北村匠海「あんぱん」(C)NHK

朝ドラ「あんぱん」北村匠海、自問自答の日々で創る“柳井嵩像” 制作統括が語る俳優業・音楽活動を両立する姿も【インタビューVol.4】

2025.04.12 08:15

NHK連続テレビ小説「あんぱん」(毎週月~土あさ8時~ほか)に出演する俳優の北村匠海(きたむら・たくみ/27)に、モデルプレスらがインタビュー。実在の人物を演じる楽しさや難しさ、そして朝ドラの思い出を語ってもらった。<Vol.4>

今田美桜ヒロイン連続テレビ小説「あんぱん」

北村匠海「あんぱん」(C)NHK
北村匠海「あんぱん」(C)NHK
今作は、“アンパンマン”を生み出したやなせたかしと妻・暢の夫婦をモデルに、生きる意味も失っていた苦悩の日々と、それでも夢を忘れなかった2人が、“逆転しない正義”を体現した「アンパンマン」にたどり着くまでを描く愛と勇気の物語。

ヒロイン・朝田のぶを今田美桜、のぶの夫・柳井嵩を北村が務める。

北村匠海が見たやなせたかしの「ゴール」

北村匠海「あんぱん」(C)NHK
北村匠海「あんぱん」(C)NHK
― 以前、やなせさんの本を読んだとおっしゃっていましたが、具体的に何を読んだのでしょうか?

北村:制作統括の倉崎(憲)さんと初めてお会いしたときにたくさんいただいたりもしたので、いっぱい読んでいます。でも僕が一番見ていたのは、やなせさんのインタビュー動画でした。思想や哲学、戦争に対する思い、「アンパンマン」についてなどお話されていて、食い入るように見続けました。やはり、文字で見るよりも温度を感じますし、耳で聞く声や目で見る表情から得られる情報は僕の助けになりました。「逆転しない正義」への思いをその動画から学んでいくうちに、自分の中でいろいろなことが腑に落ちて「大丈夫かもしれない」と思えるようになりました。

― やなせさんの話し方や表情を見て、どのような部分を大切にしたいと思われましたか?

北村:僕らがよく知っているのは「アンパンマン」が世の中に知れ渡り、メディアに出られているやなせさんで、年齢も人生経験も重ねた姿だと思います。そのやなせさんはユーモアもあるし、物腰も柔らかくて、ある意味「ゴールを見た」というイメージでした。これを10代からやってしまうのは違って、最終的にこの姿に至るまでの人生経験を柳井嵩として歩まなければならないという道筋が見えたという感じです。僕自身、学生時代にこんなに話せたわけではないし、もちろん声も姿勢も歩幅も違ったように、やなせたかしさんをモデルにした嵩も、きっとそう。その細かい微調整はゴールが見えたおかげで鮮明になりました。今は、その達観した姿に至るまでの大きなきっかけとなった戦争をしっかりと経験しなければいけないという思いで演じています。

北村匠海、柳井嵩役は“自問自答の日々”

中沢元紀、北村匠海「あんぱん」(C)NHK
中沢元紀、北村匠海「あんぱん」(C)NHK
― 実在する人物を演じるのは明石家さんまさん以来とのことですが、実在の人物を演じる上で大切にしている心構えがあれば教えてください。

北村:役者としてアプローチを変えることはなく、基本的にどの役も向き合い方は同じなのですが、実在していた偉大な方をモデルにしているからこそ、情報を自分の中に蓄積できる良さというのはあります。ただ、先程も言った通り、僕らが知っているやなせさんと、幼少期から「アンパンマン」を描くに至るまでのプロセスには、イメージとズレてしまう瞬間があるかもしれない。その道筋をも自分がスケッチしていかなければいけない仕事なので、常に「これで合っているのか?」「正解なのか?」「嵩なら?」「やなせさんなら?」と自問自答しながら作っている日々です。逆に言うと、それが楽しさでもあるということも感じています。やなせさんに似ているからOKではなく、やなせたかしさんをモデルにした嵩がこの表情になれたから良かったなと思える瞬間もたくさんあったので、普段の役とは違う楽しさがあり、充実しています。

― 逆に、演じていてすごく難しいと感じた部分はありますか?

