国領の『CRAZY PIZZA(クレイジーピザ』に食通たちが絶賛! あの実力派イタリアンのピザ専門店

国領の『CRAZY PIZZA(クレイジーピザ』に食通たちが絶賛! あの実力派イタリアンのピザ専門店

2020.07.10 18:00

地元に食で貢献したい。『Don Bravo』シェフの想いが詰まったピザ専門店

京王線の大きなターミナル・調布駅の二つ手前に「国領」という駅がある。住む人以外はあまり降り立たない住宅地の駅だが、ここに全国のグルマンが降り立つようになったのはつい、この数年のこと。

彼らの多くの目当ては、異色を放つイタリア料理店『Don Bravo(ドンブラボー)』だ。イタリアの素晴らしい食文化を、和やアジアの食材を使って再定義した新しい世界観が多くのお客に認められ、評判は瞬く間に広まり客足の途絶えないお店となった。

その『Don Bravo』のシェフ・平雅一さんが、同じ国領に姉妹店を出した。

新店『CRAZY PIZZA(クレイジーピザ)』の主役は、『Don Bravo』でコースの最終盤に提供される人気のピザ。イートインとテイクアウトの両方を主軸とし、店内ではオリジナリティ溢れるドリンク類と一緒にピザを楽しめる。

平さんに、開店の経緯を伺った。

きっかけは、家族との外食で感じた違和感

「あるとき、家族と一緒に焼肉を食べに行ったんです。食べ放題で3,000円くらいの、どこの街にもあるような普通の焼肉店です。ほとんど満席だったんじゃないかな。子どもたちは、おいしい、おいしいと言って焼肉を食べていました。僕も普通に食べていたんですが、そのときふと、思ったんです。この肉、どういう育ち方をしてきた肉なのかなって。それ以来、子どもたちを取り巻く食の環境って、あまりに見えていないのではないかと感じるようになりました」(平さん)

平さん(写真上・左。右は『CRAZY PIZZA』のシェフ、藤井淳利さん)は、どのようにすれば子どもたちに本当の味を届けられるか、と考え始めた。同時に、『Don Bravo』が平さんの地元・国領にある意味は何か、という疑問もあった。

アラカルトメニューで営業していた初期の『Don Bravo』には、地元在住のお客も多く訪れていたが、現在ディナータイムの席を埋めるのは、ほぼ調布以外から訪れてくれるお客ばかり。地元に住む人やその子どもたちのため、何かをしたいという思いが募るようになったという。

平さんはその答えを、ピザ専門店という形で出した。

「子どもの中にも、足が速い子、サッカーが上手い子とかいますよね。それと同じように、味覚が優れていることも特技のひとつだと考えます。小さい頃から様々な味を知り、味覚を育てれば、それってその子の大きな長所になりうると思うんです。ピザって、大きなキャンバスのようで可能性が無限にある。良質の食材を使ったピザを、子どもたちが100円握りしめて買いに来る店、というイメージができました」(平さん)

ピザは、ホールまたは1/4カットでの注文が可能

ガラス戸の広い間口に、シンプルなロゴ。中にはピザのショーケース、その奥には薪窯があり、炎がゆらぐ。店内にはテーブル1つとカウンター6席のみ。

ピザはホールまたは1/4カットで注文可能。テイクアウトは家での再加熱を想定し、8割程度の火入れに調整する。

ナポリ流でもローマ流でもない、“平流”の生地作り

『CRAZY PIZZA』のピザは、イタリアのベーシックなピザをベースとしながらも、使う食材やアレンジによってオリジナリティ溢れる仕上がりとなっている。

そのため、厳密なルールのあるナポリピザなどとは異なる点が多い。

例えば、ピザの命とも言える生地だが、イタリアから輸入した粉を使うピッツェリアが多い中、平さんは国産の全粒粉にこだわる。

“鮮度”にこだわり、挽き立ての国産小麦粉を使用

「他の食材と同じように、小麦粉も“鮮度”が重要なんです。挽いてから時間が経つにつれ、粉の香りはどんどん失われていく。僕は茨城県牛久の『安部農園』の全粒粉と、三重県の強力粉を使っています。安部さんはオーダーしてから粉を挽いてくれるので、新鮮で香りがいい。2週間分くらいずつオーダーしているので、常に新しい粉を使っています。

生地に使う水は2種類。“タマネギ水”とホエイ(乳清)です。

タマネギ水は、タマネギと天然水をミキサーに回して、そのまま2日置き、濾したもの。タマネギって風味を底上げしてくれる食材なので、その効果を生地に忍ばせました。

ホエイは那須高原の牧場で、ホエイが余ってもったいないという話を聞き、考案しました。ホエイ自体、非常に栄養が豊富ですし、生地に入れることで上に乗せるチーズとの繋がりができるんです」(平さん)

発酵に使われるのは、長野県松本市『清水牧場』のヨーグルトから作られる天然酵母だ。気温や環境により発酵状態が異なるため、日々場所を変えながら2日かけてゆっくり発酵させるという。

