稲垣吾郎「新しい地図」を“グループ”と呼ばない理由―心の中にある“かけがえのないもの”の存在
2022.11.02 07:00
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稲垣吾郎(48)が、モデルプレスのインタビューに応じた。主演を務める最新映画『窓辺にて』(11月4日公開)は、『愛がなんだ』の今泉力哉監督完全オリジナル脚本で描く大人の恋愛物語。本作に込めた思いを語る中で見えた、稲垣の仕事観・プライベート・心の中にある大切なものとは――。
本作は、創作と恋愛を軸に描く、ちょっぴり可笑しい大人のラブストーリー。稲垣が演じるのは、妻・紗衣(中村ゆり)の浮気に気づきつつも何も感じない自分にショックを受けているフリーライターの市川茂巳。ある日、文学賞の取材で高校生作家・久保留亜(玉城ティナ)と出会い、自分に正直な彼女と交流するうちに、何事にも鈍くなっていた感覚を取り戻していく。
稲垣:作品の中で「手放す」ということが描かれているんですが、ものを手放す勇気は必要だと思いますし、僕もそう生きていきたいなと最近思うんです。どちらかというと手放すのが苦手なんですけど、蓄えることに満足してしまうと、肝心なものが何も残っていなかったりすることもあるなと。
それから、主人公が、妻の浮気を知っても何も感じないことにショックを受けたという感情。今泉さんが30代のときふと思った感情らしいんですけど、ここは僕もわからなくないなと。ショックなときほど表面に出にくいところが自分にもあるんです。感情を動かす仕事なので、日頃は意外とさらっとしていたいタイプ。しかもそれを人に見られるのはちょっと照れくささもありますし、ついカッコつけてしまうことってありますよね。
ひねくれているのかもしれないですけど、世の中が盛り上がっていることに対してちょっと冷めたように見てしまう、そんなメッセージを作品ではコミカルに、軽やかに描いているので、役に共感した部分は多かったです。すごく難しい役だと思いますが、僕自身は難しく感じずに向き合えたように感じます。
監督が僕を見て当て書きしてくださったので、元々監督の中にある一つの思いや感情の部分で、僕にシンパシーを感じてくれたんでしょうかね。なので撮影はすごく良い時間でした。
― 稲垣さんは「手放す」のが苦手なタイプなんですね。
稲垣:物理的なものでいうと苦手ですね。身軽にいたいと思いつつ、物が多いです。最近植物にハマっているんですけど、増えすぎちゃって冬の間どうしようかなと。好きという情熱で増やしちゃうんですよね。
それから、単純に部屋の中は整理したいかな。自分の歴史とか、芸能生活でやってきた作品や資料、CD、雑誌が膨大にあって。小説だったり洋服も多いですし、少しずつ身軽にしていきたいですね。
稲垣:お芝居ってその作品のスケール感や温度に合わることが大切だと思うんです。今泉組は今泉組の芝居の仕方があって、大河ドラマには大河ドラマの、舞台には舞台の芝居がある。ナチュラルな芝居を求められる今泉組のスタイルに自分を持っていく作業が楽しかったですね。
演技の型みたいなものが嫌いな方なので、ありがちな形ではなくナチュラルに。ドキュメンタリーみたいな見え方で、それはすごく面白いです。
― 玉城さんや中村さんなど共演のみなさんとの空気はいかがでしたか?
