「太っていないのになぜ?」「男性の病気かと……」 痩せている女性に今「脂肪肝」が増えているワケ
【内科指導医・ケトン食専門家が解説】最近、痩せているのに脂肪肝が見つかる女性が増加しています。ご飯を控えていても、よくある食生活や日常の習慣が肝臓に脂肪をためる原因になっているようです。意外な落とし穴と、脂肪を上手にエネルギーに変える体づくりのヒントを解説します。(※画像:Shutterstock.com)
「体重はごく標準的」「太りたくないからご飯は少なめ」「朝はパン。昼は軽く済ませて」「甘いものが欲しくなったら、お菓子よりも果物や100%ジュースを少しとって、健康的に」「運動はあまりしないけど、体重はキープできている」
もしそんな生活を送っている女性が、健康診断で「脂肪肝」と指摘されたら――。「太っていないのに、どうして?」と、驚いてしまうと思いますが、実は最近、太っていない女性の脂肪肝が増加しています。その理由と対策法は?
心筋梗塞や脳卒中、がんリスクも高まる脂肪肝。女性の5人に1人が該当?
脂肪肝というと、太っている人や中年男性の病気というイメージがあるかもしれません。しかし近年、驚くようなデータが報告されています。
2008~2020年に京都で行われた健診に参加した35~74歳の日本人1万5135人を対象にした研究では、BMI25未満の女性6464人のうち1251人、19.4%に脂肪肝が認められました。見た目が太っていない女性でも、ほぼ5人に1人が脂肪肝だったのです。
脂肪肝とは、肝臓に脂肪がたまった状態のことですが、実は肝臓だけの問題ではありません。脂肪肝になると、心筋梗塞や脳卒中、さらにがんのリスクも高まることが近年明らかになり、注目されています。
なお、脂肪肝は2023年に「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)」という名称に変わりましたが、本記事では分かりやすさのために「脂肪肝」と記載します。
白ご飯の量を減らしても、肝臓に脂肪をためるパン・スイーツ・果物

太っていない女性のうち、「菓子パン・具入りパン」をよく食べる習慣がある人は、脂肪肝のリスクが1.27倍(95%CI 1.08~1.50)高いことが分かっています。年齢やBMI、喫煙、運動、飲酒などを考慮した厳密な解析でも、同様の結果が出たそうです。
まず知っておきたいのは、肝臓にたまる脂肪は「食べた脂肪」だけからできるわけではないということです。少しだけ専門的になりますが、使い切れずに余った糖質の一部は、肝臓でDNL(de novo lipogenesis:脂肪新生)という経路を通って、脂肪につくり替えられます。脂っこいものを控えていても、糖質から肝臓の脂肪はつくられてしまうのです。
白ご飯を減らした代わりに、朝は軽く菓子パン、昼はパンとサラダ、午後は小腹がすいてスイーツ……という食生活を送っていては、肝臓にたまる脂肪の材料をとり続けていることになります。
そして意外かもしれませんが、健康意識が高い人ほど気を付けたいのが、果物のとり過ぎです。「スイーツより果物の方が健康にいい」「100%果汁のジュースなら大丈夫」と思っていないでしょうか。確かに、果物に含まれる果糖は、ブドウ糖よりも血糖値を上げにくいことが分かっています。しかし、果糖の主な代謝の場は肝臓です。大量にとってエネルギーが余れば、肝臓で脂肪をつくる材料にもなります。
6つの観察研究と21の介入試験をまとめた解析では、必要量より35%多く果糖を上乗せすると、約1週間で肝臓内の脂肪が平均54%増加したことが報告されています。35%というと多く感じるかもしれませんが、連休中の外出などで甘いものを普段より多く食べるような日が続くと、すぐに超えてしまう量です。
果物は血糖値が上がりにくいものの、余分にとると肝臓にはよくないのです。スイーツであれば、なおさらだと言えます。
大切なのは体重よりも筋肉量! 2つのエンジンを効率よく回す体に

「でも、そんなに糖質もとっていないけれど……」と思った人もいるかもしれません。そこで、もう1つ注意してほしいのが筋肉です。2019年の韓国の報告で、脂肪肝のない4398人を10年間追跡した研究では、非肥満者でも、筋肉量が大きく減った人は、筋肉量を維持できた人に比べて脂肪肝を発症する可能性が1.81倍高いことが分かりました。
食べる量そのものは多くないけれど、運動はしない場合、その生活習慣がリスクを高めているのです。筋肉は体を動かすだけの組織ではなく、食後のブドウ糖をとり込み、エネルギーとして使う大きな「糖の受け皿」です。大切なのは体重が軽いことではなく、筋肉量なのです。
ここまでをまとめると、女性の痩せ型脂肪肝の問題が見えてきます。太りたくないからご飯を減らし、その空腹をパンやスイーツで埋める。果物やジュースは健康的だと思ってとる。運動習慣がなく、筋肉量は少ない。体重は増えていないので「私は痩せているから大丈夫」と思っている――。
では、どうしたらよいのでしょうか。このような人には、まず普通にご飯を食べてほしいと思います。そして、体を動かして筋肉を増やすことです。
もう1つ、私が長年のケトン食研究から注目しているのが、「脂肪をエネルギーとして使う力」です。私たちの体は、ブドウ糖だけを燃料にしているわけではありません。空腹時や運動時など糖の供給が少なくなると脂肪酸の利用が高まり、肝臓では脂肪酸からケトン体がつくられ、脳や筋肉などのエネルギーとして利用されます。私はこれを「糖質エンジン」と「ケトンエンジン」と説明しています。
この2つのエンジンをハイブリッドカーのように効率よく回すことが、結果的に内臓脂肪を減らし、筋肉を活性化させます。
日常の生活を少し見直し、単に糖質を抑えるのではなく、脂質もしっかりととるようにすると、次の健診ではよい結果が出るかもしれません。「別に太っていないから」「痩せている方だから大丈夫」と思い込まず、食事の中身と筋肉量に、ぜひ目を向けてみてください。
文:萩原 圭祐(レジリエンス医学と栄養・代謝ガイド)
先端医学と食でレジリエンスを高め、健康寿命と成長を見守る内科医。大阪大学先進融合医学共同研究講座特任教授として先端医学から伝統医学、レジリエンス・ケトン食などの研究活動に携わった後、現在はそれらの社会実装に精力的に取り組んでいる。
執筆者:萩原 圭祐(レジリエンス医学と栄養・代謝ガイド)
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