「男の話はダメで、女の話はいいんだね」皮肉を返した私に、彼から届いた「もうルールは無しにしたい」
先輩のプリンを報告しただけなのに
付き合って2年になる彼とは、その日の出来事をメッセージで送り合うのが習慣でした。あの日も、職場での小さな出来事をいつもの調子で送っただけです。
「先輩がみんなにプリン買ってきてくれた」
返信は、間を置かずに届きました。
「その先輩って男?」
質問の意図がつかめないまま、正直に打ちました。
「そうだけど、なんで?」
既読がついてから次のメッセージが来るまで、少し間がありました。
「男の話をすんなよ」
命令の形をした一行を、何度か読み直しました。プリンは部署全員に配られたものです。それを説明する文を打っては消し、結局送ったのは短い返事だけでした。
「わかった」
説明すれば言い訳に聞こえる気がして、彼の機嫌をこれ以上損ねたくもありませんでした。
当たり障りのない話題だけのやりとり
その日から、私のメッセージに職場の人は登場しなくなりました。ランチに何を食べたか、帰りに寄った本屋で何を買ったか。当たり障りのない話題を選ぶたびに、やりとりは短くなっていきます。彼の返信も、短い相づちばかりになりました。
そんな日が数日続いたあとに届いたのが、あの2通です。
「今日、職場の先輩に怒られた」
「その先輩、女の人なんだけど」
わざわざ性別を書き添える理由が、一つしか思いつきませんでした。自分は女の人の話をしてもいい、と言いたいのだろうか。あの日プリンの話を飲み込んだ自分が、急にばかばかしく思えてきます。
クッションを脇に押しやり、返信欄を開きました。
「男の話はダメで、女の話はいいんだね」
送信してすぐ、スマホを裏返してテーブルに置きました。
既読のあとに続いた空白
既読は間もなくつきました。けれど、返信は来ません。いつもなら数分で返ってくる彼が、何も送ってこない。怒らせたのか、言い返す文面を探しているのか。答えの出ない想像ばかりが続き、テーブルのスマホを何度も確認していました。
ようやく画面が光ったのは、冷めたお茶を淹れ直したあとでした。
「うん。だから、もうルールは無しにしたい」
「ごめん」
皮肉をそのまま認められるとは、思っていませんでした。反論もなければ、先輩に何を怒られたのかも書かれていない。本当に分かってくれたのか、面倒になって謝っただけなのか。短い2行からは、どちらとも読み取れませんでした。
そして...
確かめる方法を考えて、行き着いたのは単純なことでした。数日後、先輩がまたお菓子を配ってくれた日に、帰宅してからあの日と同じ調子で打ちました。
「今日も先輩がお菓子くれた」
返信は、プリンのときよりも早く届きました。
「よかったじゃん。何味?」
持ち帰ったチョコレート味のクッキーを写真に撮って送ると、笑った顔のスタンプが返ってきました。彼へ送る報告の中に、先輩の話が戻ってきています。
(20代女性・事務職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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