「虎に翼」松山ケンイチ、最後に記者へ語った桂場に込めた想い「僕は法曹界の人間でもないただの田舎のおじさんなんですが…」ラストの展開に言及【インタビューVol.3】
現在放送中のNHK連続テレビ小説「虎に翼」(NHK総合・毎週月~土あさ8時~ほか)で桂場等一郎を演じている俳優の松山ケンイチ(39)にインタビュー。彼が桂場に込めた想い、同作から得たこととは。【Vol.3】
伊藤沙莉主演「虎に翼」
第110作目の連続テレビ小説となる本作は、日本初の女性弁護士である三淵嘉子(みぶち・よしこ)さんをモデルに描くリーガルエンターテインメント。主人公の佐田寅子(さだ・ともこ/通称・トラコ)を伊藤沙莉が演じる。桂場は司法の独立を重んじる気鋭の裁判官。堅物で腹の内を決して見せない「法の世界」の手ごわい先輩だが、実は甘党という一面も。戦後に再会した寅子の裁判官への道を手助けし、最高裁人事課長、東京地方裁判所所長を経て、最高裁長官となる。
桂場を変えた航一の鼻血・寅子の言葉
― 尊属殺の裁判前に鼻血を出して訴える航一や寅子と対峙したことで、桂場の心境に大きな変化がありますが、このシーンを演じられていかがでしたか?松山:星航一(岡田将生)は、表面上はかなり桂場に寄り添っているようなキャラクターではありますが、それでも航一自身の考えや意見を飲み込んでいる状況は結構あったんですよね。それは演技を見ていても感じることですし、桂場自身も気付いていることではあるんですが、航一にもある意味押し付けているというか、法解釈の論理をまとめるのも“こっち側”からの意見しかないというか。公害問題のことも結構出てきますが、その苦しんでいる方たちを救うために現行の法改正ではなくて法解釈で判決をして救おうとしている。
本当は航一の意見も入れたかったかもしれないし、本来はそうした方がいいけど時間がなくて今すぐ救済するべきだ、という考えの中で、桂場はどんどんどんどん様々なことを変えていくんですが、最後の最後で航一がどかっと言うときに鼻血を出す。これはすごく面白いなと思ったんですよね。
もし鼻血を出さなかったら、桂場っておそらく航一も切り捨てるぐらいの強さを持ち続けていたと思いますが、航一が鼻血を出したことで一旦その熱が冷める。刀を出してそのままバサっと行く寸前に鼻血を出されちゃったら、一瞬止まって素に戻ってしまうというか、「あ、とりあえず血止めないと」というような考えがあったんです。結果それによって刀を振り下ろさなかったというのがすごいなと思っています。
その後にトラちゃんが出てきて「自分の中に色々な考えがあって、それも全て自分自身だ」というようなセリフがありました。桂場の中にも、公平性や「だけども穂高先生の思いをなんとか完遂させたい」という気持ちや、最高裁長官の任期がもう差し迫っていることなど、色々な焦りや、やりたいこと、なんとかしようと思っていたことがある。でも彼はどんどん自分の意見すらも切り捨てて、最終的には司法の独立をするための動きをしていたわけですが、「その切り捨てたものも全て自分自身である」というのをトラちゃんの言葉から感じたんですよね。
尊属殺のことは「時期尚早だ」と桂場は言っていたんですが、「今、目の前に変えることができるチャンスがある」というのを、改めて航一やトラちゃんに教えてもらった。かつ、自分の中で大事に思っていた部分は別に消す必要もないということ、色々な意見が自分の中であっていいんじゃないのかというような、ある意味、桂場自身の生き方やかつての考えみたいなものも、すごく肯定してもらえたというか。今の桂場はもう独走しちゃっているので、肯定してくれる人がいない。なのでそういうところがすごく響いて、尊属殺規定の違憲判決に繋がっていったと思います。
松山ケンイチ、桂場に込めた理想明かす
― 最後に最終週の見どころと、楽しみにされている視聴者の皆様へメッセージをお願いします。松山:桂場という役を長い間やらせていただいているので、僕の中でもすごく大切なキャラクターだと思っています。僕は結構役に対して自分の理想みたいなものを込めちゃうところがあって。僕は法曹界の人間でもないただの田舎のおじさんなんですが、「法・人権・権力に対して戦う人はこうであってほしい」という気持ちをすごく込めちゃっていて、それがこのドラマにもかなり作用されているような気がします。
やっぱり人ってどうしても地球全体や日本の全国民を見られるわけではないですし、本当に色々な苦しみや喜びがあって、地域によって文化も全然違いますし、そういう中で日本全国一律の法律を作るってものすごく難しいことだと思うんですよね。 それで1人の人間が最高裁長官になってジャッジをしていく。本当に難しいことだなと僕は思いますし、そのジャッジが正しいか、間違っているのかという問題はおそらくすごくたくさんあるんじゃないかなと。しかも時代によってその正解がまたどんどん変わってくるので、「人はみな、間違う」というのは当たり前で、だけどその間違いを「間違っているんじゃないか」と誰かが主張することでそこから議論が始まっていく。たくさんの登場人物を通してそういうことを視聴者の皆様に伝えているのかなと、それも一つのテーマなのではないかと思っていました。
認めるということも本当に大切なことだと思いますし、認めてからどう対峙していくのか、付き合っていくのかということが、ある意味人権を大切にすることなのではないかなと。それは僕自身がこのドラマから学んだことでもあります。
最後の最後まで本当に見どころがあって、尊属殺についてもそうですし、桂場が人をどんどん切っていくような描写もあります。重い話の中でも、現場ではすごく繊細に演じている部分もコミカルな描写もありますので、それが織り交ざった人間讃歌、人に対しての優しさみたいなものを感じられるドラマになっていると思います。ぜひ最後まで見届けていただけると嬉しいです。
― 貴重なお話をありがとうございました。
(modelpress編集部)
松山ケンイチ プロフィール
1985年3月5日生まれ、青森県出身。2001年、ホリプロ男性オーディション『New Style Audition』グランプリ受賞を経てモデルデビュー。2002年、ドラマ「ごくせん」(日本テレビ系)で俳優デビュー。2012年のNHK大河ドラマ「平清盛」で主演を務める。近年の主な出演作に、NHK大河ドラマ「どうする家康」(2023)、ドラマ「100万回言えばよかった」(TBS系/2023)「お別れホスピタル」(NHK/2024)、映画「BLUE/ブルー」(2021)「ノイズ」(2022)「大河への道」(2022)「川っぺりムコリッタ」(2022)「ロストケア」(2023)など。主演映画「聖☆おにいさん THE MOVIE~ホーリーメンVS悪魔軍団~」が12月20日に公開予定。もっと詳しくみる
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