稲垣:お芝居は、相手との呼吸で生まれてくるものだと思います。僕は受け身の役だったので楽しかったですよ。
特に中村ゆりさんとは2人での長いシーンがあるんですけど、そこはワンカットの長回しで。生きたワンカットというのは俳優としてなかなか経験できないことなので、やりがいがありますし、舞台のようでした。当初はワンカットの予定はなかったんですけど、リハーサルでやってみて面白かったので、8分くらいのはずが、12分くらいのワンカットになって。それが本当に新鮮で、まさにドキュメンタリーのようでした。
実際に試写を観たとき、どこか冷静に観てしまう自分がいるんですが、今回は本当に作品に惹き込まれて、緊張感を持ちながら、映画としてそのシーンを観ることができたんです。そんな体験はあまりなかったので、自画自賛になってしまいますけど、すごいなと。すごい作品だなと思いました。
稲垣:僕はまだそこまで到達していない感じがしますね。究極のものを書いてしまったら、作家さんはもう書かなくなっちゃうのかな…わからないですね、答えが。でもやっぱり、続けていくことは大切だなって思います。特にこの仕事は、やり続けることに意味がある。ファンの方だったり、受け取り手とともに成り立っているものですから。
ただ、茂巳さんはそれよりも上の境地にいっているんでしょうね。僕はまだそこまでのものを生み出したことがないので、やりきったと考えたことはないかな。あ、でも例えば、また“これからアイドルグループを組むのでこれからオーディションをします”って言われたらやらないかもしれない(笑)。それはちょっと変な話ですけどね(笑)。これまでの形が1番の形だったなっていうのが僕の中にあるから。“新しい地図”のことも、僕はあんまり“グループ”とは言っていないんですよね。今一緒にやっている“仲間”であって、それぞれが個人で頑張っているので。心の中ではやっぱりあれが一番大きなもので、かけがえのないものだったから。そういう風に考えると茂巳さんの気持ちもちょっとわからなくもないかもしれない。ちょっと強引ですけどね。
― ありがとうございました。
(modelpress編集部)
出演:稲垣吾郎 中村ゆり 玉城ティナ 若葉竜也 志田未来 倉 悠貴 穂志もえか 佐々木詩音 / 斉藤陽一郎 松金よね子
音楽:池永正二(あらかじめ決められた恋人たちへ)
主題歌:スカート「窓辺にて」
監督・脚本:今泉力哉
<ストーリー>
フリーライターの市川茂巳(稲垣吾郎)は、編集者である妻・紗衣が担当している売れっ子小説家と浮気しているのを知っている。しかし、それを妻には言えずにいた。また、浮気を知った時に自分の中に芽生えたある感情についても悩んでいた。ある日、とある文学賞の授賞式で出会った高校生作家・久保留亜の受賞作「ラ・フランス」の内容に惹かれた市川は、久保にその小説にはモデルがいるのかと尋ねる。いるのであれば会わせてほしい、と…。
稲垣吾郎“手放す”ことと向き合う―自宅にある手放せないものは
― 稲垣さんは、主人公に共感する部分があったそうですね。どんなセリフや場面でそう感じたのですか?稲垣:作品の中で「手放す」ということが描かれているんですが、ものを手放す勇気は必要だと思いますし、僕もそう生きていきたいなと最近思うんです。どちらかというと手放すのが苦手なんですけど、蓄えることに満足してしまうと、肝心なものが何も残っていなかったりすることもあるなと。
それから、主人公が、妻の浮気を知っても何も感じないことにショックを受けたという感情。今泉さんが30代のときふと思った感情らしいんですけど、ここは僕もわからなくないなと。ショックなときほど表面に出にくいところが自分にもあるんです。感情を動かす仕事なので、日頃は意外とさらっとしていたいタイプ。しかもそれを人に見られるのはちょっと照れくささもありますし、ついカッコつけてしまうことってありますよね。
ひねくれているのかもしれないですけど、世の中が盛り上がっていることに対してちょっと冷めたように見てしまう、そんなメッセージを作品ではコミカルに、軽やかに描いているので、役に共感した部分は多かったです。すごく難しい役だと思いますが、僕自身は難しく感じずに向き合えたように感じます。
監督が僕を見て当て書きしてくださったので、元々監督の中にある一つの思いや感情の部分で、僕にシンパシーを感じてくれたんでしょうかね。なので撮影はすごく良い時間でした。
― 稲垣さんは「手放す」のが苦手なタイプなんですね。
稲垣:物理的なものでいうと苦手ですね。身軽にいたいと思いつつ、物が多いです。最近植物にハマっているんですけど、増えすぎちゃって冬の間どうしようかなと。好きという情熱で増やしちゃうんですよね。
それから、単純に部屋の中は整理したいかな。自分の歴史とか、芸能生活でやってきた作品や資料、CD、雑誌が膨大にあって。小説だったり洋服も多いですし、少しずつ身軽にしていきたいですね。
稲垣吾郎が語る芝居論『窓辺にて』で得た確かな手応え
― 今回の役作りや演技のなかで楽しかった部分はありますか?稲垣:お芝居ってその作品のスケール感や温度に合わることが大切だと思うんです。今泉組は今泉組の芝居の仕方があって、大河ドラマには大河ドラマの、舞台には舞台の芝居がある。ナチュラルな芝居を求められる今泉組のスタイルに自分を持っていく作業が楽しかったですね。
演技の型みたいなものが嫌いな方なので、ありがちな形ではなくナチュラルに。ドキュメンタリーみたいな見え方で、それはすごく面白いです。
― 玉城さんや中村さんなど共演のみなさんとの空気はいかがでしたか?