北村:子ども時代の嵩は内気で、声のトーンや人との目線の合わせ方が表に出ない一方、ゴール地点のやなせさんはユーモアがあって、ひょうきんで、ちゃんと人の目を見て喋っていて、それでいてファッショナブルで、優しさと愛を持っている人。だから、ここに至るまでのこの暗さは正解なのか、という難しさがあり、「ここでこうなっとかなきゃいけないよね」と点を打ちながらやっている感じです。それが絶妙に掛け違っていくと、1年の撮影の中でどんどん外れていってしまうので、慎重にやっています。

北村匠海の思い出深い朝ドラ

中沢元紀、北村匠海「あんぱん」(C)NHK
中沢元紀、北村匠海「あんぱん」(C)NHK
― 北村さんにとって思い出深い朝ドラを教えてください。

北村:思い出と言ったら、やはり「なつぞら」(2019年度前期)のオーディションですかね。僕は当時19、20歳で「君膵(君の膵臓をたべたい)」(2017)の頃。馬の世話をするシーンをやったのですが、監督さんが自由にやらせてくださって途中からアドリブ合戦みたいになってすごく楽しかったです。

― 貴重なお話ありがとうございました。

【こぼれ話】制作統括・倉崎憲氏が語る北村匠海の姿

北村匠海「あんぱん」(C)NHK
北村匠海「あんぱん」(C)NHK
北村の取材前、倉崎氏が記者の質問に回答。北村を起用した理由については「あれだけ活躍しているのに新鮮味がずっとある」「NHKドラマ自体にほとんど出たことがない」と説明した。オファーを決めた大きなきっかけはDISH//のライブMCで北村が話した言葉だといい、「数千人の客の前で語りかける北村さん自身の死生観が非常に胸にくるものがあって。『人はいつ死ぬかわからないし、僕だって今日帰り交通事故で死ぬかもしれない。だから今を生きるしかないんです』というようなことを心からお客さんに、かつ彼自身にも問いかけている魂の言葉を聞いたときに、僕自身すごく心を揺さぶられて」と回顧。「やなせさんの言葉や詩、漫画など、人生を通じて伝えたかったこととリンクした気がして。嵩が北村さんだったら、全てのピースがはまったな、という感じ」と明かした。

俳優業と音楽活動を並行して行う北村の姿を見た倉崎氏は「ご自身でもおっしゃっていますが、役者だけでも音楽だけでも成り立っていない」「今も朝ドラ『あんぱん』の撮影をしながら精力的にライブ活動も入れていらっしゃるので、どちらかが欠けると逆にダメというか、両方あるからこそ走り続けていらっしゃるのだなと、近くで見ていてとても感じますね」と語った。

北村匠海「あんぱん」(C)NHK
北村匠海「あんぱん」(C)NHK
さらに、戦争シーンでのストイックな役作りには「映像を通しても本当に痩せて見える」と絶賛。「『戦争中は空腹が1番辛かった』というやなせさんの手記通り、まさしくそれを体現したようなシーンを撮影する日」だったといい、「戦争パート、空腹という体験は『アンパンマン』にも繋がっていくわけですから、説得力を持って視聴者のみなさんに見てもらうために、北村さん自身が体を追い込んでいた」と裏側を告白した。(modelpress編集部)

北村匠海(きたむら・たくみ)プロフィール

1997年11月3日生まれ、東京都出身。映画「君の膵臓をたべたい」(2017)で第41回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。近年はドラマ「教場」シリーズ(フジテレビ系/2021、2023)、「にじいろカルテ」(テレビ朝日系/2021)、「アンチヒーロー」(TBS系/2023)、「幽☆遊☆白書」(Netflix/2023)、映画「東京リベンジャーズ」シリーズ、「明け方の若者たち」(2021)、「法廷遊戯」(2023)、「悪い夏」(2025)など数々の話題作に出演し、2025年2月には初監督作品「世界征服やめた」が公開された。
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    2025年03月31日(月)スタート

    毎週月~土08:00 / NHK総合ほか

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