「今日も先に帰るね」自転車に乗れないことを隠し、公園を急いで出た私
乗れないまま大人になって
子どもの頃に練習する機会をなくしたまま、私は自転車に乗れずにいました。息子の園のママ友たちは、降園後に近くの公園へ集まります。皆は自転車、私だけが歩きでした。
帰りは息子の足に合わせるとどうしても長くなります。だから、たっぷり遊ばせたあと、疲れてぐずる前にと決めた頃合いで、誰より先に公園を出るのが習慣になっていました。
「ごめん、今日も先に帰るね」
仕事帰りに駆けつけてくる彼女とは、なぜかいつもすれ違いになりました。息子の限界と、彼女の到着が、ちょうど重なってしまうのです。
「ごめん、今日も先に帰るね」
そう告げるたび、胸の内で言い訳を重ねていました。本当は残っておしゃべりしたいのに、乗れないと打ち明けて笑われるのが怖くて、歩きの帰りが長いからとも言えずにいました。
彼女がお茶に誘ってくれた日も、「ごめん」とだけ言って背を向けました。彼女の顔が曇るのに気づいていながら、乗れないという一言をどうしても出せずにいました。
人のいない広場の隅で
休日、私はサドルにまたがる練習をするため、自転車を押して公園まで行きました。おぼつかない手元を誰にも見られたくなくて、広場の隅を選びました。地面を蹴って、ふらついて、足をつく。その繰り返しの途中で、彼女が広場に入ってくるのが見えました。
「もしかして、練習中?」
ごまかす言葉を探して、やめました。「実は、自転車に乗れないの」口にしてしまえば、それだけのことでした。帰りが長くなるから先に出ていたこと、それがいつも彼女の到着と重なっていたこと、その場で全部話しました。
そして...
「じゃあ、一緒に練習しよ」
彼女はそう言ってくれました。今は彼女に付き添ってもらいながら広場での練習を続けて、自転車を押しながら並んで歩いています。乗れる距離は、少しずつ延びているところです。
(30代女性・専業主婦)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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