年間260万人が死亡!? 「野菜より肉」説は大間違い! 想像以上にマズい野菜不足のリスク【医師が解説】
【医師が解説】「野菜はあまり食べないけど、自分は健康」と思っている人はいませんか? 最新研究では、果物や野菜の摂取不足が原因で、世界で年間260万人が死亡していると報告されています。心疾患や脳卒中リスクの上昇や、「健康格差」も深刻です。分かりやすく解説します。
「健康のためには、野菜より肉が大事」といった話を、耳にしたことがありませんか? 著名人が発言していたりすると、「そうかもしれない」と感じてしまうかもしれません。
しかし実際には、野菜や果物の摂取不足と健康の関係は、想像以上に深刻なものになっています。野菜や果物には、カリウム、ビタミン、食物繊維など、体が正常に機能するために必要な栄養素が豊富に含まれているからです。不足すると、命にかかわる病気のリスクが大幅に上がります。
今回は、2025年に発表された最新の国際研究をもとに、「果物や野菜不足が健康に与える影響」について、分かりやすく解説します。
「世界で年間260万人死亡」の報告も……果物・野菜不足に関連する衝撃のデータ
北京協和医科大学病院のXiang Xu氏らが、2025年8月に『BMC Medicine』誌で発表した研究によると、「不十分な果物と野菜の摂取が、2021年だけで世界で合計260万人もの死亡に関連している」ことが明らかになりました。特に、心臓病や脳卒中などの心血管疾患のリスクを高めることが、改めて浮き彫りになったのです。
不健康な食生活が、がんや心臓病といった多くの慢性疾患の大きな原因であることは、以前から知られていました。中でも、果物・野菜の摂取不足は世界的な健康課題とされており、国連が2021年を「果物と野菜の国際年2021」と定めたほどです。
不明だった世界規模の実態と健康への影響……大規模データからの分析
一方で、実際に世界全体で、人々がどれくらいの野菜や果物を食べていて、それが原因でどのような健康被害が出ているのか、長期的な変化や地域による格差は、これまで十分に分かっていませんでした。
そこでこの研究では『世界疾病負荷研究(GBD)』の大規模なデータベースを用いて、1990~2021年までの30年以上にわたり、204カ国の25歳以上の成人を調査しました。
果物と野菜の摂取量が、健康や死亡率にどのように影響したかの分析は、以下の通りです。
【研究結果】世界が抱える「野菜・果物不足」の実態と深刻な影響
分析の結果、いくつかの重要な事実が明らかになりました。以下では、特に注目すべき3つのポイントをご紹介します。
2021年時点での世界での野菜・果物の平均摂取量は、
・野菜:約212.6g/日
・果物:約121.8g/日
でした。
一方で、研究で示されている健康を維持するための最適摂取量は、
・野菜:306~372g/日
・果物:340~350g/日
です。
つまり、世界の人々は、理想の半分以下しか野菜や果物を摂取できていないということです。この「慢性的な摂取不足」は、後述する病気リスクの増加にもつながっています。
野菜や果物不足が原因となって起こる深刻な病気として、心臓病や脳卒中などの心血管疾患が挙げられます。これらはいずれも命にかかわるものです。果物や野菜を十分にとることは、心血管疾患の予防の、最も基本的で確実な対策の1つと考えられています。
野菜不足が関連したと考えられる死亡数の約79.3%、果物不足が関連したと考えられる死亡数の約83.7%が、これらの疾患によるものでした。
2021年の1年間で、
・不十分な野菜摂取による死亡:約90万人
・不十分な果物摂取による死亡:約170万人
と推定されています。
研究では、社会経済的に発展途上の国々ほど、果物・野菜不足による死亡率が高い傾向にあると確認されました。
さらに、この30年間で、
・高所得国と低所得国の間での摂取量の差
・それに起因する健康被害の差
がともに拡大していることが明らかになっています。
栄養バランスのよい食事が「当たり前」のようにとれる国と、果物・野菜が「ぜいたく品」とされる国との「食の格差」があり、新たな健康問題として世界的に深刻化しています。
医師の視点:野菜は「健康のため」だけでなく「おいしさのため」にも
なぜここまで、野菜・果物不足による健康への影響が、深刻になっているのでしょうか。
「野菜が健康にいい」というのは、もちろん言うまでもありません。
