「お前の親、ちょっと変だよな」実家への挨拶の帰り道、家族を否定された気がして許せなかった私
初めての挨拶で見た、いつもの実家
付き合って2年になる彼を、両親に紹介するための訪問でした。父は口数が少なく、母はよく笑う人です。緊張した様子の彼の前に、母は次々と料理を並べていきました。
父が1冊のメモ帳を差し出したのは、食事の途中のこと。
「ここに住所を書いてもらえるかな」
彼は少し戸惑った顔で、ボールペンを受け取りました。
食後に始まったのは、我が家の決まりごと。
「じゃあ、今日よかったことを1人ずつ」
父の声を合図に、母が「みんなでご飯を食べられたこと」と答え、私も続きました。順番が回ってくると、彼は麦茶のグラスを持ったまま、少し間を置いて答えました。
「ここに来られたことです」
短い答えに、父は小さくうなずいていました。
帰りの電車で聞いた、彼の一言
帰りの電車で、並んで座った彼がぽつりと言いました。
「お前の親、ちょっと変だよな」
紙袋の持ち手を握る指に、力が入りました。住所を書かせる父も、よかったことを言い合う食卓も、私にとっては大切な家の形です。
「変って何?うちの親のこと、そんなふうに見てたの?」
「いや、そういう意味じゃ」
言いかけた続きを待たずに、窓の外へ顔を向けました。グラスを持ったまま黙っていた彼の横顔が浮かんでいました。あの間は、居心地の悪さだったのでしょう。
乗り換えの駅で、「じゃあね」とだけ言って別のホームへ向かいました。
父の字が書かれた白い封筒
それから1週間、彼とのやりとりは短い連絡だけでした。
そんなある日、彼が私の部屋を訪ねてきました。手には白い封筒。
「お父さんから、俺宛てに手紙が届いた」
封筒の裏にあったのは、見慣れた父の字でした。あの日、食事の途中で父がメモ帳を差し出したことを思い出しました。口数の少ない父が、彼に何を書いたのか。そう考えると、封筒から目が離せなくなりました。
「何て書いてあったの?」
彼は封筒を持ったまま、首を横に振りました。
「返事を書いてから、ちゃんと話す」
そして...
彼は私の便箋を借りて、机に向かいました。書いては消し、新しい便箋に替えて、また書き直しました。机の端に、書き損じが何枚も重なっていきました。
ようやく封をした帰り際、玄関で靴をはきながら、彼がこう言ったのです。
「あの時の変は、悪い意味じゃなかった」
小さくうなずいて、彼を見送りました。悪い意味ではないなら、あの一言には何が込められていたのか。父の手紙に何が書かれていたのかも、分からないままです。机の端に残った書き損じの便箋を、しばらく眺めていました。
(20代女性・事務職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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