草なぎ剛(C)2019「まく子」製作委員会/西加奈子(福音館書店)

草なぎ剛、色気漂う“ダメ男”役は「自分のダメな部分を押し出していった」山崎光&新音との共演で感じた思い・撮影秘話を語る<まく子>

2019.03.13 15:00

2017年9月「新しい地図」として始動し、俳優として活躍を広げる草なぎ剛(44)。第152回直木賞受賞後の第一作目、思春期の成長物語として高い評価を受けた西加奈子著の同名小説が原作である映画「まく子」(3月15日公開)では、14歳(※現15歳)で初主演を務めた山崎光(※「崎」は正式には「たつさき」)演じるサトシの父親・光一役で、“ダメ男”に挑戦。インタビューでは、役柄や共演者らとの撮影秘話まで、たっぷりと語ってくれた。

  

草なぎ剛、“ダメ男”役は「自分のダメな部分を押し出していった」

新音(C)2019「まく子」製作委員会/西加奈子(福音館書店)
― 映画『まく子』を見て、どう思われましたか?

草なぎ:誰しもが通って来ている道だとは思いますが、サトシとコズエの“大人でもない子供でもない”時期というか状態というか、ちょっと触れたら壊れてしまいそうな、繊細な心の揺れ動く感じにグッときました。その時にしかない彼と彼女の輝きが、スクリーンの中からバーンと溢れ出てきていて、監督が、そのすごい所を掬い取った、なかなか見応えのある映画だな、と思います。

この作品は、むしろ大人が観るとグッときますよね。終盤、意外な展開もあり、どんなジャンルにも括れないような作品になっていて、西加奈子さんの原作の持つ力がとても表れているんだろうな、とも思います。余韻が残る映画なので、終わってからも「すごく良かったな~」と暫く感じていました。

(C)2019「まく子」製作委員会/西加奈子(福音館書店)
― 草なぎさんは、ご自身が演じられた主人公の父親・光一役を、どんな人物だと考えてお芝居をされましたか?

草なぎ:「ダメな父ちゃんだなぁ」と思いながら演じました。だって、浮気相手の女の人が息子に会っちゃって、泣かれたりして…。「うわ、息子にそこまで迷惑かけたらダメじゃん」「どうしようもないな」と(笑)。痛々しい感じもありつつ、リアルだとも思います。監督からは、現場で特に何も言われなかったんですよ。多分、監督と僕の考える光一像が、上手い具合に波長が合ったんじゃないかな。僕自身、いい感じに演じることができたな。

― 煙草をくわえているシーンをはじめ、ダメ男ゆえの色気が漂っていて、素晴らしいと思いました。

草なぎ:え、色気出ていました?出ちゃうんだよね~、色気(笑)!僕自身もだらしないというか、ダメなところがあるんですよ。自分のダメな部分を押し出していった役とも言えますね。でもダメ男ゆえに少しコミカルになったり、一周回って大人っぽく見えたりするなど、ダメって結構、いいものですよね。次は、ぜひ“草なぎ剛主演のダメ男映画”を企画していただけたら嬉しいですね!

須藤理彩、草なぎ剛(C)2019「まく子」製作委員会/西加奈子(福音館書店)

草なぎ剛、撮影秘話を明かす

山崎光、草なぎ剛 (C)2019「まく子」製作委員会/西加奈子(福音館書店)
― 洗濯機の前のシーンはとても印象深いシーンでした。

草なぎ:父と息子が少し近づけたシーンでもありますよね。父ちゃんは父ちゃんで、息子に対して色々と感じたり考えたりしていたこともあっただろうし…。ただ実は、現場では笑いそうになっちゃった(笑)。2人であんな恰好して、「何やってるんだよ(笑)」と。本人たちは大真面目というのが、面白い。だから僕らも、真剣にやればやるほど面白いだろう、と思いました。本当に色んな気持ちや感情が混じっている、すごくいいシーンになったと僕も思います。サービスショットでもある、あの構図もいいですよね!

― 女性の鶴岡監督ならではの感性も、何か感じられましたか?

草なぎ:コズエとサトシが出会うシーンで、2人がいきなり顔を近づけた時、大人が見ても、子ども2人の姿に思わずドキドキしちゃった。あの距離感の詰め方なども、女性特有の感性なのかなと思いましたね。

山崎光、新音 (C)2019「まく子」製作委員会/西加奈子(福音館書店)

草なぎ剛、山崎光&新音との共演で感じた思い

新音、山崎光 (C)2019「まく子」製作委員会/西加奈子(福音館書店)
― サトシ役の山崎さん、コズエ役の新音さんとの共演の感想を教えてください。

草なぎ:山崎くんはメチャクチャ真面目だし、お芝居が本当にピュア。小さい頃からお芝居をされているそうですが、今回は主役なので、相当大変だったろうし、プレッシャーもあったと思います。でも、リハーサルの時からすごく熱心で、お芝居がどんどん変わっていくんですよ!どんどん自然になってきて、僕も結構、山崎くんに引っ張られました。

それと、とにかくこの役をできることを喜んでいて、幸せを感じながら演じている感じがしました。シーンや空気をちゃんと作って、本当に立派だったなぁ。新音さんも、とにかく2人のシーンがどれも最高でした。僕も勉強になったし、受けるものがたくさんありましたね。2人とも存在感があるし、これからどんどん色んな役をやっていってほしいです。

新音(C)2019「まく子」製作委員会/西加奈子(福音館書店)
― コズエは小さな町に何をまいていったのでしょうか?

草なぎ:サトシの家族で言えば、上手い具合にコズエのお陰で壊れかけていた家族が再生し、これからまた新しい家族を築き上げていけるんじゃないかな。基本的には、町のみんなの晴れ晴れとした表情から、生きる元気の素というか、次の日から元気に暮らしていけるエネルギーの源みたいなものをまいていってくれたんじゃないかな、と思いました。

― ありがとうございました。

(modelpress編集部)

草なぎ剛(くさなぎ・つよし)プロフィール

1974年7月9日生まれ。1991年CDデビュー。主な出演作は、『黄泉がえり』(03/塩田明彦監督)、『日本沈没』(06/樋口真嗣監督)、『あなたへ』(12/降旗康男監督)、またテレビドラマは「僕と彼女と彼女の生きる道」(04/CX)、「任侠ヘルパー」(09/CX)など、多数作品に出演を果たす。2017年9月にはオフィシャルファンサイト「新しい地図」を立ち上げ、その後自身主演の『光へ、航る』(太田光監督)を収めたオムニバス映画『クソ野郎と美しき世界』(17)は2週間限定公開の中、28万人以上を動員し、大ヒット。その後、フェデリコ・フェリニー二の映画代表作の舞台版・音楽劇「道」(演出:デヴィット・ルヴォー)にて主演を務める。

西加奈子原作 映画「まく子」

山崎光、新音 (C)2019「まく子」製作委員会/西加奈子(福音館書店)
小学5年生のサトシが、不思議な魅力をもつ美少女・転入生のコズエと出会い、彼女に秘められた大きな秘密を知ることで、今まで見てきた世界-日常-が優しく塗りかえられていき、ほんの少しだけ大人へと近づいていく――。誰しも成長の中で経験してきた、思春期ならではの葛藤や初恋、親と子の確執と再生を描いた物語。

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