果物や野菜に含まれる食物繊維や、ビタミンC、カロテノイドといった抗酸化物質は、血圧やコレステロール値を下げたり、体内の炎症を抑えたりすることで、心血管疾患のリスクを減らすと考えられています。この論文は、その重要性を改めて証明したとも言えるでしょう。
一方で、所得の低い国では野菜や果物が高価で手に入りにくいという現実があります。農業インフラや物流の整備不足も拍車をかけています。悲しいことに、今や野菜・果物は「超高級食材」なのです。日本国内でも、物価高で新鮮な野菜・果物の購入を控えている人もいます。
とはいえ、全ての野菜・果物が高価なわけではありません。
「野菜は健康になるから食べるのではなく、おいしいから食べる」という考え方もあります。
加工食品も魅力的ですが、野菜や果物ならではのうまみには代えがたいものがあります。少し意識を変えるだけで、「健康的でおいしい食生活」を叶えられるはずです。
野菜・果物は、私たちの健康のために非常に大切なものです。健康のためだと身構え過ぎず、おいしさを楽しむためにも、「普段どれくらい野菜や果物を食べているかな?」と少し振り返ってみてください。意外ととれていないと感じたら、少しだけ意識した食生活を始めてみてはいかがでしょうか。
■参考文献
Xiang Xu,Pengguang Yan,Wenjin Chen,et al.The global burden of disease attributable to suboptimal fruit and vegetable intake, 1990-2021: a systematic analysis of the global burden of disease study.BMC Med.2025 Aug 5;23(1):456.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40764991/#full-view-affiliation-1
国際連合広報センター.「果物と野菜の国際年2021」の開始に寄せるアントニオ・グテーレス国連事務総長メッセージ.
https://www.unic.or.jp/news_press/messages_speeches/sg/40821/
小児神経学・児童精神科を専門とする小児科医・救急救命士。プライベートでは4児の父。子どもの心と脳に寄り添う豊富な臨床経験を活かし、幅広い医療情報を発信中。
執筆者:秋谷 進(医師)
関連記事
-
【PR】クールスカルプティング(クルスカ)効果を超える?湘南美容クリニックの「クルスカダブル」が凄すぎたSBCマーケティング株式会社 -
料理研究家・鈴木沙織、-50kgダイエット成功の理由語るモデルプレス -
【PR】メディカルサイズダウンの効果は?湘南美容クリニックの最新医療を体験SBC メディカルグループ -
【PR】内田理央、やわらかボディの秘訣とは?“最高傑作”ファンの声にコメント返し&インタビュー<読者プレゼント>スリムビューティハウス -
【PR】柴田あやな、10kg減のスタイルキープ術は?「燃えてるような、初めての感覚」骨盤ダイエットで気づいたこと株式会社スリムビューティハウス -
1年で20kg減に成功の麻生れいみ、新たに提案する“ケトンアダプト食事法”とは<モデルプレスインタビュー>モデルプレス
「ダイエット」カテゴリーの最新記事
-
過去には大人の死亡例も……「銀杏の食べ過ぎは危険」って本当?【管理栄養士が回答】All About -
【emmi】初のプロテイン発売! 女性がきれいになるために必要な栄養素配合マイナビウーマン -
「夜の食べ方」が太りやすさを左右する?管理栄養士が教える「NGナイトルーティン」All About -
“一人になりたい”夜は、音と光の中へ。仕事終わりのアラサー女子が暗闇ボクシングで全力デトックス体験マイナビウーマン -
Q. 「子どもにエナジードリンクを飲ませるのは危険」って本当ですか?【管理栄養士が回答】All About -
【PR】下半身太りは”履くだけ”で解消?日常をダイエットに変える「骨盤ガードル」の実力とは<座談会>大衛株式会社 -
【PR】クールスカルプティング(クルスカ)効果を超える?湘南美容クリニックの「クルスカダブル」が凄すぎたSBCマーケティング株式会社 -
【PR】冷え性は冬太りの原因にも… 「これを求めていた」とSNSで話題の“温活”とは?株式会社ZERO PLUS -
【PR】メディカルサイズダウンの効果は?湘南美容クリニックの最新医療を体験SBC メディカルグループ