、児童手当の振込先は、自動的に子どもを育てている親の口座へ変わるのでしょうか?
正木弁護士:離婚届を提出しても、児童手当の受給者や振込先が自動的に変更されるわけではありません。夫婦が同居している場合や、単身赴任などで別居していても生計が同じ場合は、原則として収入の高い方が受給者になります。
一方、離婚した場合や、離婚を前提に別居して生計が別になった場合には、実際に子どもと同居して養育している親が受給者となります。
ただし、受給者を変更するための手続きをしなければ、それまでの受給者に振り込まれ続けてしまうことがあります。
子どもを育てている側が児童手当を受け取るには?
── 実際に子どもを育てている側へ児童手当の受給先を変更したい場合、何をすればよいですか?
大垣弁護士:児童手当を受給するためには、受給者を変更するための認定請求を行う必要があります。離婚後の場合は、
1.元配偶者と住民票上の世帯が別であること
2.子どもと実際の養育者が同一世帯であること
3.離婚の事実を証明する書類
などが求められます。
児童手当の支給開始時期や遡及の可否は、申請時期や自治体の取扱いによって異なるため、早めに自治体へ確認してください。
申請が遅れると、支給を受けられない月が生じる可能性もあるので、離婚や別居が決まった段階で、できるだけ早く自治体の児童手当担当窓口へ相談することをおすすめします。
離婚前の申請手続きでやっておくべきこと
── まだ離婚が成立していない場合でも、変更できることはありますか?
近藤弁護士:離婚前でも、子どもを連れて別居し、離婚調停を申し立てている場合には、裁判所から「係属証明書」を取得して役所へ提出することで、子どもを養育している側へ児童手当の受給先を変更できるケースがあります。
弁護士が入っている場合には、離婚について協議していることを弁護士が文書にまとめ、役所へ提出し、変更が認められたケースもあります。弁護士を依頼していない場合でも、住民票を移して世帯を分けたうえで、役所に事情を説明し、変更を求める方法があります。
ただし、最終的には自治体の判断になる部分があります。求められた書類を提出しながら、役所と相談していくことが必要です。
「過去のお金」より、まず「これからのお金」を守る
婚姻当時、長い間生活費をもらえなかったり、子どものための児童手当を自分が受け取れなかったりすれば、「これまでのお金を返してほしい」と思うのは当然でしょう。しかし、近藤弁護士のお話にもあったように、婚姻期間中の過去の生活費や児童手当相当額を、あとから法的に回収することは簡単ではなさそうです。
一方で、別居すれば、婚姻費用を請求したり、児童手当の受給先を子どもを育てている側へ変更したりすることは可能です。
今からやっておきたいこと
・相手から生活費の支払いがない場合、早急に別居を検討する
・別居後を想定して、早めに婚姻費用について相談する
・児童手当の受給者や振込先が誰になっているか確認する
・別居や離婚が決まったら、児童手当の変更に必要な手続きを自治体へ確認する
これまでのお金を取り戻すことに時間とエネルギーを費やすのではなく、これから受け取れるお金を確保することが、自分と子どもの生活を守る一歩になります。
※児童手当の手続きや必要書類、判断は自治体や個別の状況によって異なります。実際に手続きを進める際は、お住まいの自治体や専門家へご確認ください。
取材、文・長瀬由利子 編集・Natsu イラスト・猫田カヨ
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