「お父さんも同じことを言ってたわよ」と実家の母に笑われた俺が、彼女の弁当にスマホを向けるまでの事情
母に言われたこと
「俺は結婚しても家事はしないから」
彼女にそう言ったのは、子どもの頃から父の口癖を聞いて育ったからです。言ったあと、彼女が黙ってリモコンを置いたのは見ていました。
電話でその話をすると、母は笑いました。
「お父さんも同じことを言ってたわよ。でも、私の作ったお弁当だけは、毎日残さず食べて、箱を洗って返してくれたの」
それが父なりの返事だったそうです。電話を切ってから冷蔵庫を開けると、彼女が詰めた弁当が入っていました。
食べて、洗って
彼女の弁当を食べたことは、一度もありませんでした。毎日作っているのを知りながら、中身すら見たことがなかったのです。
次の日の朝、その弁当を冷蔵庫から出して会社へ持っていきました。卵焼きは甘めで、ごぼうの炒め物には胡麻がたくさんかかっていました。帰ってから箱を洗い、水切りかごに伏せておいたのです。
「うまかった」としか言えなかったのは、謝るより先に、味の話をしたかったからでした。彼女の分がなくなることまで、頭が回っていなかったのです。
翌週にもう一度食べたのは、卵焼きの甘さを確かめたかったからでした。「食べるなら先に言って」と言われても、理由を話せずに「うん」とうなずくだけだったのです。
写真に残したもの
3度目は、食べずに写真だけ撮るつもりでした。母に見せて、同じものを作れるように教わるためです。
ところが冷蔵庫の前で彼女に見つかり、とっさに「ごめん。食べたかった」とごまかしました。「家事をしない人が、人の弁当を食べるの?」と返されても、ごまかした手前、本当のことは言い出せません。
その通りだと思い、「……そうだな」とだけ返しました。弁当箱を戻す前に撮れた写真は、ぶれた1枚だけでした。
そして...
それから、仕事帰りに実家へ寄るようになりました。母の台所で、ぶれた写真を見せながら、卵焼きを焼く練習を続けていたのです。
まだ焦がしてばかりで、彼女には何も話せていませんでした。帰りが遅い理由を聞かれても、「ちょっと用事」としか答えていません。せめて焦げていない弁当を1つ作れてから、全部話すつもりでした。
結婚しても家事はしない。そう言った同じ口で、俺は母に「砂糖はどれくらい?」と聞いていました。
(20代男性・会社員)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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