生地のキャンバスに豊かな表現、ピザの王道を再定義

それでは、肝心のピザをご紹介していこう。

「クレイジーマルゲリータ」(写真上)に使われるのは、トマトソース、バジル、モッツァレラの黄金トリオ。

メニュー表に「爆量モッツァレラ」と書いてあるように、ずしっと重く感じられるほどのモッツァレラが使われている。

生地の塩分をぐっと控えめにし、具材の塩分で全体の味を調整。乳成分の心地よい甘みとトマトのフレッシュさ、そしてサクッとした全粒粉の生地が非常にバランス良い。

「マヨコーン」(写真上)はチーズとマヨネーズが味わいに厚みと滑らかさを持たせ、そこにコーンがポップさを加える。散りばめられた肉感溢れる絶品サルシッチャに自家製の甘辛焼肉ソース、ピリッと効かせた山椒が食欲を増進。

口に運ぶ手が進んで進んで止まらない、オーガニック・ジャンク・ピザといったところ。

「マリナーラ」(写真上)はチーズを使用しないシンプルなピザだが、“平流”に再構築したマリナーラは驚きの連続だ。

オレガノの代わりにレモンバジル、イタリアンパセリの代わりにパクチー、それに『セドリック・カサノヴァ』のフレッシュなオリーブオイルを使用。

食べると口の中を爽やかな風が駆けめぐる。アジアンなのかイタリアンなのか、もはや定義する必要を感じさせない圧倒的な「平ワールド」が楽しめる。

ピザとドリンクのペアリング体験で、味わいの向こう側に触れる

ドリンクもピザにぴったりのメニューを揃えた。

「レモンサワー」(写真上・右)は、大分のこだわりの麦焼酎「泰明(たいめい)」をベースに使用。爽やかなレモンを下支えする焙煎した麦の香りが、ピザの香ばしさと心地よくリンクする。

「発酵ジュース」(同・中)は、さまざまなフルーツを発酵させ、炭酸で割って仕上げる。この日は日本のグレープフルーツとも言われる美生柑(みしょうかん)を塩漬けにし、発酵させたものを使用。凝縮された爽やかな果実味が、口の中で弾ける。

「台湾茶」(写真上)は台湾烏龍茶。ピザの香ばしさと烏龍茶の上品な苦味、生地とお茶の発酵感。そしてピザの余韻を残しつつ口中をすっきりさせてくれるという極上のペアリング体験ができる。

子ども用の「100円ピザ」から、農大生との「発酵研究」まで。飽くなき探究心は広がり続ける

本店『Don Bravo』では、コースの最後にピザを提供している。しかし、コースの流れを大切に考えると、ピザの自由度は高いとは言えなかった。

『CRAZY PIZZA』は、ピザという表現をより突き詰めるための新しい扉。そしてこの店は今後、平さんの実験室として大きな役割を果たしていくという。

「1ピース100円のキッズピザ(15歳以下限定)では、規格外などの理由で店に並べられない野菜を扱っていく予定です。子どもたちに『このハチミツ、いつものハチミツと違う!』とか、『これならピーマンがおいしい!』とか、色んな発見をしてもらいたいと思っています。

一方、僕はこの店で、発酵というものを突き詰めることにしました。東京農業大学の大学院生さんと組んで、一緒に発酵の研究をすることにしたんです。いろんな店で発酵について独自に試行錯誤していますが、トライ&エラーではリスクも多い。数値化し発酵の正体を突き止めることで、発酵のパワーをさらに料理に活かせるようにしたいですね」(平さん)

安心できる上質な食材を使用しつつ、子たちには安価に気軽に“ホンモノ“を食べてもらう。ピザの伝統を重んじつつ、軽やかに自由に創作をする。

平さんのこのスタンスを一言で表現するならば、「バランス」に尽きるだろう。研ぎ澄まされた自身のバランスを信じられるからこそ、フードロス食材を使った100円キッズピザと客単価1万円のコース料理が両立する。そして発酵ラボが本格稼働した暁には・・・。

国領からしばらく、目が離せそうにない。

【メニュー】
▼ピザ
・マリナーラ 2,000円(ホール)/600円(1/4)
(トマトソース・ニンニク・レモンバジル・パクチー)

・マヨコーン 3,200円(ホール)/900円(1/4)
(マヨコーン・モッツァレラ・サルシッチャ・焼肉ソース・山椒)

・クレイジーマルゲリータ 3,200円(ホール)/900円(1/4)
(トマトソース・バジリコ・爆量モッツァレラ)

▼ドリンク
レモンサワー 700円
発酵ジュース 700円
台湾茶    800円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です

撮影:岡崎慶嗣

CRAZY PIZZA

東京都調布市国領町3-10-37
080-5382-2660
11:30〜14:30 / 16:30~21:00
水曜日
https://crazypizza.donbravo.net/

この記事の筆者:Yayoi Shinya(フリーライター)

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