王道フレンチを知らない人こそ食べてみて!この道40年のすご腕シェフの正統派フレンチ『エクレール銀座』
2021.11.26 18:00
フランス料理の道40年のベテランシェフが仕掛ける、1960年代のジャパンフレンチ
古くから人々に愛されてきた由緒あるお店だけでなく、トレンドを牽引するグルメ店も続々と出店を果たす東京・銀座エリア。この地で、とあるベテランシェフが新たな勝負をかけた。有楽町駅からJRの高架に沿って新橋方面へ歩いて5分ほどの場所にある、『eclair(エクレール)銀座』だ。
シェフの稲津好太郎さんは『タテルヨシノ』の前身店である伝説のレストラン『小田原ステラマリス』でスーシェフを務め、その後『タストヴァン青山』のシェフに就き、『虎ノ門エレメンツ』では総料理長を務め上げた実力派。
▲シェフの稲津好太郎さん
『虎ノ門エレメンツ』閉店後は後輩への技術指導や、他店でのメニュー開発を行ってきたが、この秋ついに自身のお店をここ銀座にオープンさせた。
コンセプトは、日本経済が急速に発展した高度経済成長期・1960年代に日本で隆盛したクラシカルなフランス料理。アラカルトメニューはあるものの、ディナーはアミューズ、前菜、魚料理、肉料理、デザート、コーヒーがついたコース1つのみの一本勝負だ。
かつての日本人だけでなく、現代人の心をも掴む「5色のオムレツ」
1960年代のクラシカルなフランス料理として流行したというのが、前菜の「5色のオムレツ」(写真上)。オムレツとは思えないカラフルで美しい見た目、繊細な手仕事に心を奪われてしまう。ピンク色はトマトと赤ピーマンを混ぜたピューレ、緑色はほうれん草、黄色はグリュイエールチーズ、オレンジはニンジン、茶色はシイタケとマッシュルームでできており、刻みオリーブをトッピングし、周りにガスパチョソースとジャガイモのピューレで彩を添えている。
この料理、稲津シェフの親方でもある、「東京ドームホテル」名誉総料理長の鎌田昭男さんのスペシャリテで、そのオマージュだという。
ほうれん草やニンジン、シイタケやマッシュルームなど野菜の味もしっかり感じられつつ卵の味わいも優しくひそんでおり、そこにコクの強いグリュイエールチーズがインパクトを与えている。
見た目の美しさだけでなく、力強い味わいとボリュームで序盤からシャンパンが進んでしまいそうだ。
シェフのスペシャリテはリピーターも多い「スズキのサルティン・ボッカ」
魚料理も王道フレンチかと思いきや、なんとイタリア料理のサルティン・ボッカをアレンジしたもの。しかも牛肉や豚肉、鶏肉などにプロシュートとセージなどのハーブを巻き付け、白ワインなどの酒類とバターで焼き上げるサルティン・ボッカではなく、魚介で再現している。この日は豊洲市場から仕入れたスズキに軽く塩をふりかけ、セージ、イタリアンパセリ、生ハムを貼り付け、さらに網脂で包んでバターでソテー。そこに焼きナスのピューレと、スライスしたナスの素揚げチップを散らしている。
網脂と生ハムで周りを包んでいるため、一口目は肉料理のような力強いうまみが感じられるが、後から滋味深いふっくらとしたスズキの味わいが混ざり合う。
ハーブの香り、そしてトロッとした焼きナスのピューレや、ナスの素揚げチップのカリカリ感がアクセントを添え、メインを張れる料理としての底力を感じる。シェフのスペシャリテであるこちらのメニューは、リピーターが多いというのも納得の味だ。
メインの肉料理は徹底してクラシックな「牛ホホ肉の赤ワイン煮込み」
肉料理は、フレンチの王道にしていまなお愛される「牛ホホ肉の赤ワイン煮込み」。最近では赤ワインだけでなく、いくつかの調味料やスパイスを加えて仕上げることも多い料理だが、『eclair銀座』では、ここでもクラシックスタイル。2日間ほど赤ワインに漬け込んだ国産の牛ホホ肉を、さらにフランス・ブルゴーニュ産の赤ワイン1本だけで5時間ほど煮込んで仕上げている。
お皿が運ばれてきた途端、赤ワインとスライスされたトリュフの香りが鼻をくすぐる。一口食べてみると、煮込まれたことで甘やかになったワインの味と、ビネガーのような酸味を感じる。
5時間煮込んでもしっかりと形を維持した大きな牛ホホ肉は、噛むほどにバターのような芳醇な味わいがにじみ出て、ねっとりと舌にまとわりつく脂身も甘美だ。
時代を超えてもどっしりと鎮座している、そんな王道の肉料理にはシェフの愚直さを感じざるを得ない。
デセールは花のように美しい艶やかな『ヌガーグラッセ』
コース最後のデセールも、王道にして華やか。アーモンドとドライフルーツを合わせた王道のレシピで作り上げた「ヌガーグラッセ」は、ラズベリーのシャーベットとフローズンラズベリーで酸味とフレッシュさを添え、自家製のラングドシャをトッピングしてカリカリ食感を加えている。フワフワとした口溶けで濃厚なヌガーグラッセに、ドライフルーツの熟成感やアーモンドのコクと食感が豊かに調和。そこにラズベリーシャーベットの甘酸っぱさが加わり、後味をさっぱりとさせてくれる。
約30〜40種揃うワインのほか、バーテンダーが作るカクテルも
ワインはフランス産を多く取り揃えるものの、スペインやニュージーランドや南アフリカなど、料理やお客の好みに合わせて約30〜40種類常備。このほか、夜の時間帯はバーテンダーが常駐しているため、旬のフレッシュフルーツを使ったカクテルなども取り揃える。『eclair銀座』はフレンチレストランとしての顔だけでなく、昼はランチ1,200円〜2,500円という気軽なビストロ、夜9時以降はバーとしての顔も持っているのだ。
▲バータイムはバーカウンターがある2階が主に使われる
1960年代といえば、日本で初めてオリンピックが行われた時代でもある。海外から多くの人が訪れ、日本でもさまざまな外国の食文化が根付くきっかけとなった。同じく東京オリンピックが行われた2021年に、あの頃の味が再びこの地に返り咲いたようだ。
▲お店1階にはテーブル席のほか、ソファ席もある
【メニュー】
ディナーコース 一人8,800円
グラスワイン 1,000円〜
カクテル 990円〜
ボトルワイン 5,000円〜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。また、価格はすべて税込です。
撮影:佐々木雅久
eclair(エクレール)銀座
東京都千代田区有楽町1-2-9 小川ビル 1F~2F03-5761-6066
11:30〜14:00(L.O.)、17:00〜コース19:00L.O.(アラカルト20:00L.O.)、21:00〜27:00(バー営業)
日曜
https://www.ajibo.jp/
この記事の筆者:中森りほ(ライター)
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