稲垣:お芝居は、相手との呼吸で生まれてくるものだと思います。僕は受け身の役だったので楽しかったですよ。
特に中村ゆりさんとは2人での長いシーンがあるんですけど、そこはワンカットの長回しで。生きたワンカットというのは俳優としてなかなか経験できないことなので、やりがいがありますし、舞台のようでした。当初はワンカットの予定はなかったんですけど、リハーサルでやってみて面白かったので、8分くらいのはずが、12分くらいのワンカットになって。それが本当に新鮮で、まさにドキュメンタリーのようでした。
実際に試写を観たとき、どこか冷静に観てしまう自分がいるんですが、今回は本当に作品に惹き込まれて、緊張感を持ちながら、映画としてそのシーンを観ることができたんです。そんな体験はあまりなかったので、自画自賛になってしまいますけど、すごいなと。すごい作品だなと思いました。
稲垣吾郎、心の中にある“かけがえのないもの”
― 主人公・茂巳は、“小説を書きたいけど書けない”のではなく、“書かない”小説家。満足感のようなものを得て書かなくなった小説家、という役どころですが、稲垣さんの芸能生活30年間の中で、そういった気持ちに共感する経験はありましたか?稲垣:僕はまだそこまで到達していない感じがしますね。究極のものを書いてしまったら、作家さんはもう書かなくなっちゃうのかな…わからないですね、答えが。でもやっぱり、続けていくことは大切だなって思います。特にこの仕事は、やり続けることに意味がある。ファンの方だったり、受け取り手とともに成り立っているものですから。
ただ、茂巳さんはそれよりも上の境地にいっているんでしょうね。僕はまだそこまでのものを生み出したことがないので、やりきったと考えたことはないかな。あ、でも例えば、また“これからアイドルグループを組むのでこれからオーディションをします”って言われたらやらないかもしれない(笑)。それはちょっと変な話ですけどね(笑)。これまでの形が1番の形だったなっていうのが僕の中にあるから。“新しい地図”のことも、僕はあんまり“グループ”とは言っていないんですよね。今一緒にやっている“仲間”であって、それぞれが個人で頑張っているので。心の中ではやっぱりあれが一番大きなもので、かけがえのないものだったから。そういう風に考えると茂巳さんの気持ちもちょっとわからなくもないかもしれない。ちょっと強引ですけどね。
― ありがとうございました。
(modelpress編集部)
映画『窓辺にて』
公開:11月4日出演:稲垣吾郎 中村ゆり 玉城ティナ 若葉竜也 志田未来 倉 悠貴 穂志もえか 佐々木詩音 / 斉藤陽一郎 松金よね子
音楽:池永正二(あらかじめ決められた恋人たちへ)
主題歌:スカート「窓辺にて」
監督・脚本:今泉力哉
<ストーリー>
フリーライターの市川茂巳(稲垣吾郎)は、編集者である妻・紗衣が担当している売れっ子小説家と浮気しているのを知っている。しかし、それを妻には言えずにいた。また、浮気を知った時に自分の中に芽生えたある感情についても悩んでいた。ある日、とある文学賞の授賞式で出会った高校生作家・久保留亜の受賞作「ラ・フランス」の内容に惹かれた市川は、久保にその小説にはモデルがいるのかと尋ねる。いるのであれば会わせてほしい、と…。
稲垣吾郎(いながき・ごろう)プロフィール
1973年12月8日生まれ、東京都出身。91年CDデビュー。2017年「新しい地図」をスタート。近年の主な作品に映画『半世界』(19)、『海辺の映画館―キネマの玉手箱』(20)、『ばるぼら』(20)、ドラマ「きれいのくに」(21/NHK総合)、「風よ、あらしよ」(22/NHK BS4K・BSプレミアム)、舞台「君の輝く夜に~FREE TIME,SHOW TIME~」(18/19)、「No.9 ー不滅の旋律ー」(15/18/21)、「サンソンールイ16世の首を刎ねた男ー」(21)、「恋のすべて」(22)などがある。
【Not Sponsored 記事】
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