ゴミ捨て場で私を説教し続けた隣人→通りかかった小学生の一言で黙った
毎回ネットの前で待っている人
今の家に越してきて、半年になります。隣人は70代くらいの女性で、ゴミ捨て場は彼女の家の前の角にありました。
2カ月ほど前から、私が袋を出しに行くたび、彼女はそこにいるようになりました。
「袋の口はもっときつく縛りなさい」
「出す日はちゃんと確かめてるの?」
分別は自治体の表のとおりにしているつもりでしたし、出す日を間違えたこともありません。それでも言い返せば長くなりそうで、毎回「すみません、気をつけます」と頭を下げてきました。
出勤前の数分が、少しずつ削られていくようでした。
終わらない説教
その日は、袋をネットの下に入れたところで声が飛んできました。
「ちょっと、ネットは端までかけてって言ったでしょう」
見ると、ネットの端は確かに少しめくれていました。けれど、それは私が来る前からそうなっていたものです。直そうと手を伸ばすと、彼女はさらに続けました。
「決まりを守れない人が一人いると、みんなが迷惑するのよ」
駅へ向かう人たちが、横目でこちらを見ながら通り過ぎていきます。腕時計に目をやると、いつもの電車の時刻が迫っていました。
「すみません、気をつけます」
そう言っても話は終わらず、袋の結び方、ネットのかけ方、最近越してきた人たちのことへと移っていきます。通勤バッグの持ち手を握ったまま、私は話の切れ目を探していました。
そのとき、ランドセルを背負った男の子が角を曲がってきて、私たちの前で足を止めたのです。
男の子が見上げた先
男の子は私ではなく、隣人の顔を見上げていました。
「おばあちゃん、今日は言うんでしょ」
あれほど続いていた声が、その一言でぴたりと止みました。隣人は口を閉じたまま、男の子の帽子のつばを直しています。
「早く行きなさい、遅れるわよ」
男の子は少し首をかしげてから、小学校のほうへ走っていきました。隣人もそれ以上は何も言わず、黙って自分の家の門の中へ入っていきました。
残された私は、ネットの端を直し、急ぎ足で駅へ。あの子は知り合いの子なのだろうか。今日は言う、とは何のことなのだろうか。電車に揺られながら、そればかり考えていました。
そして...
次のゴミの日、袋を持って角へ行くと、隣人はやはりネットの前に立っていました。
身構えた私に、彼女は「おはよう」とだけ。それから何か言いかけるように口を開いたものの、結局は門の中へ戻っていきました。
説教を聞かずに済んだ朝は、2カ月ぶりでした。
あの子が口にした「今日は言うんでしょ」。彼女が本当に私へ言おうとしていたのは、いったい何だったのでしょうか。
(30代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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