中郡暖菜氏 (提供写真)

中郡暖菜氏「LARME」復刊のため新会社設立 編集長復帰にかける思い「“普通”じゃない」を大事に<インタビュー>

2020.06.05 13:00

今年3月発売号をもって休刊していたファッション誌『LARME』の復刊が決定。2012年に創刊編集長として同誌を立ち上げた中郡暖菜氏が、これまでの出版元・株式会社徳間書店から事業買収し、株式会社LARMEの代表取締役として同誌を運営していく。モデルプレスでは、中郡氏に復刊や編集長復帰の経緯を聞いた。

  

LARME復刊 創刊者・中郡暖菜氏が新会社設立で復帰

中郡氏が「甘くて、かわいい 女の子のファッション絵本。」をコンセプトに2012年9月に創刊した『LARME』。中郡氏は雑誌『小悪魔ageha』の編集者を経て26歳で創刊編集長に就任。当時“LARME系女子”という1つのトレンドを創出し、約1年間で発行部数23万部の人気雑誌に成長させた。

2016年に『LARME』編集長を退任し、2017年には雑誌『bis』を約11年ぶりに復刊・新創刊。『LARME』『bis』ともに独自のセンスを打ち出した誌面で熱心な読者を生み出し、10代〜20代の女性から絶大な支持を得てきた。

『LARME』復刊に際し、中郡氏が新たに株式会社LARMEを設立。今後は徳間書店ではなく株式会社LARMEが同誌をが発行し、全事業を行っていく。復刊に伴い、『LARME』はロゴもリニューアル。今後YouTube、D2Cの展開も予定しているという。

中郡暖菜インタビュー 復刊の経緯・今後の展開ビジョンは

『LARME』過去号表紙 (提供写真)
― スタートアップ企業を設立し『LARME』復刊に至るまでの経緯をお聞かせください。

中郡:今年の1月に『LARME』編集部から連絡があり、『LARME』の急な休刊が決まってしまったことと、どうにかしてもらえないか?という相談を受けました。

実は私が編集長を辞めてから約3年の間に、『LARME』の編集長は3回変わっています。全員元々は私が編集長時代に編集部員として働いてくれていた方達で、これまでも『LARME』に関しての相談は受けていたので、一番に連絡をくれたのかと思います。

そこからは編集部やスタッフと相談しながら、どうにか『LARME』が存続できるように様々な企業や投資家に説明をしておりましたが、そこで「中郡さんがやるなら協力するよ」と言っていただく機会があり、誰かに頼むのではなく私自身が責任を持って『LARME』を運営していく必要があるのではないのかという結論に至り、会社を創業し代表取締役となる決意をしました。

事業計画書も損益計算書も作ったことがないので、沢山の方々に協力していただきながらプレゼンを重ねて、時には九州までプレゼンをしに行きました。目標としていた金額の資金調達を達成することが出来たので、徳間書店に対して正式に事業買収をさせていただきました。9月から、また雑誌の発行を行なっていく予定です。

― 新たな『LARME』のコンセプトやターゲット、復刊前と比べて変わった点、受け継いでいる点についてお聞かせください。

中郡:『LARME』はフランス語で“涙”を意味します。この本が悲しい涙の代わりになり、一瞬でも幸せな気持ちを届けられる存在になるようにという願いを込めて、2012年に名付けました。『LARME』の普遍的な部分ですので、コンセプトに変更はありません。ターゲットも10代20代が中心で、変更は考えておりませんが、今っぽさは強く打ち出していきたいと思っています。

― 新『LARME』を彩るモデルの方々はどのようなラインナップを予定されていますでしょうか。

中郡:これまでレギュラーモデルを務めて下さった方々とも現在お話を進めているところですが、新しく『LARME』の顔となってくださるような女の子にも今からどんどんお声をかけていく予定です。

― 『bis』退任時には「webとの協業が難しい」と雑誌運営の課題を挙げられていましたが、その点の解決策はどのようにお考えでしょうか。

中郡:いわゆる女性向けwebと言われるキュレーションメディアを運営することは編集部の負担が大きい割にマネタイズが難しいので、そういった展開は考えておりません。それよりも、SNSを中心に既存のプラットフォームを使った形でのweb展開や、D2Cを主軸にしていこうと思っています。

― D2Cでは何をメインに展開される予定でしょうか。

中郡:まずはお洋服からスタートしますが、今後はコスメやスキンケアなど幅広く展開したいと思っています。雑誌があるからこそ出来ることがあるなということが、今時点でも感じられており、それを突き詰めていくと既存のD2Cビジネスの一歩先を作れるのではないかと思っています。

大事にすべきことは、“普通”じゃないというところ――『LARME』にかける思い

『LARME』過去号表紙 (提供写真)
― 新『LARME』で目指すもの、読者の皆様へのメッセージをお願いします。

中郡:『LARME』が大事にすべきことは、“普通”じゃないというところです。社会のルールや決められたシステムにうまく馴染めない人、息苦しく感じてしまう人、そんな方々の味方であり続けたいと思っています。

私もずっと“普通”になれなくて、高校は1ヶ月で中退していますし、教室に入れず毎日図書室に通っていました。本はそんな自分にたくさんのことを教えてくれました。

みんなが納得するような当たり前の常識は、本を作ってまで伝える必要がありません。ここに、常識や普通、一般的といったような大きな高い壁とそれに相反する存在のすぐ割れてしまう卵があったとしたら、私はいつでも卵の側に立ちます。本とは、卵の側に立たないと意味がないと思うからです。他人を蹴落として自分が社会的強者になることを是とする風潮に興味はありません。

どこかの道端の片隅で悩んだり、傷ついて悲しんでいる女の子に、「もうすぐ『LARME』の発売日だからそれまでは何とか頑張ってみようかな」と思ってもらえるような、そんな本が作りたいです。

― ありがとうございました。

(modelpress編集部)

「LARME」新ロゴ (提供写真)

中郡暖菜(なかごおり・はるな)プロフィール

LARME Inc. 代表取締役/編集長

1986年千葉県出身。国立音楽大学卒業。学生時代より編集者としての経験を積む。2012年、徳間書店より『LARME』を立ち上げ、同社史上最年少編集長に就任。創刊1年で 23万部を発行した。2016年、約年間務めた編集長を退任。 2017年、光文社より『bis』を復刊し編集長を務めた。2020年『株式会社LARME』を創業。徳間書店より『LARME』の事業譲渡を受け、『株式会社LARME』代表取締役兼編集長に就任。
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