「俺の給料で満足しろ」と言った俺→彼女の昇進祝いの個室で、同僚の前でありがとうと言われた
食卓で言ってしまった言葉
「受かったら、帰りはもっと遅くなると思う」
彼女は箸を置いて、こちらの顔をうかがうように言ったのです。
「俺の給料で満足しろ」
考えるより先に、口から出ていました。無理をしてほしくない気持ちもあったはずです。それでも、ひどい言い方だったのは分かっていました。
彼女は何も言わずに食器を片づけ、その日から毎日問題集を開くようになったのでした。
反対の気持ちは変わらないまま、俺は彼女の分の食事にラップをかけて置いておくことだけ続けていました。一度だけ、彼女がその皿をスマホで撮っているのを見かけました。何のためなのかは、聞けないままでした。問題集の付箋だけが、日ごとに増えていったのです。
昇進祝いの個室
試験から1か月後、彼女は合格しました。
「部署のみんなが、お祝いしてくれるって。家族やパートナーも呼んでいいらしいから、一緒に来てほしい」
正直、気は進みませんでした。それでも断りきれずに、駅前の居酒屋の個室についていったのです。個室には、彼女の名前入りのカードがついた花束まで用意されていました。
彼女の同僚たちは、口々に彼女の頑張りを話してくれたのです。試験前は休憩のたびに問題集を開いていたと聞いて、自分が何も知らなかったことに気づきました。
乾杯のあと、彼女の上司がグラスを置きました。
「では、本人から一言」
立ち上がった彼女が、まっすぐ俺のほうを見たのです。
個室で下げた頭
「家で待っていてくれた人に、ありがとうと言いたいです」
同僚たちが、一斉にこちらを振り返りました。反対していた俺に、なぜ彼女がそう言うのか分かりません。
気づけば、俺も椅子から立ち上がっていたのです。
「ずっと反対していました。すみませんでした」
彼女のほうを向いて、深く頭を下げました。個室の話し声がやみ、顔を上げると、上司が小さく拍手をしてくれているところでした。
彼女は少し驚いた顔をしてから、ゆっくりと席に座ったのでした。
そして...
帰りの電車で、彼女は膝の上の花束を見つめていました。窓に映る横顔は、どこか楽しそうにも見えました。
「来週、一緒に行ってほしいところがある」
どこに行くのか聞いても、彼女は「行けば分かる」としか言いませんでした。
「俺の給料で満足しろ」と言った俺に、なぜ彼女はありがとうと言ったのか。来週、彼女は俺をどこへ連れて行くつもりなのでしょうか。
(30代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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