「年下の男は頼りない」が口ぐせの私が凍った坂で転んだ→3歳下の彼が迷わず曲がった横道
口ぐせのような一言
付き合って1年半になる彼は、私より3歳年下です。食事に行けば店の場所を間違え、旅行の計画を立てるのも、いつも私の役目でした。
少し前にも、予約した店が見つからずに2人で歩き回ったことがあります。
「年下の男は頼りない」
冗談のつもりでそう言うと、彼は「そうかもね」と笑って、スマホの地図をしまいました。
それ以来、何かあるたびに同じ言葉を口にしていた気がします。彼は一度も言い返さず、いつも同じように笑っていました。
凍った坂
その日は、私の部屋で鍋をする約束でした。駅から部屋までは歩いて15分、途中に長い坂があります。
坂の上まで来たところで、彼が足元を見ながら聞いてきました。
「その靴、大丈夫?」
「平気」
彼が何か続けようとした気がしましたが、聞かずに坂を下り始めました。かかとが滑り、体が大きく傾きます。気づいたときには、雪の上に尻もちをついていました。立ち上がろうとすると、右の足首に鋭い痛みが走ります。
彼は買い物袋を脇に置いてしゃがみこみ、私に背中を向けました。
「乗って」
背中の上で
ためらいましたが、ほかに帰る方法は思いつきません。買い物袋を片手に提げて首に腕を回すと、彼は思っていたよりも軽々と立ち上がりました。いつもより大きなリュックは、体の前に抱え直しています。
彼は坂をそのまま下りずに、途中で横道へ曲がりました。
「こっちの道のほうが、凍ってないから」
私には初めての道でした。街灯の少ない細い路地を、彼は迷う様子もなく進んでいきます。店の場所も覚えられない彼が、どうしてこんな道を知っているのか。
聞けばいいだけなのに、その一言を何度も飲み込みました。背中の上で、彼の肩をつかむ手に少しだけ力を込めていたのです。
そして...
マンションの前に着くと、彼は植え込みの縁に私をそっと下ろしました。息は少し上がっていますが、重かったとも疲れたとも言いません。
彼は抱えていたリュックのファスナーを開けて、スニーカーの箱を取り出しました。箱の横の数字は、私の靴と同じサイズです。
何度も口にしてきた「年下の男は頼りない」という自分の言葉が、急に恥ずかしく思えてきます。店の場所も覚えられない彼が、なぜ凍っていない道を知っていて、私のサイズの靴を持っていたのでしょうか。
(30代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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